第2話

アベルト「よっ、お疲れさん」
アルカ「アベルト!? どうしてここに?」
アベルト「残務処理がひと段落ついたんでな、後は警察従士に任せて、抜け出してきた
     お前のほうは、眠れなくて夜の散歩ってところか?
     学生のころから変わんねえな、そういうところ」
アルカ「当たりだよ、さすがアベルトには何でも見抜かれちゃうね」
アベルト「いいかげん、付き合いも相当に長いしな」
アルカ「そういえば今日はありがとう、アベルト おかげで事件を解決できたよ」
アベルト「気にすんな 今回は、そっちのおかげでこっちも助かった
     あの悪魔を倒したら、なくなってた記憶が街の連中のところに帰っていっただろ?
     あれだけで、今朝から起きてたもめ事のほとんどが解決したんだからな」
アルカ「あ、そっか!」
アベルト「警察騎士の仕事も、召喚師の仕事も、この街ではどこか繋がってるんだ
     だから俺の手を借りるのに いちいち礼なんていらないんだよ」
アルカ「そう‥‥‥かもしれないけど、やっぱり感謝したいときって、あるよ」
アベルト「ち、強情者が」
アルカ「アベルトに言われたくないよ」

ほんと‥‥‥、強情さではアベルトに勝てる気がしないよ‥‥‥

第3話

アルカ「うーん‥‥‥」
アベルト「ん? どうした、今夜はまた難しい顔してんな」
アルカ「いや、ほら、今日のわたしって、勝手に突っ走ってみんなに迷惑かけたし
    反省してるんだよ、これでも」
アベルト「ん、まあ、確かに 今日のはちっとやらかしちまったな
     俺のほうも、上司にこってりしぼられちまった」
アルカ「そうだよね ほんとに、ごめん」
アベルト「ま、気にすんな‥‥‥ってのは無理にしても、そんなに気に病んだりはすんな
     周りに迷惑をかけてるってのは、周りに頼れている証拠なんだ
     お前と付き合ってる連中なら、どいつもそんなこと慣れっこだろうさ」
アルカ「褒められてる? 励まされてる? 責められてる? 怒られてる?」
アベルト「どれでも、好きなやつを選びな お前が選んだやつが、そのまま正解だ
     嵐の海なんざ、すぐに凪に変わる その逆も同じ、考えるだけ無駄ってもんだ
     そんじゃ、俺は行くぜ 今夜は久々に、夜に寝れるんだ」
アルカ「うん‥‥‥おやすみ、アベルト」
アベルト「おう」

おやすみ、アベルト‥‥‥ そして、励ましてくれてありがとう‥‥‥

第4話

アベルト「ったく、相変わらず忙しいやつだな 謹慎中のはずじゃなかったのかよ」
アルカ「そういうアベルトこそ、こんなところにいて大丈夫なの?
    いま警察騎士は、今回の事後処理で大忙しのはずじゃ‥‥‥」
アベルト「ああ、休暇中だったはずの奴まで総動員して捜査中さ
     うちの新米の中にゃ、たまのデートをキャンセルさせられたやつもいるぜ」
アルカ「あはは‥‥‥ それはまた、おきのどくに‥‥‥」
アベルト「今回の強奪事件‥‥‥前までの事件に比べてちょいと派手すぎるからな
     真紅の鎖の本気はこれからだろうってんで対策にいよいよ本腰入れることになった」
アルカ「だよねえ‥‥‥ まったく、ひとごとじゃないよ」
アベルト「ま、面倒な捜査の類はできるだけ、こっちで片づけておいてやる
     事件の解決は任せたぜ、調停召喚師 そいつばかりは、お前たちの仕事だからな」
アルカ「責任重大だなあ‥‥‥」

そうだね‥‥‥ 気合を入れなおして、がんばらなきゃ!

