情報提供(敬称略):M.S.


異世界を渡り歩く少女

ナツミ「ラージュ、いる?」
ラージュ「え〜っと、ナツミ?」
ナツミ「ああ、やっぱりここにいたんだね。」
ラージュ「どうしてオレがここにいるってわかったんだ?」
ナツミ「えっと、アムが考え込む時は屋根上にいるから、
    ラージュもそうなのかな〜って思ったんだ。
    ラージュがここにいて良かったよ。」
ラージュ「アムもオレと似たところがあるみたいだからな‥‥‥。
     それで、ナツミもなにか悩みがあって来たのか?」
ナツミ「うん、実は私も頭がぐるぐるして落ち着かなくって、
    ラージュのところに来ちゃった。」
ラージュ「来ちゃった、って‥‥‥。」

(ナツミ、座る)

ラージュ「オレよりアムのところのほうが落ち着くんじゃないか?
     ふたりは友だちなんだろ?」
ナツミ「あ〜、ほら‥‥‥アムは私のこと心配ばかりしてくれるじゃない?
    あんまり、心配かけたくないなって‥‥‥。
    だからかな? アムに似てるラージュのところに来ちゃったのは‥‥‥。」
ラージュ「そんなに似てるか? オレたち。
     まあ、来ちゃったもんはしかたないけどさ‥‥‥。
     でもオレ、ナツミのことを良く知らないんだよな。
     だからオレにナツミのことを教えてもらえないかな?」
ナツミ「私のこと‥‥‥? う〜ん、何から話せばいいのかなあ‥‥‥。」
ラージュ「そう、例えばナツミはこの『繭世界』に来る前はどうしてたのか? とかさ。」
ナツミ「そうね、私、この世界に来る前はリィンバウムって世界に召喚されたんだよね。」
ラージュ「それじゃあ、ここに召喚される前にいた世界も
     ナツミのいた世界じゃないのか?」
ナツミ「うん、学校の帰りに公園に行ったんだけど、
    気付いたら知らない場所にいたんだよ。
    大きなクレーターの中で、周りは一面荒野だった。
    そこにいっぱい人が死んでて怖かったのを覚えてる。」
ラージュ「人がいっぱい死んでいた‥‥‥か。
     いったい何があったんだ? そこで‥‥‥。」
ナツミ「私も詳しいことは良くわからないんだよね‥‥‥。
    私を召喚しようとした時に事故が起こって、
    そのせいでみんな死んだんだってカシスが言ってたわ。
    その後、スラムのチーム・フラットにお世話になることになって‥‥‥。
    バノッサのチーム・オプテュスと敵対して、ひと騒動があったのよ。
    その時に、カシスが現れて加勢してくれたのよね。
    私をリィンバウムに召喚した召喚士だって言いながら。
    もう、争いに次ぐ争いって感じで頭が痛かったわ‥‥‥。」
ラージュ「なんというか、波瀾万丈って感じだな‥‥‥。」
ナツミ「ラージュもそう思う? 私もそう思うんだ。
    でも、私って運がいいみたい。」
ラージュ「どうしてそう思えるんだ? こんなに不運続きなのにさ‥‥‥。」
ナツミ「出会えた人たちがみんな優しいんだもん。 みんなに出会えてラッキーだよ。」
ラージュ「そう思えるナツミは強いと思うぜ。」
ナツミ「そうかな? でも『繭世界』に来た時はけっこう泣いてたかも?
    アムにもけっこう迷惑掛けちゃったし‥‥‥。」

ラージュ「いや、それでもナツミは強いと思う。 みんなに会えてよかったな!」
ナツミ「何言ってるの? もちろんラージュもそのひとりだよ?
    アムもそうだけど、ラージュもすごく優しくしてくれてるもん。
    私、ラージュに感謝してるんだからね?」
ラージュ「そうか? あんまり自覚ないんだけど、そう言われると照れるなあ‥‥‥。」
ナツミ「ありがとうね? ラージュ。」

