ラージュ「あ〜、今日も疲れたな〜‥‥‥。」
トリス「あっ、ラージュおかえり!」
ラージュ「やあトリス。ここに先客がいるとは思わなかったよ。」
トリス「それよりラージュ、だいぶ帰りが遅かったじゃないの。どこ行ってたの?」
ラージュ「え、どこって、いつも通り食べ物を探しにだよ‥‥‥。」
トリス「こんな遅くまで拠点の外に出てたわけ? もう、心配するじゃない!」
ラージュ「そっか、心配してくれてたのか‥‥‥。ごめん‥‥‥。」
トリス「そりゃあ心配くらいするよ〜。一緒に暮らしてるんだからね。」
ラージュ「そういうものなのか‥‥‥。ははは‥‥‥。」
トリス「えっ、なんで笑うの?」
ラージュ「あれ、どうしてだろう? 自分でもよくわかんないや‥‥‥。」
トリス「変なラージュ‥‥‥。」
ラージュ「オレ、トリスに心配されてうれしいんだと思う。そんな経験、今までなかったからさ。」
トリス「どういうこと?」
ラージュ「オレ、みんなと出会うまで、パッチしか一緒に過ごす相手がいなかったんだ。
だから、誰かが家で待っててくれて、帰りが遅いと心配してくれるなんて、新鮮なんだよ。」
トリス「そっか‥‥‥。あたしもその気持ち、なんかわかるな。」
ラージュ「トリスも?」
トリス「あたしも小さい頃、孤児だったからね‥‥‥。」
ラージュ「孤児‥‥‥? つまり親や兄弟はいなかったのか‥‥‥。」
トリス「そうなの、召喚師の学校に入る前は、ずっとひとりぼっちだったのよ。
でも、あることがきっかけで召喚師としての才能があったのがわかって、それで蒼の派閥に拾われたんだ。」
ラージュ「そうだったのか‥‥‥。」
トリス「うん、それでネスと一緒になって、ラウル先生に親代わりになってもらって。
初めはね、やっぱり窮屈だったのよ。人と一緒に生活するなんて、慣れてなかったから。
でも、ネスやラウル先生に小言を言われたり心配されたりするのも、そのうちイヤじゃなくなった。
むしろほっとしたり、うれしくなることも多くて。その時、これが『家族』なのかな‥‥‥って思ったの。」
ラージュ「なんだかすこし、今のオレに似てるな。」
トリス「そうでしょ? 家族ってくすぐったいけど、なんかいいよね‥‥‥!」
ラージュ「うん、そうだな。誰かと一緒に暮らすって、すごくいいと思う!」
トリス「あっ、もちろんあたしはラージュのことも家族だと思ってるよ!?」
ラージュ「うん‥‥‥。ありがとう、トリス。」
トリス「そうそうラージュ、ちゃんと晩ご飯食べてね? ラージュの分、取っておいたから。」
ラージュ「えっ、本当か!?」
トリス「食いしん坊がたくさんいるから、ラージュの分を確保するのも大変だったんだよ〜?」
ラージュ「あはは! リュームたちか。なんだか目に浮かぶよ。」
トリス「じゃあ、あたしがスープを温め直してあげるから、一緒にキッチンに行こっか。」
ラージュ「ありがとう、腹減ったな〜‥‥‥!」
ラージュ「トリス、ここにいたのか。みんなと夕涼みに出かけないか?
今夜は満月だから見晴らしのいい場所まで行こうって、みんなで話してたんだ。」
トリス「いいわね! あたしも行きたいな‥‥‥。
のんびり夜空を見ながら散歩したら、気持ちいいだろうなあ‥‥‥。」
ラージュ「じゃあ、準備ができたら玄関に集合な‥‥‥!」
トリス「あっ、待ってラージュ!」
ラージュ「ん‥‥‥、どうしたんだ?」
トリス「‥‥‥ごめん! やっぱり私、行けない!
出かけてたら、ネスに出された課題が間に合いそうになくて‥‥‥!」
ラージュ「課題‥‥‥? ああ、いつもやってる勉強のやつか。」
トリス「うん、そうなの‥‥‥。
昼間のうちに終わらせたかったのに、ちっとも進んでなくて‥‥‥。」
ラージュ「そうか、それは残念だなあ‥‥‥。‥‥‥って、あれ?