第5話

アベルト「それにしてもまあ、人生、何が起こるかわからないもんだな
     まさかあのルエリィが、誓約することになるとはなあ」
アルカ「そんなに意外だった?」
アベルト「んー、まあ、そうじゃないと言えば嘘になるんだが
     あいつの根性と執念なら、どうせそのうちやれるだろうとは思ってたな
     お前ほどじゃないが、俺だってルエリィとはそれなりの付き合いだ
     いつまでもお前の背中を追っかけるだけの可愛い後輩じゃないとは思ってたさ」
アルカ「追いつかれちゃったかな?」
アベルト「さあて、な そいつはこれからのお前次第だ
     俺はにやにやしながら、特等席から見守らせてもらうぜ?」
アルカ「あはは‥‥‥ありがとう、アベルト」
アベルト「ん? 何だよ、いきなり」
アルカ「今のってつまり、これまでわたしのそばで力になってくれていたのと同じように、
    ルエリィのことも助けてくれるってことだよね?」
アベルト「‥‥‥勘違いするなよ? あいつを甘やかす気はないからな
     あくまで、俺の力が必要で、あいつ自身じゃどうしようもない時だけだ」
アルカ「うん、わかってる」
アベルト「その笑顔が怪しいんだよ、お前は‥‥‥ ふわああ、あ‥‥‥
     わり、もう帰るわ そういや、昨日も寝てなかった」
アルカ「うん、おやすみなさい また明日」
アベルト「おう、また明日」

ルエリィが目を覚ましたら、思い切りねぎらってあげないとな‥‥‥

第6話

アベルト「最近オヤジさんが‥‥‥ ああ、うちの先輩騎士なんだけどな
     お前も早く結婚しろって やたらとうるさいんだよ」
アルカ「へえ? 誰か、気になってる人でもいるの?」
アベルト「あー、いや、そういう意味じゃないんだ
     相手は誰でもいいから さっさと身を固めろ、だとさ
     警察騎士なんて仕事をやってると、機会を逃してずっと独り身ってやつも多いし
     まだ無理のきく若いうちに所帯を作っとけ、だそうだ」
アルカ「へえ‥‥‥そういう話なら、うちも、あんまり他人事じゃないかなあ」
アベルト「事件に振り回されて、自分の時間を持てないってことじゃ変わらないしな
     オヤジさんの言うことも分かるが、実際問題として、どうなんだろうな
     というか、あのオヤジ、自分とこの夫婦仲がうまくいってない腹いせに
     若いのを同じ修羅場に巻き込もうとしてるだけじゃないだろうな?」
アルカ「あはは、そればっかりは、本人を知らないと何とも言えないなぁ
    まぁ、アベルトなら、きっと大丈夫 ちゃんとした家庭を作れるよ」
アベルト「さて、どうだかね?
     こういう方面の話じゃ、お前の保証はちっとも信頼できないからな」
アルカ「ひどいな、褒めてるのに」
アベルト「褒める才能のあるやつの言葉だからこそ 話半分に受け取っとくってことさ」
アルカ「‥‥‥微妙に褒め返されたみたいだけど、どう反応したらいいんだろう、わたしは」
アベルト「ま、少なくとも今は、妙なことに焦るより、ここでこうしてるほうが俺の性に合ってる
     今後どんだけいい女と巡り合うことがあっても お前の代わりにはならないだろうしな」
アルカ「はは、そうだね それは、わたしも同意見だよ
    やっぱり、アベルトは特別だよ 代わりの誰かなんて、想像できないもん」
アベルト「‥‥‥同意見、か まあ、今は別に、それでもいいか」
アルカ「え? 何か言った?」
アベルト「何でもない 独り言だ」
アルカ「‥‥‥ちょっと気になる」
アベルト「そんなどうでもいいことじゃなくて、別のところに気づいてくれよ」
アルカ「んー?」

うーん、アベルトってときどき、よくわからないことを言うんだよね‥‥‥

第7話

アベルト「せっかく再会した旧友が、すっかり変わってしまった‥‥‥か」
アルカ「うん‥‥‥ 昔も、変わったところのある子だったけど
    悪い子ではなかった、はず‥‥‥ わたしはそう信じてたんだけど、な‥‥‥」
アベルト「人をすぐ信じるってのはお前の長所なんだが、今回は裏目に出たな
     やれやれ、こういう話になってなければ 個人的に聴きだしたいこともあったんだがな
     お前の小さいころの話とか、そういう話を」
アルカ「‥‥‥なんで?」
アベルト「どんな環境で人を育てたらお前みたいなやつが出来上がるのか、単純に興味がある」
アルカ「‥‥‥あなたがわたしを何だと思っているのかわからなくなってきたよ」
アベルト「最高の友人、だぜ?」
アルカ「アベルトのことは信用してるけど、アベルトの笑顔はあんまり信用してない」
アベルト「ひっでえなあ」

