情報提供(敬称略):M.S.


どこを向いても召喚師

ラージュ「あれ? バノッサじゃないか。
     こんなところに一人で、なにやってたんだよ。」
バノッサ「それはラージュ、テメェだって同じだろ?
     オレ様がいなければ、一人でなにする気だったんだ?」
ラージュ「オレはここで夜風に当たるのが好きなんだ。バノッサもそうなのか?」
バノッサ「ちげえよ!」

(バノッサ、座る)

バノッサ「下にいると、どこもかしこも召喚師、召喚師! ムカついてしかたがねえんだよ。」
ラージュ「‥‥‥‥‥‥。
     なんでバノッサは、そんなに召喚師が嫌いなんだ?」
バノッサ「召喚師なんてやつらは目的のためには手段を選ばない、偉そうなクソヤロウばかりだからだよ!」
ラージュ「でも! ‥‥‥マグナたちはそんなやつじゃないだろ。」
バノッサ「ちっ、てめぇにはわからねえかもしれねえがな。
     ‥‥‥オレ様のオヤジも召喚師だった。だからヤツらがどういうものかはよくわかってんだよ。
     アイツはオレ様を母親とまとめて捨てるような人間だ。
     召喚師っていうのは、テメェのためならなんでもする。そういう種類の人間なんだよ。」
ラージュ「バノッサの事情はわかったよ。
     でも召喚師みんなが悪い人じゃないと思うぜ。
     ここにいるみんなは、バノッサが言うような人間じゃないぜ。」
バノッサ「フンッ‥‥‥、どうだかな。
     いつか裏切られて、テメェも背中を狙われるかも知れないぜ。」
ラージュ「そんなことはないと思うけどな‥‥‥。
     そうだ!
     バノッサも、もっと色んな召喚師を知ることから、始めようぜ。オレと一緒にさ!」
バノッサ「お断りだ。あんなヤツらといたら、ヘンになりそうだぜ。
     もういいだろ、俺はもう寝るぜ。」

ラージュ「(バノッサは本当に召喚師を恨んでるんだな‥‥‥。いつかみんなのこと、わかってくれるといいんだけど)」

兄弟なんていらねぇ!

ラージュ「あれ、バノッサ。カノンと一緒じゃないんだね。」
バノッサ「その言い方じゃ、いつもつるんでるみたいじゃねぇかよ。
     オレ様だって、たまにはこうやって一人でいたい時があるんだよ。」

(バノッサ、座る)

ラージュ「そういえば聞いてみたかったんだけど。」
バノッサ「あん?」
ラージュ「カノンとは義兄弟って話だけどさ、バノッサに実際の兄弟っていたりするのか?」
バノッサ「‥‥‥。それとこれとどういう関係があるんだよ。」
ラージュ「一人でいることとは関係ないけど、バノッサって結構面倒見いいしさ。
     なんだか、お兄ちゃんっぽいな、と思って。」
バノッサ「お兄ちゃん!? 気色悪い言い方するんじゃねえ!!」
ラージュ「気色悪いかなぁ。」
バノッサ「当たり前だろ! せめて、兄者とか兄貴にしとけ。
     だいたい、面倒見がいいってなんの話だよ。」
ラージュ「そのまんまの意味さ。バノッサとカノンを見てて思っただけだよ。」
バノッサ「ちっ‥‥‥。
     ‥‥‥‥‥‥。
     前にもいったけどな、俺は母子そろってスラムに捨てられたんだぞ。
     兄弟なんかいたって、不幸になるだけだろうが!」

ラージュ「バノッサ‥‥‥。」

力を求める理由

ラージュ「なあ、バノッサ。以前から聞いてみたいことがあるんだけど。」
バノッサ「あぁ? オレ様にか?」
ラージュ「うん。バノッサってやたらと力にこだわるなって。」
バノッサ「それが悪いのかよ。」
ラージュ「悪くはないけど、どうしてそこまで固執するのかと思ってさ。」
バノッサ「力がなきゃ、欲しいものは手に入らねえ! ‥‥‥望みを叶えることもできねえんだよ。
     くだらねえこと聞きやがって‥‥‥。」
ラージュ「じゃあ、力で手に入れたいものってなんなんだ?」
バノッサ「そりゃ‥‥‥今よりもいい場所、いいモノを手に入れること、だな。」