トリス、昼間は昼寝してなかったか? 机に突っ伏してさ。」
トリス「う‥‥‥ラージュ、寝てるとこ見てたの? もう‥‥‥恥ずかしい‥‥‥。」
ラージュ「いや、オレは呼んだんだけどさ、トリスが起きなかったんだよ。
あれだけ呼んでも起きないって、トリス、疲れてたんじゃないのか?」
トリス「え‥‥‥そうでもないと思うけど‥‥‥。
疲れてるというよりは、課題をやってるとものすごい睡魔が襲ってくるんだよね‥‥‥。
自分でも不思議なんだけど、あれにはどうあがいても逆らえないの。
ほんと、どうしてだろう‥‥‥。ネスの課題に眠くなる術でもかかってるのかな?」
ラージュ「あははは! さすがに違うと思うけど、そういう試練だったら面白いな。」
トリス「そんな試練があったら、あたしは突破できる気がしないよ‥‥‥。」
ラージュ「まあ冗談はおいておくとして‥‥‥、ネスティの出す課題って、そんなに退屈なのか?
それにしては、毎日熱心にやってるみたいだからさ。」
トリス「退屈も何も‥‥‥!!
逆にこれが楽しかったら、私も居眠りなんてしないよ‥‥‥。」
ラージュ「それはそうだよな‥‥‥。でもさ、だったらなんでトリスは課題をやるんだ?
そこまでイヤなら、無理してやらなくてもいいじゃないか。」
トリス「うーん、そう言われると‥‥‥。
でも、いくら勉強や課題が退屈だったとしても、やらないわけにはいかないんだよね‥‥‥。
ネスや面倒見てくれているラウル先生も、あたしに期待してくれてるわけだし‥‥‥。
だからあたしは、その期待に応えるためにがんばらないといけないの。」
ラージュ「なるほどな。だったらサボって昼寝ばかりしてちゃ、期待に応えられないんじゃないか?」
トリス「そ、それは‥‥‥。正論すぎて、返す言葉もないよ‥‥‥。」
ラージュ「じゃあ、オレはみんなと行ってくるから、トリスは、部屋に戻って課題をがんばれよ。」
トリス「ううう‥‥‥。あたしだって、ほんとは出かけたいのに‥‥‥!」
ラージュ「トリス、今日はもう課題が終わったのか?」
トリス「あっ、ラージュ。実はぜんぜん終わらなくて、ちょっと休憩してたの。」
ラージュ「そっか、いつも大変だな。」
トリス「ねえラージュ、せっかくここで会ったんだから、気分転換にすこし話に付き合ってくれない?」
ラージュ「もちろん! オレでよかったら。」
ラージュ「‥‥‥そっか、トリスはそんな課題をやってたんだな。」
トリス「うん、けっこうハードでしょ?」
ラージュ「ハードっていうか、ネスティの教育方針がスパルタ式なんじゃ‥‥‥。」
トリス「あっ、やっぱりそう思う? あたしもうすうす思ってたんだよね‥‥‥!」
ラージュ「あはは‥‥‥! ネスティの指導にもだいぶ熱が入ってるんだな。」
トリス「笑い事じゃないよ〜。それについてくあたしも大変なんだから‥‥‥。」
ラージュ「でもさ、トリスは立派な召喚師になるために毎日それに耐えてるんだろ?