笑ったら、少し気が楽になったよ ありがとう、アベルト‥‥‥

第8話

アベルト「‥‥‥なあ、お前さ、学園の七不思議って覚えてるか?」
アルカ「え? ええと‥‥‥
    真夜中になると増える教室とか、宿題を忘れた女の子の幽霊とか‥‥‥
    あと何があったっけ?」
アベルト「伝説の大校長、ってのに聞き覚えは?」
アルカ「ああ、そういえばそんな噂もあったような‥‥‥って、あれ?」
アベルト「学園長より偉い伝説の人物だけど、その正体はいっさい不明
     誰が言い出したのかもわからない、噂の中だけの住人
     そして恐ろしいことに、学園創立の昔から、一度も代替わりをしていないらしい
     気の遠くなるような長い間、ずっと、一人の人物がその地位にあるのだとか‥‥‥」
アルカ「えーと‥‥‥ もしかして、先生のことだよね、それ」
アベルト「間違いないだろうな
     最初に聞いた時には、幽霊話のたぐいだと思ってたんだが
     まさか、ほとんどそのまま事実だったとは」
アルカ「世界には、いろいろと不思議なことがあるものだね‥‥‥」
アベルト「さんざん俺たちが青春時代を過ごした学園にでさえ、こんな驚きがあったんだ
     これから先も、どこから何が飛び出してくるか、分かったものじゃないな」
アルカ「‥‥‥アベルト?」
アベルト「どうせお前のことだ、自分の友人のしでかしたことで、沈んでたんだろう
     周りで起こった何でもかんでも 自分のこととして抱え込んでしまうのは
     お前のいいところでもあるんだが、危なっかしいところでもある
     今回みたいな場合は特にな」
アルカ「あなたが何が言いたいのかはわかったよ あまり気にするなっていうんでしょ?
    でも、わたしは‥‥‥」
アベルト「わかってる、どう言ったところでお前はそう答えるだろうってな
     ただ、お前が友人の一人のことでべっこりヘコんでる姿を見てると
     別の友人が落ち着かないってことも覚えておいてほしいだけだ
     嫉妬してるんだぜ、これでも」
アルカ「‥‥‥あは、ごめん」

アベルトには、心配かけちゃってるな‥‥‥

第9話

アベルト「‥‥‥あいつは落ち着いたか?」
アルカ「なんとか眠ったみたいだよ だいぶまいってたみたいだけどね」
アベルト「無理もないさ、あんな目に遭えば 誰だって普通じゃいられなくなる
     まして、あいつにとっちゃ、一番大切なお前を巻き込むところだったんだからな
     見ていたこっちの心臓のことも 少しは考えろってんだ」
アルカ「あはは‥‥‥ なんていうか、ごめん‥‥‥」
アベルト「それで? お前自身はどうなんだ? 大丈夫そうか?」
アルカ「さっきまでは少し辛かったけど、あなたの顔を見たら少し楽になったよ
    アベルトって動じないよね 何があっても、取り乱したりしないし
    長いつきあいなのに、辛そうなところとか見たことない気がする」
アベルト「ん‥‥‥まあ、そうか
     俺の信条は、気楽に生きることだからな 悩みは持たないし、いつだって平常心だ」
アルカ「ウソだよね?
    本当にそんな信条を持ってるなら、警察騎士になんてならないはずだし」
アベルト「まあ、な‥‥‥」
アルカ「もしかして、この話題、あんまり触れたくない?」」
アベルト「いや、別にそういうわけじゃないんだが ‥‥‥笑うなよ?」
アルカ「そりゃ、笑わないけど」
アベルト「何があろうと平気な顔をしてるくらいでないとお前が気軽に頼ってこないだろ?
     下手したら逆に、お前に心配されちまう それじゃ意味がないんだよ」
アルカ「ぷっ‥‥‥ あははははっ」
アベルト「あ、お前、笑わないって約束だっただろう!?」
アルカ「ご、ごめん、でも、今のはさすがに、なんていうか‥‥‥
    アベルトらしすぎて、ガマンできなくて‥‥‥」
アベルト「ああもう、だから言いたくなかったんだ!」
アルカ「‥‥‥いつもありがとう、アベルト 本当に、頼らせてもらってるよ」
アベルト「おう‥‥‥これからも、遠慮なく頼れ
     圧倒的に頼られることのほうが多いお前は、それでやっと帳尻が合うんだ
     そうでなきゃ、俺が落ち着かない」