 ここまで波乱続きだったナツミ‥‥‥。
 今を笑って過ごせるなら、オレは彼女の支えになってあげたいと思った‥‥‥。

ナギミヤという国

ラージュ「ナツミの世界ってどんなところなんだ?」
ナツミ「私の世界? リィンバウムじゃなくて、私が元いた世界のこと?」
ラージュ「そうそう、どんな世界なのか気になってさ。」
ナツミ「そうね‥‥‥。
    私の世界って、この世界やリィンバウムとは違って、
    とにかく人がいっぱいいる世界って感じかな?」
ラージュ「人がいっぱい? それってどれくらいだ?」
ナツミ「私の住んでいた那岐宮市は人口何人だったかな?
    ちょっと覚えてないなあ‥‥‥。
    私の国の首都はもうすぐ1200万人になる
    とかならないとか言ってたと思うけど‥‥‥。」
ラージュ「え〜っと‥‥‥何人だって?」
ナツミ「だから、1200万人だよ。 でも、那岐宮市は10万人行かないと思うけどね。
    私の通ってた学校も全校生徒の数も、けっこう多かったんだよ?」
ラージュ「学校? 学校ってあの青空学校みたいなものか?
     たくさんの人が集まって勉強をするんだっけ?」
ナツミ「そっか、ラージュは学校のことを良く知らないんだね。
    学校はたくさんの人が生きるための知識を得たり、
    生活に必要な技術とかを学ぶところよ?」
ラージュ「たくさんの人が? ちょっと、想像できないな‥‥‥。」
ナツミ「リィンバウムや『繭世界』とは違って、戦争もない平和な国なんだよ。
    だから武術なんかも、競技かスポーツとかの扱いね。
    友達に剣道とかやってた子もいたなぁ‥‥‥。」
ラージュ「ナツミもあれだけ剣を使えるんだ。
     その剣道ってのをやってたのか? 剣を使うんだろ?」
ナツミ「私は‥‥‥剣道じゃなくてバレーかな?
    こう見えてもけっこう、部活で活躍してたんだよ?
    友達にもけっこう‥‥‥褒められてたし‥‥‥。
    ‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥ナツミ?」
ナツミ「ひっ‥‥‥くっ、ふっ‥‥‥えっ‥‥‥。
    かえっりたい‥‥‥帰り‥‥‥たいよ‥‥‥っ。」
ラージュ「ごめん、ナツミ! その‥‥‥オレ!」
ナツミ「うわああああん!!」
ラージュ「ごめん、ナツミ! 聞いて悪かった。 本当にごめん!」

 ナツミの故郷のことなんて聞くんじゃなかった‥‥‥。
 支えてあげたいと思ってたのに、逆に泣かせてしまうなんて‥‥‥。
 オレはただ、泣き続ける彼女の隣にいることしかできなかった‥‥‥。

私だけ情けない

ナツミ「まさか深崎くんたちもこの世界に召喚されてたなんて‥‥‥。」
ラージュ「ナツミはあいつらと元から知り合いなんだっけ?」
ナツミ「うん、私が元々いた世界の、同じ学校に通っていたんだよ。
    友達って言えるほどの関係じゃなかったけど、
    お互い顔と名前は知ってるくらいの関係だよ。」
ラージュ「ナツミにとって、知らない人ばっかりより
     顔見知りのやつが多いほうが嬉しいんじゃないか?」
ナツミ「うん、それはそうなんだけど‥‥‥。」

(ナツミ、座る)

ナツミ「私、けっこういいかげんでさ、先のこととか成り行き任せにしてきたんだよね。
    だけど、異世界に召喚されるなんて、私の人生の中で前代未聞でさ‥‥‥。
    ひとりでパニックになっちゃって、みんなに迷惑かけちゃったりして‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥‥‥‥。」
ナツミ「深崎くんたちがこの非日常的な出来事を受け入れて頑張ってるじゃん?
    そんな姿を見てるとさ、
    今の泣いてばっかりな自分がちょっと情けなく思えてきちゃって‥‥‥。
    はぁ‥‥‥。
    やっぱり私、ダメだなぁ‥‥‥。」
ラージュ「(‥‥‥ナツミ)」

ラージュ「こんなこと言って良いかわかんないけど、」

  •  元気だせよな。
    ラージュ「‥‥‥えっと、その、元気だせよな。
         オレにできることって励ますことしかできないからさ、
         こんなことしか言えないけどさ‥‥‥。」
    ナツミ「‥‥‥うん、ありがとうラージュ。 気を使わせちゃってごめんね。」
    ラージュ「いや‥‥‥オレこそごめん‥‥‥。
         (こういう時、なにか気の利いたことを言えたらいいんだけどな‥‥‥)
         (オレもダメだなぁ‥‥‥)」
    ナツミ「はぁ‥‥‥。」

     ナツミを励ますつもりだったのに、オレまで一緒に落ち込んでしまった‥‥‥。
     いったい何やってるんだろうな? オレは‥‥‥。
     今、こんなこと言って良いのかわかんないけどさ、
     今のナツミはいつものナツミらしくないよ。