ラージュ「それって‥‥‥」

意外な才能

バノッサ「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「あ、バノッサだったのか。そこでなにしてるんだよ?」
バノッサ「ちっ、またてめぇか。別に‥‥‥暇だから石を削ってただけだ。」
ラージュ「屋根の上からなんか音がするって、みんなが気味悪がってたぞ。
     石なんて叩いてないで‥‥‥って、すごいじゃないか! これ、彫刻だよな!?」
バノッサ「まあ、そんなところだ。」
ラージュ「すごく緻密な模様で、まるで本当の職人みたいだ‥‥‥。」
バノッサ「そんなのは当たり前だ。オレ様はもともと石工の徒弟だったんだからな。
     ま、刃傷沙汰を起こしちまったから、そこにはいられなくなっちまったけどな。
     細工にかけては筋がいいって、親方にも褒められた腕だったんだぜ。」
ラージュ「そうだったのか、バノッサにも意外な特技があったんだな。
     そんなに上手なんだから、それで商売をはじめればいいじゃないか。」
バノッサ「ハッ、バカ言うんじゃねぇよ。
     商売するなら元手がいる。だいたい、職人組合に入らなきゃならねぇだろ。
     今さらどうにもならねぇし、どうするつもりもねぇよ。」
ラージュ「そうか、せっかくの才能なのに、もったいないな‥‥‥。
     こんな細かい彫刻、誰でも出来ることじゃないと思うぜ。」
バノッサ「だけどな、技術ってだけなら、それなりに役に立ってるんだぜ。」
ラージュ「え、どんな風に?」
バノッサ「それっぽい宝石を作って、売り飛ばしたりとかな。」
ラージュ「それじゃあ、犯罪じゃないか! ちゃんとした宝石を加工して売ればいいのに。」
バノッサ「だから、それをやるなら元手がいるって言っただろ? そんな面倒なことやってられっかよ。
     わかったらどっか行け。横でごちゃごちゃ言われると気が散る。」

 う〜ん。これだけの技術があるのに、もったいないな‥‥‥。

ゴロツキの矜持

ラージュ「いよいよ決戦だな。力を合わせて頑張ろうぜ。」
バノッサ「力を合わせるってとこが気にくわねぇが、やっとこの忌々しい世界ともおさらばできるからな。
     どんな敵だろうが、全力でぶちのめしてやるぜ。」
ラージュ「‥‥‥バノッサはそんなにここが嫌いだったのか?」
バノッサ「あん? この場所が、っていうわけじゃねぇが。どうも不本意なことばっかりでよ。
     仕方がねえとはいえ、はぐれ野郎と共闘したり、ふざけた連中の相手もしなけりゃならなかったからな。」
ラージュ「みんなとは、うまくやっているようにみえたけど。それなのに、楽しいことはなにもなかったのかよ?」

(バノッサ、座る)