本当に、ありがとう‥‥‥

第10話

アベルト「案の定、ひでえ顔してやがるな
     海の真ん中で羅針盤をなくして、どうしたらいいか見失ったって顔だ」
アルカ「うん‥‥‥」
アベルト「言い返す言葉もなし、か こりゃ本格的に深刻だな」
アルカ「だって、本当にアベルトの言う通りだからさ
    わたしたちは、エルストさんに憧れて、エルストさんの言葉に導かれてここに来た
    召喚師になったのも、みんなのためにと言って戦ってきたのも、全部そうだよ
    なのに、今さら‥‥‥それが間違いだった、なんて」
アベルト「やれやれ、こいつは重症だな」
アルカ「なんとでも言ってよ‥‥‥」
アベルト「そうか? それじゃ、あえて言わせてもらうとするか
     ‥‥‥ふざけるなよ」
アルカ「えっ‥‥‥?」
アベルト「お前、自分で何を言っているのか、本当に分かってるのか!?
     これまで生きてきた自分自身を、口先だけの最低のクズにするつもりか!?」
アルカ「え? え? ど、どういう意味?」
アベルト「最初に誰に言われた言葉だろうとな、お前が口にした瞬間から、お前の言葉だ!」
アルカ「あ‥‥‥」
アベルト「お前はこのセイヴァールに来てから何度、信じろという言葉を口にした!?
     何人の人間に自分を信じさせて、頼らせてきた!?
     何人の仲間を作り、支えて支えられて、ここまでやってきたんだ!?」
アルカ「アベルト‥‥‥」
アベルト「‥‥‥エルスト・ブラッテルン本人が、どんなつもりでいても、いいじゃないか
     その背中を追いかけながら、お前は、これまで立派にやってきたんだ
     憧れの人に裏切られた程度のことで、憧れてきた自分の気持ちを裏切るなよ
     羅針盤が見えなくなったなら、海でも空でもいいから、周りを見渡せよ
     航路なんてものは、案外、そういうところからも見つかるもんだぜ」

エルストさんに憧れて、これまでやってきたわたし自身の気持ち‥‥‥
ありがとう、アベルト おかげで、大切なことを思い出せたよ‥‥‥

第11話

アベルト「ふう‥‥‥ 何年分かの始末書を書いた気分だぜ」
アルカ「え? 何か失敗したの?」
アベルト「真紅の鎖の若頭を連れ出した件の始末書に決まってるだろう」
アルカ「あっ‥‥‥ ごめん、すっかり忘れてた」
アベルト「まあ、いいさ しっかり結果は出たんだしな
     真紅の鎖に続いて、ブラッテルンまで街から一掃
     それで文句をつけるようなやつは うちの騎士団にはいないさ
     今回の始末書は、まあ、形だけのものだ 受け取った上司も笑ってたしな」
アルカ「それでも、始末書の枚数を手加減してくれたりはしなかったんだ?」
アベルト「警察が書類を適当に扱いだしたら いろいろな意味で街が危ないだろ?
     そこは融通がきかないくらいでちょうどいいんだよ」
アルカ「ううん‥‥‥あいかわらず、アベルトのこだわりはよくわからないな」
アベルト「お互い様だ、俺もあいかわらず、お前のこだわりは読みきれてない
     だから、いいんだ そうだろう?」
アルカ「うん、まあね」

でも、アベルトだって疲れてるんだから、徹夜仕事にはしないようにね?