トリスがそんなにがんばって身につけようとしてる召喚術って、いったいどんなものなんだ?」
トリス「そうねえ‥‥‥簡単に言うと、別の世界からの協力者を、そこに呼び出す術かな。」
ラージュ「それって、やり方を知っていればオレにもできるのか?」
トリス「え‥‥‥。それはちょっと‥‥‥。」
ラージュ「ん、なんだ? オレにはできそうにないのか‥‥‥?」
トリス「そうじゃないんだけど‥‥‥、やっぱりそれは勧められないよ。」
ラージュ「それはどうして?」
トリス「‥‥‥実はね、あたしは小さい頃、召喚術で暴走事故を起こしたことがあったんだ‥‥‥。
それで、住んでいた町に大きな被害を出してしまって‥‥‥。
当然、そんなことをしたあたしは捕まって、その町には住めなくなったんだ‥‥‥。」
ラージュ「そんなことがあったのか‥‥‥。」
トリス「うん‥‥‥。召喚術は大きな力を使う分、危険も伴うの。
周りや自分を傷つけることもあるし、ヘタをしたら世界に影響を及ぼしかねない。
だから、安易に人に教えるようなことはできないよ。ごめんね‥‥‥。」
ラージュ「そっか‥‥‥。トリスも大変だったんだな‥‥‥。」
トリス「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「トリス、どうしたんだ? さっきからぼーっとして‥‥‥。
もしかして、食欲がないとか‥‥‥?」
トリス「あっ、ごめんごめん! ぜんぜんそういうんじゃないの!」
(トリス、座る)
トリス「みんな今頃どうしてかなって、ふと考えちゃって‥‥‥。」
ラージュ「みんな‥‥‥?」
トリス「うん、向こうの世界に残してきちゃった仲間たちのことだよ。」
ラージュ「そっか、ネスティやバルレルの他にもトリスには一緒に戦う仲間がいたんだよな?」
トリス「うん、他にもいるよ!」
ラージュ「へえ、どんなやつがいるんだ?」
トリス「そうだなあ、まずはフォルテとケイナ。
フォルテは陽気で気のいい人なんだけど、調子がいいところがあってね‥‥‥。
相棒のケイナが、よくそれを叱ってるんだ。」
ラージュ「なんだか、トリスとネスティみたいだな‥‥‥。」
トリス「えっ、今なんて言ったの?」
ラージュ「いや、独り言だって! あはは。それで他には‥‥‥?」
トリス「フォルテたちの親友で、シャムロックっていうすごい騎士もいるよ。
シャムロックは騎士だけあって頼もしいけど、ちょっと真面目すぎるかも‥‥‥。」
ラージュ「へえ‥‥‥、それから他には?」
トリス「ちっちゃな召喚師ミニスや、港の用心棒をしていたモーリンもいるよ!
ミニスはとっても負けず嫌いなんだけど、ちょっと泣き虫なところもあるかな。
モーリンは女の子の格闘家なの。カッコイイんだけど、純情なところもあって‥‥‥。
それから、仲間は他にもいてね‥‥‥。」
トリス「ラージュ、ごめんね!? 長いこと話に付き合わせて。あたし、つい話すのに夢中になっちゃって‥‥‥。」
ラージュ「あはははは、いいって。楽しそうに話すトリスを見てたらオレも楽しかったよ!
トリスの仲間たちのことも、いろいろと知ることができてよかったし。
トリスはほんと、いい仲間たちに恵まれてるんだなー‥‥‥。」
トリス「うん、そうだね‥‥‥! そう言われると、なんかちょっと照れるけど‥‥‥。」
ラージュ「オレとしてはうらやましいよ。それに、トリスの仲間たちに会ってみたくなった。」
トリス「あたしも話しながら、ラージュにみんなを直接紹介できたらなって思ったんだ!
いつかほんとに、会わせられたらいいのに‥‥‥。」
ラージュ「何か方法はないのかな‥‥‥?」
トリス「うーん、元の世界に帰る方法が見つかれば、ラージュを連れて行くこともできるのかなあ?」
ラージュ「どうなのかな? でもほんと、いつか行ってみたいよ!
トリスの世界や、仲間たちのところに。」
トリス「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「トリス? こんなところで何やってるんだ?」
トリス「あっ、ラージュ‥‥‥。特に何をしてるわけでもないんだ。
ただぼんやり景色を見てたの‥‥‥。
ここの景色も、そろそろ見納めなのかなって思って。」
ラージュ「そっか‥‥‥。」
トリス「やっぱり寂しいよ‥‥‥。みんなや、慣れ親しんだ場所と離れるのは‥‥‥。」
ラージュ「トリス‥‥‥、元気だせよ。らしくないぞ!」
トリス「ふふふ、そうだね!!
元の世界に戻っても、メルギトスとの決戦だもんね。落ち込んでる暇なんてないよね!」
ラージュ「そうそう、その笑顔! やっぱりトリスは笑顔が一番だな!」
トリス「あ〜でも‥‥‥! あたしちゃんとメルギトスに勝てるのかな!?