バノッサ「そうは言ってねぇよ。ただ、ここにはなにもない。
     こう‥‥‥オレ様が力で奪い取りたいと思うような、そういう魅力的なものがねえんだよ。
     おまけに、暴れようにも、化け物みたいな勇者がゴロゴロいやがる。
     イライラするんだよ‥‥‥。オレ様が、オレ様でいられなくなるような気がしてな。」
ラージュ「それなら、バノッサが変わればいいんじゃないか? みんなと一緒に生きる道だってあると思うぜ。」
バノッサ「そいつはダメだ。
     それじゃ、元の世界に帰ったときにやっていけなくなっちまうだろうが。
     オレ様をただのゴロツキだと思ってるんだろうが、ゴロツキにはゴロツキの矜持ってものがあるんだよ。」
ラージュ「そっか‥‥‥。」
バノッサ「だがな、テメエのせいで、ひとつだけ変わっちまったことがある。」
ラージュ「え?」
バノッサ「以前のオレ様は、とにかく力が欲しかった。闇雲に、その先になんの目的もなく力に執着していた。
     だけど、そんなもんはもうどうでもいい‥‥。
     オレ様が本当に求めているものに気づいちまった。オレ様は‥‥自分に居場所が欲しい。」
ラージュ「バノッサ‥‥‥。」
バノッサ「はっ! だがな!
     どうせとるなら一番上等なトコだからな。そこは妥協してやらねエけどよ!」
ラージュ「バノッサらしいな。」
バノッサ「テメエもせいぜい頑張れよ。我慢なんかせずに、欲しいもんは絶対につかんでやれ!」
ラージュ「ああ、言われるまでもないさ!」

最終決戦

(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。 たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
     魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
バノッサ「ったく、言ってくれるじゃねぇか。オレ様には関係ねぜがよ、だがこいつはオレ様の獲物だぜ!」

(最終戦後)
バノッサ「オレ様はてめぇのことを忘れたりしねぇ。他の誰が忘れようがオレ様だけはな。
     ‥‥‥それで十分だろうが。魂に刻みこんで、絶対に忘れねぇようにしといてやる。」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」

ラージュ「ありがとう‥‥‥。」

エンディング「欲するべき力」

【隠れ家】

カノン「バノッサさん、今戻りましたよぉ。」
バノッサ「だいぶ遅かったじゃねェか。何しに行ってたんだよ?」
カノン「すみません、思ってたより時間がかかっちゃって‥‥‥。
    食材を手に入れてきたんです。もう、だいぶ少なくなっていたので。
    ‥‥‥ほら、バノッサさんの好きな干し肉も、ありますよ。」
バノッサ「あァ!? んなの、オレ様がいつ好きだなんて言ったんだよ!」
カノン「あれぇ、自分で気付いてなかったんですか?
    バノッサさん、食事の時っていつもコレから食べるじゃないですか。」
バノッサ「‥‥‥‥‥‥。」
カノン「それから、一口だけとっておくんです。最後のお楽しみって感じで。
    ふふ。あれって、無自覚だったんですね。
    ボクはてっきり、わざとそうしているのかと‥‥‥。」
バノッサ「う、うるせぇ! オレ様が何をどう喰おうと、オレ様の勝手だろうがッ!」
カノン「ええ、そうですね。」
バノッサ「チッ‥‥‥!
     テメェが帰ってきたら、話そうと思ってたことがあったが‥‥‥。
     そのへらへらした顔を見たら、話す気が失せたッ!」
カノン「そんなこと言わないで、教えて下さいよ。何かあったんですか?」
バノッサ「‥‥‥‥‥‥。」
カノン「話してくれないと、気になって眠れなくなりますよ。」
バノッサ「フンッ、仕方ねエな。話してやるよ。
     色々考えたがな‥‥‥。無職の派閥からの誘いは、蹴ることにした。」
カノン「えっ‥‥‥! ほ、本当ですか、バノッサさん!」
バノッサ「んなことで、ウソついてどうすんだよッ!
     オレ様は、オプテュスのリーダーだぜ? あんな奴らの言いなりになる気はねえよ。」
カノン「バノッサさん‥‥‥! ボク、ボク、嬉しいです!」
バノッサ「ケッ、んなことで泣くヤツがあるか!
     借りてきた力じゃ意味ねえんだよ。自分で掴みとらねぇとな。
     なあ、テメェもそう思うだろう? ―――ラージュよォ。」
カノン「‥‥‥えっ? ラージュ?」
バノッサ「あァ? 誰だ、ラージュって。」
カノン「いま、バノッサさんが言ったんですよ。そう思うだろ、ラージュって‥‥‥。」
バノッサ「オレ様が? バカ言え、そんな名前のヤツ、オレ様だって知らねエ‥‥‥。
     ‥‥‥‥‥‥。
     (いや、待て。本当に知らねエのか? 何かが、引っかかる‥‥‥)
     (ラージュ。オレ様はそいつを知ってるハズだ)
     (振り向けばいつも、そこにヤツが‥‥‥)」