第12話

アベルト「‥‥‥わかっちゃいたことだが、誰にでも事情ってのはあるもんだな」
アルカ「でも、まだよくわからないよ ギフトはなんで、相談してくれなかったんだろ」
アベルト「あー‥‥‥そうか、お前からだとよくわからないかもしれないな」
アルカ「え? もしかして、アベルトにはわかるの?」
アベルト「わかる、ってほどじゃないが、予想はできるさ
     あいつにはな、お前がまぶしく見えてたんだよ
     能力とか才能とかじゃない お前の中に見えた可能性がまぶしかった」
アルカ「可能性?」
アベルト「何か凄いことをやらかしそうに見えるんだよ 今も昔も、お前ってやつはな
     そんなやつと対等の友人でいるためには、並大抵の神経じゃいられなかったんだろうさ
     自分も何か凄いことをやらかさないと あいつの隣にいる資格はない‥‥‥
     そんなふうに思いつめたとして、まあ、何の不思議もないな
     そんなこと、劣等感を抱いてる当の相手に相談なんてできないだろ?」
アルカ「そんな‥‥‥ 友達に資格なんて、そんなもの、必要ないのに」
アベルト「そいつは、お前が決めることじゃない あいつの心が決めることだろ」
アルカ「‥‥‥うん‥‥‥」
アベルト「俺も似たような心境に覚えがあるからな、同情するところがなくもないんだが
     まあ、何にせよお前が気にすることじゃない 悩むくらいなら忘れちまえ」
アルカ「うん‥‥‥ じゃあ、ひとつだけ聞かせてよ
    アベルトも、わたしの友達でいることに、何か重たいものを感じてるの?」
アベルト「さあ、どうだろうな?」

いつもみたいに笑って、アベルトは答を教えてはくれなかった‥‥‥

第14話

好感度4・5
アベルト「ふう‥‥‥街の混乱は、とりあえず収まったとみてよさそうか
     といっても、それも所詮一時しのぎだ、ちょっとした刺激で爆発しかねない
     事態がおかしなほうに転がる前に、問題の根っこをどうにかしないとな‥‥‥」
アルカ「アベルト? まだ起きてたの?」
アベルト「ああ、見回りついでに海でも見ていこうと思ってな」
アルカ「見回りって‥‥‥ 明日に備えて休まないの?」
アベルト「昼にあれだけのゴタゴタがあったんだ、街の様子が気になってな
     この時間にこんな場所にいるんだ、それはお前も同じだろ?」
アルカ「まあ、そうだけど‥‥‥」
アベルト「‥‥‥今夜の海は、やけに静かだな
     こういう波の日に限って、一度荒れ始めたら手がつけられなくなるんだが
     出港を先送りにできる航海ばかりとも限らない、ってか‥‥‥」
アルカ「珍しいね、アベルトがそんなあからさまに不安そうなこと言うのは」
アベルト「さすがに、事態がここまで大きくなれば そうそう自信家でもいられないさ
     俺は有能だが平凡な警察騎士なんだ、非常識な任務は専門外だ」
アルカ「そんなやる気のないこと言いながら、なんだかんだで頼らせてくれるんだよね
    そういうアベルトの素直じゃないところ、わたしは好きだな」
アベルト「ふだん何でも頼れと言ってる手前、引っ込みがつかなくなってるだけだ
     さっさと通常業務に戻りたいってのが偽りのない本音だな」
アルカ「ねえ、アベルト」
アベルト「‥‥‥何だ」
アルカ「もう一回言っておくね 大好きだよ」
アベルト「‥‥‥あのな、忘れてるかもしれないから俺ももう一度確認しておくぞ
     俺とお前は親友同士だが、同時に、俺は男で、お前は女でもあるんだ
     そういう言葉を、あまり軽々しく使うな 勘違いするだろ?」
アルカ「あれ? アベルトって、ちゃんとわたしを女の子として見てたんだ?」
アベルト「‥‥‥確かに最初のうちは、性別なんて気にしちゃいなかったんだがな
     いつまでもそうやって目をそらしておくには、お前はいい女すぎた」
アルカ「‥‥‥え?」
アベルト「こう見えて、俺はそれなりに職場じゃもてるほうなんだが
     お前以上に惚れ込める女がそうそう見付かるはずもなくてな
     おかげでこの通り、ずっと独り身だ」
アルカ「あー‥‥‥ そういうことは、早めに言ってよ」
アベルト「言ってどうする、お前こそ、俺のことを男として見ちゃいないだろ」
アルカ「なんで、そんなふうにすぐ決めつけちゃうのかなあ‥‥‥
    ‥‥‥うん、よし決めた アベルト、ちょっとこっち来て
    ここ立って、ちょっとかがんで‥‥‥ そうそう、そんな感じ」
アベルト「なんだよ、一体‥‥‥」
(チュッ)
アルカ「んっ‥‥‥」
アベルト「‥‥‥お前‥‥‥」
アルカ「あはは、やっぱアベルト、背が高いね 背伸びしないと、くちびる、届かなかったよ
    どうかな? わたしたちにもロマンティック、できる気しないかな?」
アベルト「いや‥‥‥不意打ちだったせいで よく分からなかったが‥‥‥」
アルカ「あ、でも、せっかくのキスシーンだけど背景がちょっと残念だったね
    月夜のデートなのに、肝心の月が二つに増えてるとか、ちょっと興ざめ
    そういうわけだから、あの月をどうにかしたら 今のはもう一回やりなおそう、うん」
アベルト「‥‥‥本当に、いいのか?」
アルカ「何が?」
アベルト「本当に俺は、お前を女として愛してもいいのか?」
アルカ「別に、男と女とか、堅苦しく考えなくてもいいと思うけど
    ここにいるのは、わたしとあなた そしてわたしは、あなたを決して拒まない
    それだけの話だよ?」
アベルト「‥‥‥はあ‥‥‥ 我ながら、とんでもない女に惚れたもんだ」
(アベルト去る)
アルカ「帰るの?」
アベルト「ロマンチックなキスシーンは、あの月が落ちるまでお預けなんだろう?
     だったら、今夜は早いとこ休んで あすの決戦に備えるさ
     何が何でもあの月を片づけないといけない理由もひとつ増えたことだしな」
アルカ「‥‥‥ん、わかった おやすみアベルト、また明日」
アベルト「ああ、また明日な」