そのこと考えたら、ちょっと不安になっちゃうよ‥‥‥。」
ラージュ「トリスなら大丈夫だって! トリスの強さや粘り強さは、オレがよく知ってる!」
トリス「そうかな!?」
ラージュ「そうだよ!! オレを信じて。」
トリス「ふふっ、ありがとう! ラージュにそう言ってもらえて勝てる気がしてきたよ!」
ラージュ「よかった!!」
トリス「じゃあ、あたしからもラージュにお返し‥‥‥。
ラージュは最後の戦いを、絶対に勝てる!! あたしが勝たせてあげる!!」
ラージュ「トリス‥‥‥。ありがとうな‥‥‥!!
そう言ってもらえると、心強いよ。」
トリス「あ、あたしの力だけじゃ足りなかったときも、ラージュは大丈夫だからね!
ネスやアメル、他にもたくさんの仲間たちが力を貸してくれるから!
思い出すとあたしも、苦しいときはいつも、周りの仲間たちに支えられてきたんだ‥‥‥。
そうやって、何度も苦難を乗り越えてきたの。
だから、ラージュも絶対に大丈夫だよ!」
ラージュ「そうだな‥‥‥! 仲間がいるのっていいな‥‥‥。」
トリス「その中でも特にトリスでしょ?」
ラージュ「あはは!! そうだな、トリスがいるとすごく心強いよ!
励ましてくれて、ほんとありがとう!!」
ラージュ「‥‥‥なあトリス。」
トリス「うん?」
ラージュ「もしまだ不安だったら、トリスの戦いにもオレがついていってやろうか?
リィンバウムのことはわからないけど、戦いだったらオレにもできるからさ‥‥‥。」
トリス「ラージュ‥‥‥。ありがとう、その言葉すごくうれしい‥‥‥。
‥‥‥でも、それはできないよ。」
ラージュ「えっ、それはどうして?」
トリス「ラージュがいてくれたら、あたしも心強いけど、でもラージュにはやることがあるでしょ?
ラージュには、戦いを終えた後の、この世界を豊かにしていって欲しいの。
あたしが次に遊びにきた時に、びっくりするくらいにね!」
ラージュ「トリス‥‥‥!! またこの世界に来るつもりなのか!?」
トリス「うん、そのつもりだよ。まだ戻ってくる方法はわからないけど‥‥‥。
でも、私は伝説の調律者<ロウラー>なんだもの。いずれその方法も見つけちゃう!」
ラージュ「はははっ。すごいなトリスは!」
トリス「‥‥‥と言っても落ちこぼれだから、ネスに手伝ってもらうとは思うけど‥‥‥。」
ラージュ「くっ‥‥‥はははは‥‥‥!! そこを含めて、やっぱりトリスはすごいよな‥‥‥!!」
トリス「もう、ラージュ‥‥‥。笑いすぎじゃない!?」
ラージュ「ごめんごめん!」
トリス「でもあたし、ぜったい戻ってくるからね? それまでお互い、がんばろうね!?」
ラージュ「うん、約束だな!!」
でも、いざとなったらオレのこと召喚してくれよ。絶対に駆けつけて、トリスを守ってやるから‥‥‥!
(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。 たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
トリス「消えるのはあんたよ、『異識体』! 倒される覚悟はできた?」
(最終戦後)
トリス「」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」
ラージュ「ありがとう‥‥‥。」
【森】
ネスティ「‥‥‥で、どっちから言い出したんだ?」
トリス・バルレル「あっち!」
バルレル「何でオレなんだよ!? 腹が減ったって言い出したのはテメェだろ!」
トリス「お腹が減ったとは言ったけど果物を取りに行こうとは言わなかったでしょ。」
バルレル「でもオレがナウバの実を見つけたらフラフラ行っちまったじゃねぇか!」
トリス「だって美味しそうだったんだもん!」
ネスティ「はぁ‥‥‥。
君たちはそんなことをしていて仲間からはぐれてしまったのか。」
トリス「そう‥‥‥。
でもネスに見つけてもらえて良かった! ありがとね。」
ネスティ「僕たちはこれから戦いに行くんだぞ。ピクニックをしに来ているわけじゃない!」
トリス「う‥‥‥そうなんだけど。」
ネスティ「話を聞く限りじゃ、すべてキッカケは君じゃないか。」
バルレル「ケケケッ、バーカ!」
トリス「むーっ‥‥‥。」
ネスティ「いいか、君は少し‥‥‥いや、だいぶ緊張感がなさすぎる。
召喚師としての心構えをもっと意識すべきだ。」
トリス「あたし、一生懸命やってるわよぉ‥‥‥。」
ネスティ「君が頑張っているのはよく知っているが、こういう時の気の抜け具合を注意してるんだよ!