  •  ナツミらしくない。
    ナツミ「ラージュ?」
    ラージュ「‥‥‥オレはナツミに会ってまだそんなに経ってないけどさ。
         泣きはしてもへこたれたりしないところが、
         オレの知ってるナツミのいいところだと思ってる。
         オレはそんな強いナツミのほうが好きだよ。」
    ナツミ「あの‥‥‥えっと? そっ、その‥‥‥。
        ラージュは、いつもの私が‥‥‥その、好きなの‥‥‥?」
    ラージュ「ああ、だから元気を出せよな?
         じゃないと、オレも調子が出ないんだよ‥‥‥なぜかさ。」
    ナツミ「‥‥‥‥‥‥。」
    ラージュ「え〜っと、ナツミ? 大丈夫か?
         オレ、また何か落ち込ませるようなことを言ったか?」
    ナツミ「ふふっ‥‥‥あははっ。」
    ラージュ「本当に大丈夫かよ? ナツミ。」
    ナツミ「‥‥‥ううん、なんだかいろいろと吹っ切れちゃった!
        ありがとう、ラージュ。 貴方のおかげで立ち直れそうな気がするわ。」

     やっぱり、ナツミには元気な笑顔が一番似合ってると思う‥‥‥。
     まだ少しだけぎこちないけど、きっとすぐに元気な笑顔を見せてくれるだろう‥‥‥。

みんなのおかげ

ナツミ「私、ふっかーつ!!」
ラージュ「いきなり叫んでどうしたんだよ?」
ナツミ「ほら、ラージュには心配かけたじゃない?
    もう大丈夫だよってアピールしてみたの。」
ラージュ「アピールって‥‥‥無理はしてないよな?」
ナツミ「うん、無理なんてしてないよ? これが本来の私なんだよ。」
ラージュ「本当かよ? ついこの前まで泣いてばかりだったくせに‥‥‥。」
ナツミ「そっ、それは忘れて! 今直ぐ忘れて!」
ラージュ「どうしてそんなに忘れて欲しいんだよ?
     そこまでムキになる必要なんてないだろ?」
ナツミ「だって‥‥‥泣き顔思いっきり見られてたし‥‥‥。」
ラージュ「今さらナツミの泣き顔のひとつやふたつ、見たってどうってことないだろ?」
ナツミ「むぅ〜‥‥‥。
    どうってことあるから言ってるの! それくらいわかってよね!」
ラージュ「わかれって言われてもなあ‥‥‥。
     でも、本当に元気になったみたいで良かったよ。
     これもみんながナツミのことを元気付けようとしてくれたおかげだな。」
ナツミ「みんなっていうか、
    ラージュのおかげって部分が多い気がするんだけどなあ‥‥‥。」
ラージュ「なにか言ったか?」
ナツミ「ううん、なんでもないよ。
    でも実際、みんなのおかげで元気になれたのは本当だよ。
    みんなに心配かけたし、いっぱいお世話になったし、
    その分、みんなに恩返ししないとね!」
ラージュ「あんまり張り切り過ぎるなよ? また、べそかいたりしても知らないからな?」
ナツミ「べそなんてかかないもん! ラージュのバカー!!」
ラージュ「あいたたた‥‥‥。ナツミ、痛いってば‥‥‥。」
ナツミ「ふ〜んだ! ラージュが悪いんだからね!」
ラージュ「オレのどこが悪いんだよ!?」
ナツミ「そういう鈍感なところがよ!
    でも、ラージュのそういうところに救われた気もするんだ。
    私、ラージュのそういうところも好きだよ。ありがとね? ラージュ。」
ラージュ「お、おう‥‥‥。」

 ナツミが元気になってくれてよかった‥‥‥。
 それにしてもナツミの最後の言葉、あれってどう受け止めればいいんだろう‥‥‥。

必ず会いにいく

ナツミ「この世界での冒険ももうすぐ終わり‥‥‥か〜。
    なんだか長いようで短かったなぁ‥‥‥。」
ラージュ「勝っても負けても次で最後だもんな。」

(ナツミ、座る)