さあて、と わたしも帰って、早く寝よう
明日に備えて‥‥‥ そして、その後に続く未来に備えて
これからもずっと、アベルトと一緒に戦っていくために‥‥‥



好感度3
アベルト「ふう‥‥‥街の混乱は、とりあえず収まったとみてよさそうか
     といっても、それも所詮一時しのぎだ、ちょっとした刺激で爆発しかねない
     事態がおかしなほうに転がる前に、問題の根っこをどうにかしないとな‥‥‥」
アルカ「アベルト? まだ起きてたの?」
アベルト「ああ、見回りついでに海でも見ていこうと思ってな」
アルカ「見回りって‥‥‥ 明日に備えて休まないの?」
アベルト「昼にあれだけのゴタゴタがあったんだ、街の様子が気になってな
     この時間にこんな場所にいるんだ、それはお前も同じだろ?」
アルカ「まあ、そうだけど‥‥‥」
アベルト「‥‥‥今夜の海は、やけに静かだな
     こういう波の日に限って、一度荒れ始めたら手がつけられなくなるんだが
     出港を先送りにできる航海ばかりとも限らない、ってか‥‥‥」
アルカ「珍しいね、アベルトがそんなあからさまに不安そうなこと言うのは」
アベルト「さすがに、事態がここまで大きくなれば そうそう自信家でもいられないさ
     俺は有能だが平凡な警察騎士なんだ、非常識な任務は専門外だ」
アルカ「そんなやる気のないこと言いながら、なんだかんだで頼らせてくれるんだよね
    そういうアベルトの素直じゃないところ、わたしは好きだな」
アベルト「ふだん何でも頼れと言ってる手前、引っ込みがつかなくなってるだけだ
     さっさと通常業務に戻りたいってのが偽りのない本音だな」
アルカ「ねえ、アベルト」
アベルト「‥‥‥何だ」
アルカ「もう一回言っておくね 大好きだよ」
アベルト「‥‥‥あのな、忘れてるかもしれないから俺ももう一度確認しておくぞ
     俺とお前は親友同士だが、同時に、俺は男で、お前は女でもあるんだ
     そういう言葉を、あまり軽々しく使うな 勘違いするだろ?」
アルカ「あれ? アベルトって、ちゃんとわたしを女の子として見てたんだ?」
アベルト「‥‥‥確かに最初のうちは、性別なんて気にしちゃいなかったんだがな」
アルカ「‥‥‥うん、よし決めた アベルト、ちょっとこっち来て
    ここ立って、ちょっとかがんで‥‥‥ そうそう、そんな感じ」
アベルト「なんだよ、一体‥‥‥」
(チュッ)
アルカ「んっ‥‥‥」
アベルト「‥‥‥お前‥‥‥」
アルカ「あはは、やっぱアベルト、背が高いね 背伸びしないと、くちびる、届かなかったよ
    どうかな? わたしたちにもロマンティック、できる気しないかな?」
アベルト「いや‥‥‥不意打ちだったせいで よく分からなかったが‥‥‥」
アルカ「あ、でも、せっかくのキスシーンだけど背景がちょっと残念だったね
    月夜のデートなのに、肝心の月が二つに増えてるとか、ちょっと興ざめ
    そういうわけだから、あの月をどうにかしたら 今のはもう一回やりなおそう、うん」
アベルト「‥‥‥はあ‥‥‥ 我ながら、とんでもない女に惚れたもんだ」
(アベルト去る)
アルカ「帰るの?」
アベルト「ロマンチックなキスシーンは、あの月が落ちるまでお預けなんだろう?
     だったら、今夜は早いとこ休んで あすの決戦に備えるさ
     何が何でもあの月を片づけないといけない理由もひとつ増えたことだしな」
アルカ「‥‥‥ん、わかった おやすみアベルト、また明日」
アベルト「ああ、また明日な」