だいたい、いつも君は‥‥‥!」
トリス「ネス、イライラしてちゃお腹空くでしょ? ほら、採ってきたばかりのナウバの実だよ。」
ネスティ「君はバカか!?」
トリス「なっ‥‥‥失礼じゃない!? せっかくナウバの実をあげるって言ってるのに!」
ネスティ「このタイミングでそれを出すとか、君は本当にバカだな。」
トリス「もう、そんなにバカバカ言わないでよ! バカって言った方がバカなんだからね!
ねっ、ラージュもそう思うでしょ!?」
ネスティ「‥‥‥トリス、誰に言っている?」
トリス「ラージュよ、ラージュ! 彼ならあたしの味方をしてくれるんだから。」
バルレル「誰だよ、それ?」
トリス「だから‥‥‥!
あれっ? 誰だったっけ‥‥‥。」
ネスティ「はぁ‥‥‥こうも抜けているとは。」
トリス「うーん‥‥‥確かに知ってたはずなんだけど‥‥‥。」
そうそう、その笑顔! やっぱりトリスは笑顔が一番だな!
トリス「ラージュ‥‥‥!
ああ、ネスが言うようにあたしはバカだ! こんなにも大切なひとのことを忘れてたなんて。
『繭世界』で困っていたみんなを助けて、リィンバウムを元に戻すために全力で戦ってくれた。
あたしたちの、大切な恩人‥‥‥!
この世界が元に戻ったから、あたしの記憶からもラージュの存在が消えかかってるの?
だとして、ごめんねラージュ! 忘れないって、あの時約束したのに‥‥‥!
あの後、そっちの世界はどうなっちゃったのかな? ラージュはアムたちと仲良く暮らせてる?
まさか‥‥‥消えたりしてないわよね?
私、君に助けられてばかりだった。何もしてあげられなくてごめんね‥‥‥ラージュ。」
ネスティ「‥‥‥トリス、どうした?
泣いてるのか!?」
トリス「え‥‥‥?」
バルレル「あーあ、やっちまったなメガネ。」
ネスティ「僕はそんなに酷いことを言ったつもりは‥‥‥!」
トリス「ううん、違うの。ごめん、何でもないから‥‥‥。」
バルレル「ホ、ホントに大丈夫なのか?」
トリス「もう、何でもないって言ったでしょ!」
ネスティ「だったらいいんだが‥‥‥。」
トリス「‥‥‥ところでさ、ふたりとも。ラージュって‥‥‥覚えてる?」
ネスティ「先ほど君が口にした名前か。悪いが僕の記憶にはない。」
バルレル「オレも知らねぇ。」
トリス「ん‥‥‥そっか。」
ネスティ「その者が、何か僕たちと関係でもあるのか?」
トリス「別に! 特に深い意味はないから、忘れて。
(うん、これでいいんだ。ふたりには、あたしみたいに後悔してほしくないから)」
ネスティ「いつまでもここで話し込んでるわけにはいかない。仲間と合流するために、出発しよう。」
バルレル「よし、行くか!」
ラージュ、もう心配しないで。あたしだけは、君のこと‥‥‥忘れないでいるよ。
あたしが想い続けていれば、君という存在はけして消えたりしないよね?
君が勇気を持ってあたしたちを助けてくれたこと一生ありがとうって想い続けるから。
だから、絶対どこかで生きていて‥‥‥!
また会おうねって言った約束、果たしてくれるまでいつまでも待ってる!
あたしたちを‥‥‥この世界を救ってくれてありがとう。
ラージュに出会えて、本当に良かった!
ラージュ「オレも同じだよ。トリスに出会えて良かった。ありがとう‥‥‥!」
トリス「え‥‥‥!?
ラージュ‥‥‥いるの?」
ネスティ「トリス! 何をしてるんだ、またはぐれるぞ!」
トリス「でも、確かにさっき‥‥‥ラージュの声が‥‥‥。」
ネスティ「トリス!!」
トリス「あっ、はぁ〜い!」
ネスに怒られてばっかりで、まだまだ落ちこぼれのあたしだけど‥‥‥。
君の勇気と信念を見習って、頑張るよ!
いつかまた、同じ空を見上げようね‥‥‥ラージュ!
END