バノッサ「――あァ。
     そうかよ、そういうことか。
     まんまと記憶を消されちまってたみてえだな。このオレ様としたことが‥‥‥。
     あのクソみてぇな世界での出来事も、ラージュっつー、バカみてえな男のことも。
     今の今まで、忘れちまってた。
     ‥‥‥チッ、胸クソ悪すぎんだろうが。」

 それなら、バノッサが変わればいいんじゃないか? みんなと一緒に生きる道だってあると思うぜ。

バノッサ「あいつらが、あの世界と一緒に消えちまったからってオレ様の記憶まで消すとは、良い度胸じゃねえか。
     ‥‥‥オレ様はな、自分の目で見たモンしか信じねえ。
     たとえ世界が滅んでも、たとえ記憶をなくしても それで終わりだなんて、思えねエんだよ。」

バノッサ「‥‥‥バカ野郎がッ。」
カノン「えっ、ボクのことですか?」
バノッサ「いや、テモェもバカだが違ぇよ。思い出したんだよ、ラージュが誰なのか。」
カノン「へぇ‥‥‥誰なんです? ボクも知ってる人ですか?」
バノッサ「さアな。知りたければ、思い出せ。」
カノン「思い出せって‥‥‥ええと???」
バノッサ「(カノンは、何も覚えてねエ‥‥‥)
     (なぜ、オレ様だけが思い出せたのかは分からねえが‥‥‥)」

 思い出したからには、もう忘れねエからな。
 オレ様の記憶は、何があってもオレ様のモノだ。
 ‥‥‥だからよオ。なかったことにはしてやらねエよ。
 テメエが生きてきた証。このオレ様が、覚えててやる。
 テメエが、そうなりてぇっていうんならカノンみてえに、義兄弟にしてやってもいいぜ。
 それなりに、テメエのことは気に入ってんだ。バカみてえなヤツだけどな‥‥‥。

ラージュ「あはは、バカっていうのは余計だけど、ありがとな、バノッサ!」

バノッサ「‥‥‥!?」
カノン「ん? どうかしたんですか?」
バノッサ「‥‥‥今、そこに、あのバカが‥‥‥。」
カノン「えっ?」
バノッサ「‥‥‥‥‥‥。
     ‥‥‥いや、なんでもねエよ。」
カノン「ふふ。珍しいですね、ばのっささんがぼんやりするなんて。」
バノッサ「ハァ!? オレ様がいつ、ぼんやりなんてしたッ!?」
カノン「えぇ? だって、今‥‥‥。」
バノッサ「ウダウダ言ってねぇで、メシの支度しろよ! そのために買ってきたんだろうがッ!」
カノン「はいはい、分かりましたよ。すぐに支度しますから、待ってて下さいね。」
バノッサ「フン、早くしろよ。オレ様は、気が短いんだ。」
カノン「ああ、そうだ。バノッサさん。干し肉は、どのぐらい入れますか?」
バノッサ「ハァ? なんでオレ様に聞くんだよ! 好きなだけ入れりゃいいだろッ!」
カノン「分かりました、たくさん入れろってことですね。ほら、やっぱり好物なんじゃないですか〜。」
バノッサ「うるせぇッ!」

 なんでだろうな‥‥‥。あいつらの存在が消えたとは微塵も思えねぇ。
 あいつらは今もどこかの世界で能天気に笑ってんだろうさ。
 そうだろ‥‥‥ラージュ。

 END


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Last-modified: 2018-08-13 (月) 11:01:00