さあて、と わたしも帰って、早く寝よう
明日に備えて‥‥‥ そして、その後に続く未来に備えて
これからもずっと、アベルトと一緒に戦っていくために‥‥‥

ED

好感度4・5
アルカ「ん‥‥‥
    ふわああ‥‥‥ よく寝た‥‥‥
    何か、懐かしい夢をみたような、そうでもないような‥‥‥」
(ガチャ)
アベルト「ただいま‥‥‥」
アルカ「おかえり 突然の夜勤、おつかれさま」
アベルト「おう、いきなりの捕り物で 夜の街を思い切り走り回ってきたぜ‥‥‥
     どうして犯罪ってのは昼夜を問わずに起こるもんなんだろうな‥‥‥」
アルカ「勤勉で有能な警察騎士が、昼夜を問わずに追いかけてくれるからじゃないかな」
アベルト「そいつはまた、不毛な話だな‥‥‥」
アルカ「まあ、今はゆっくり休みなよ 寝る前に何か飲む?」
アベルト「あー‥‥‥それなら、薄めのミルクティーを頼めるか?」
アルカ「了解!」
アベルト「‥‥‥そういや、お前の響友、最近の調子はどうだ?」
アルカ「ペリエなら、もちろん元気だよ ヒゲヒゲサン農場にも、ようやく慣れたって
    畑仕事が楽しくて仕方ないみたい 毎日充実してるって言ってたよ」
アベルト「調停機構の任務に支障が出ない範囲にさせとけよ?」
アルカ「この部屋を出る、一人で暮らす、って言い始めた時にはどうしようと思ったけど
    あの子はあの子で、思うところがあったのかな」
アベルト「そりゃあ、あるに決まってるだろ」
アルカ「そうなの?」
アベルト「‥‥‥まあ、分からないなら分からないでかまわないだろうさ
     お前はそういうやつだし、俺もあいつも そのあたりは承知しているし」
アルカ「え? え?」
アベルト「つまり、俺がずっとお前のそばにいて、あいつもそれを認めたってことだ
     ま、あまり深く気にするな」
アルカ「うーん‥‥‥
    でも、わたしとあなたのふたりっていうのも、さびしいというか、物足りないというか」
アベルト「‥‥‥おい」
アルカ「あ、違うよ、アベルトに不満があるとか そういうのじゃなくて
    ふたりでいるのもうれしいし すごく落ち着くんだけど、
    むしろ落ち着きすぎちゃう気がして、年頃の男女としてどうなんだろうとか思ったりして」
アベルト「年頃の男女らしさにこだわるのも、今さらすぎる気もするがな」
アルカ「それはわかってるけど! そういう意地悪、今はいいから!」
アベルト「‥‥‥三人だな 男が一人、女が二人」
アルカ「ええー、少ないよ! せめて五人! 男の子、三人はほしい!」
アベルト「あのな? よく考えてみろよ 俺とお前の子なんだぞ?
     男なら母ちゃん大好きになりすぎて、父親に噛み付いてくるに決まってる
     そんなめんどくさいもの、三人も相手にできるか」
アルカ「そのくらい、いいじゃない 愛があれば乗り越えられるよ!」
アベルト「あいにくだが、俺の愛情はお前に向ける分で品切れだ」
アルカ「むう‥‥‥」
アベルト「さて、寝る前に軽く、シャワーでも浴びてくるかな」
アルカ「あ、それなら出るころにはお茶の準備を済ませておくよ」
アベルト「ああ、頼んだ―――」
(ピピッピピッ)
管理官さん「≪‥‥‥アルカさん! アルカさん、聞こえますか!≫
      ≪獣人の集団による、窃盗事件です! すぐに現場に向かってください!≫
      ≪それと、この事件には久しぶりに、警察騎士団と共同であたることになります≫
      ≪近くに騎士アベルトがいましたら、首ねっこをひっつかんででも≫
      ≪現場に連れてきてほしいというのが騎士団のほうからの要請です!≫」
(ピッ)
アルカ「‥‥‥ええと」
アベルト「言わなくていい、俺にも聞こえた ‥‥‥さらば、愛しきベッドと枕」
アルカ「なんていうか、ご愁傷様?」
アベルト「こうなったら仕方ない、さっさと片付けて今度こそ休むさ
     子どもの数の話は、その後だ
     悪いが俺はゆずる気ないからな」
アルカ「もう、けち!」