ナツミ「‥‥‥ラージュにね、ちゃんと言っておきたいことがあるんだ。」
ラージュ「なっ、なにをだよ?」
ナツミ「今まで私のことを励ましてくれてありがとう。
    私と一緒にいてくれてありがとう。
    私、ラージュと出会ってよかった。」
ラージュ「いきなりなにを言いだすんだよ?」
ナツミ「だって、今言っておかないといけないと思ったの。
    ほら、口にしないと伝わらないことってあるからね〜。
    ラージュと一緒に釣りに行ったのも楽しかったよ。」
ラージュ「ふたりとも、にゃん魚ばかり釣ってたけどな。」
ナツミ「ふたりで『繭世界』に落ちて来たものを、拾いに行ったりもしたしね。」
ラージュ「落ちて来たものをナツミが、意外と知っていてくれて助かったよ。」
ナツミ「しかたないよ。ラージュはこの世界のことしか知らないんだしね。」
ラージュ「まあ、そうなんだよな‥‥‥。」
ナツミ「口喧嘩もいっぱいした気もするけど‥‥‥まあ、それは良いよね?」
ラージュ「喧嘩した後、冷静になって原因を知ったら、
     だいたい口喧嘩する必要なかったりしたんだよな。」
ナツミ「そうそう、けっきょく同じことを考えてるのに誤解したりしてたんだよね。
    こう振り返ってみると、私たちって似た者同士だね。」
ラージュ「まったくだ。」
ナツミ「笑って泣いて、楽しんで、苦しいことや悲しいこともあったけど、
    振り返ると良い生活だったよ。」
ラージュ「ああ、本当にナツミと一緒にいた時間は楽しかったよ。
     ナツミと別れたくないくらいに‥‥‥な。」
ナツミ「ワガママ‥‥‥言わないで、よ‥‥‥。
    ワガママ、言わないでよ!」
ラージュ「ナツミ‥‥‥。」
ナツミ「ひっ、うっ、ぐすっ‥‥‥。」
ラージュ「ごめん、ナツミ。オレが少し無神経過ぎた。
     オレの胸で良ければいくらでも貸すよ。」
ナツミ「酷いよ、こんなのが運命だなんて‥‥‥。
    勝手に次から次に知らない世界に放り出されて、
    別れたくない大切な人とばかり出合わせるんだもん。」
ラージュ「それでもオレは、ナツミに出会えてよかったと思う。
     ナツミが『繭世界』に来なかったら、オレたちは出会えもしなかったんだぜ?」
ナツミ「‥‥‥うん、そうだね。」
ラージュ「だから、オレはナツミの運命にちょっとだけ感謝もしてるんだ。」
ナツミ「どうして? どうしてラージュはそんなこと言えるの?」
ラージュ「だってさ、オレたちはまだ永遠に会えなくなるって、
     決まったわけじゃないだろ?」
ナツミ「‥‥‥え? それって‥‥‥どういうこと?」
ラージュ「まだ可能性は残ってるってことだ。
     ナツミは界の狭間をこえて、別の世界から来たんだろ?
     だったら、オレが別の世界に行くこともできるんじゃないか?」
ナツミ「それじゃ‥‥‥また、会えるの?
    またラージュに会えるの?」
ラージュ「ああ、また会える。
     いや、会いに行くさ。」
ナツミ「本当に会いに来てくれるの?」
ラージュ「界の狭間をこえて、今度は自分から会いに行くよ。
     ナツミに二度もできたことなんだ。
     オレだって一回ぐらいは成功してみせるさ。」
ナツミ「ふふっ、根拠もなにもないのに、自信だけはあるんだね。
    でも、ラージュならなんとかしちゃいそう。
    だって、いつも根拠はないけど、
    困難も突っ走ってなんとかしてきた貴方だから‥‥‥。
    だから、その奇跡が起きるって思えるの。」
ラージュ「ぜったいに会いに行く。だから安心して待っててくれよな、ナツミ!」
ナツミ「うん、奇跡が起きるのを楽しみに待ってる。
    だから、必ず会いに来てね‥‥‥ラージュ。」

 約束する。絶対にまたナツミに会いに行くと‥‥‥。
 その約束を守るためにも、この戦いに全力を尽くそう‥‥‥。

最終決戦

(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。 たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
     魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
ナツミ「そうよ! 貴方なんかには消させない! 絶対守ってやるんだから!」

(最終戦後)
ナツミ「うっ、ぐすっ‥‥‥泣かないって思ってたのに、やっぱダメだね。
    私、あなたのことは忘れないから。
    魂に刻んで、絶対に‥‥‥忘れたりしないから!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」