好感度3
アルカ「ん‥‥‥
    ふわああ‥‥‥ よく寝た‥‥‥
    何か、懐かしい夢をみたような、そうでもないような‥‥‥」
(ガチャ)
アベルト「ただいま‥‥‥」
アルカ「おかえり 突然の夜勤、おつかれさま」
アベルト「おう、いきなりの捕り物で 夜の街を思い切り走り回ってきたぜ‥‥‥
     どうして犯罪ってのは昼夜を問わずに起こるもんなんだろうな‥‥‥」
アルカ「勤勉で有能な警察騎士が、昼夜を問わずに追いかけてくれるからじゃないかな」
アベルト「そいつはまた、不毛な話だな‥‥‥」
アルカ「まあ、今はゆっくり休みなよ 寝る前に何か飲む?」
アベルト「あー‥‥‥それなら、薄めのミルクティーを頼めるか?」
アルカ「了解!」
アベルト「‥‥‥そういや、お前の響友、最近の調子はどうだ?」
アルカ「ペリエなら、もちろん元気だよ ヒゲヒゲサン農場にも、ようやく慣れたって
    畑仕事が楽しくて仕方ないみたい 毎日充実してるって言ってたよ」
アベルト「調停機構の任務に支障が出ない範囲にさせとけよ?」
アルカ「この部屋を出る、一人で暮らす、って言い始めた時にはどうしようと思ったけど
    あの子はあの子で、思うところがあったのかな」
アベルト「そりゃあ、あるに決まってるだろ」
アルカ「そうなの?」
アベルト「‥‥‥まあ、分からないなら分からないでかまわないだろうさ
     お前はそういうやつだし、俺もあいつも そのあたりは承知しているし」
アルカ「え? え?」
アベルト「つまり、俺がずっとお前のそばにいて、あいつもそれを認めたってことだ
     ま、あまり深く気にするな」
アルカ「うーん‥‥‥」
アベルト「さて、寝る前に軽く、シャワーでも浴びてくるかな」
アルカ「あ、それなら出るころにはお茶の準備を済ませておくよ」
アベルト「ああ、頼んだ―――」
(ピピッピピッ)
管理官さん「≪‥‥‥アルカさん! アルカさん、聞こえますか!≫
      ≪獣人の集団による、窃盗事件です! すぐに現場に向かってください!≫
      ≪それと、この事件には久しぶりに、警察騎士団と共同であたることになります≫
      ≪近くに騎士アベルトがいましたら、首ねっこをひっつかんででも≫
      ≪現場に連れてきてほしいというのが騎士団のほうからの要請です!≫」
(ピッ)
アルカ「‥‥‥ええと」
アベルト「言わなくていい、俺にも聞こえた ‥‥‥さらば、愛しきベッドと枕」
アルカ「なんていうか、ご愁傷様?」
アベルト「こうなったら仕方ない、さっさと片付けて今度こそ休むさ」
アルカ「そうだね、急ごう!」


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Last-modified: 2013-06-09 (日) 00:00:00