ラージュ「ありがとう‥‥‥。」

エンディング「勇者さま成長中」

【ナツミの部屋】

ナツミ「大変よ、カシス!」
カシス「な、何!? どうしたの?」
ナツミ「またバノッサの奴が暴れてるの!
    私達への嫌がらせのつもりなのよ‥‥‥。まったくっ!」
カシス「また!? あいつらも懲りないわね‥‥‥。」
ナツミ「何度でも叩きのめしてやるわ! 覚悟してなさいよ‥‥‥。」
カシス「‥‥‥ふふっ。」
ナツミ「もう、笑いごとじゃないんだってば!
    ‥‥‥あーっ! それともカシス、もしかして私が負けると思ってる!?」
カシス「ううん、そうじゃなくて。ナツミ、泣かなくなったなぁ‥‥‥って。」
ナツミ「え‥‥‥そう?」
カシス「うん。だいぶたくましくなったと思うよ。
    前は、いつも泣いて帰って来てたじゃない。
    戦いなんて出来るわけないって、って言ってさ。
    でも‥‥‥今はもう全然怖がってない。ちゃんと戦おうってしてる。」
ナツミ「そう‥‥‥かな。
    でも、ここで引いちゃダメだって思ったの。
    いつまでも泣いてたって、先に進めないしね! 女の子だってタフじゃなくちゃ。
    ラージュもそう思うよね?」
カシス「‥‥‥ナツミ?」
ナツミ「ん?」
カシス「ラージュって‥‥‥誰?」
ナツミ「やだなぁ、ラージュはいつもそこに‥‥‥。
    ‥‥‥‥‥‥あれ? ラージュって‥‥‥誰だっけ‥‥‥。」

ナツミ「(ラージュ‥‥‥‥‥‥ふと口にしたその名前に、私は懐かしさを覚えた)
    (でも、一体誰なんだろう‥‥‥思い出せないほど古い記憶?)
    (ううん、そうじゃない‥‥‥もっともっと最近の記憶)
    (この日常には欠かせなかったはずの‥‥‥)」

 ぜったいに会いに行く。だから安心して待っててくれよな、ナツミ!


ナツミ「ラージュ!!
    ああ‥‥‥私、どうして忘れちゃってたんだろう!
    ラージュ‥‥‥私たちがこの日常を取り戻すために
    一緒に戦ってくれた、大切な人‥‥‥。
    忘れちゃったのは、私がリィンバウムへ戻ってきたせい?
    一時でも貴方を忘れてしまうなんて! 本当にごめんなさい‥‥‥ラージュ!
    でも私‥‥‥っ!
    助けてもらうばかりで、ラージュたちに何もしてあげられなかった!
    貴方たちは本当に消えてしまったの!?
    そうだとしたら‥‥‥私は‥‥‥私はっ!」

カシス「‥‥‥ツミ! ナツミ!」
ナツミ「えっ‥‥‥。」
カシス「急に泣き始めてどうしちゃったの!?」
ナツミ「あ‥‥‥涙‥‥‥?」
カシス「もう、びっくりしちゃうじゃない。そんなにさっきのことが悔しかった?」
ナツミ「う‥‥‥ううん、そうじゃないんだけど‥‥‥。特に意味はないから。
    ごめんね、驚かせちゃって。」
カシス「意味もなく涙が出るなんて‥‥‥変なの。」
ナツミ「それよりも、もう出掛けなきゃいけない時間じゃなかったっけ?」
カシス「あっ! そうだった! ごめん、ちょっと待ってて。すぐ準備するから!」
ナツミ「‥‥‥やっぱり、カシスは覚えてないんだ。
    だとしたら、後悔するのは私だけでいい。
    みんなで悲しんだって、ラージュたちが戻ってくるとは限らないんだから‥‥‥。
    だけど‥‥‥‥‥‥。」
カシス「お待たせ! じゃあ、行こっか。」
ナツミ「うん。」

 だけど、私だけはけして忘れない!
 魂に刻まれた想いは、けして消えない‥‥‥。その言葉を信じて、私は想い続けるよ。
 そうすれば、ラージュ‥‥‥貴方たちの存在はなかったことにはならないはずだから。
 自分たちが消えることも覚悟のうえで私たちを救ってくれた、別の世界の仲間たち。
 貴方たちがいてくれたから、私はこうやってまた愛すべき日常を手に入れることができた。
 ありがとう、みんな‥‥‥!
 私、みんなに‥‥‥ラージュに出会えて、本当に良かった‥‥‥!


ラージュ「オレも同じだよ。ナツミに出会えて良かった。ありがとう‥‥‥!」

ナツミ「え‥‥‥!?
    今、ラージュの声が‥‥‥。」

 確かにさっき、はっきりとラージュの声が聞こえた。
 あれは幻聴なんかじゃなく、きっと‥‥‥!
 彼らがその後どうなったかは、分からない。でも、私は信じてる。
 今もどこかで笑いながら私たちのことを見守っていてくれてるんだって‥‥‥。
 だからいつかまた、きっと会えるよね。
 その時、また泣いちゃわないように‥‥‥私、今よりももっと強くなります。
 見ていてね、ラージュ‥‥‥!

 END


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Last-modified: 2018-08-16 (木) 12:08:00 (307d)