ギアン「こんなところにいたのか。」
ラージュ「ギアン!? どうしたんだよ。」
ギアン「話があるんだが、少しいいかな。」
ラージュ「あ、ああ、それは構わないけど‥‥。
(何の話だろ?)」
(ギアン、座る)
ギアン「‥‥‥これだけは言っておく。
助けてくれたことには礼を言うが、僕は、ニンゲンと馴れ合うつもりはない。
もちろん、お前も含めてな。」
ラージュ「あはは、そっか‥‥‥。
まぁ、オレが『人』かどうかはちょっと怪しいけどさ。」
ギアン「む‥‥‥‥‥‥そうか。」
ラージュ「ギアンは人が嫌いなのか?」
ギアン「当たり前だ!
ニンゲンは僕やエニシアを虐げ、騙し、利用しようとする。
あいつらを信じる理由がどこにある。」
ラージュ「そう、なんだ‥‥‥ちょっと寂しいな。」
ギアン「‥‥‥フン、寂しかろうが関係ない。僕は僕の思うように行動するまでだ。」
ラージュ「(ギアンがこんなにも拒絶するってことは、オレには想像もできないような人生を送ってきたんだろうな。)
(簡単に人を信用してくれなんて、言えないな‥‥‥)」
ギアン「話はそれだけだ、邪魔をしたな‥‥‥。」
ラージュ「あ、うん‥‥‥。
でも、さ。ギアン‥‥‥。」
ギアン「まだ何か用か?」
ラージュ「ここにいるみんなは、本当にいい奴らばっかりなんだ。ギアンも、きっと気に入ると思う。
困ってることがあればみんな全力で助けてくれるし、もちろんオレだって力になる!
だから‥‥‥‥‥‥。」
ギアン「だから、何だ?
何度も言うようだが、僕はニンゲンと馴れ合うつもりは毛頭ない。
それは今までも、これからも、だ。」
ラージュ「うん‥‥‥分かったよ。
だけど、これだけは覚えていてほしい。
みんなは、ギアンが今までに出会ってきたような酷い人とは違う。
誰も騙したり、利用しようとしたりなんてしない。それはオレが保証するよ!」
ギアン「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「それだけは、信じてくれよな‥‥‥。」
ギアン「‥‥‥はじめに言っただろう。助けてくれたことには礼を言う、とな。」
ラージュ「‥‥‥っ、ギアン!」
ギアン「もう夜も遅い‥‥今日は休ませて貰う。」
ラージュ「ああ、おやすみ。」
ギアン「‥‥‥フン。」
ギアン「ぐ‥‥‥くそっ、僕としたことが‥‥‥!」
ラージュ「(なんか調子悪そうだな、ギアン‥‥‥)」
ギアン「考えるな‥‥‥考えると余計腹が‥‥‥うっ!」
ラージュ「ギアン、大丈夫か?」
ギアン「っ!
なんだ、お前か‥‥‥。」
ラージュ「さっきから調子悪そうだけど、どうしたんだ?」
ギアン「べ、別に何も! お前に心配されるようなことは何もないっ!」
ラージュ「そうか? でも腹を押さえて苦しんでるじゃないか。」
ギアン「これは‥‥‥っ! ニ、ニンゲンと話しすぎて気分がすぐれないだけだ。」
ラージュ話しすぎてって‥‥‥あんまりそんな風には見えなかったけどなぁ。
だってギアン、ライやリシェルたちと仲いいじゃん。」
ギアン「なにっ!? お前の目は節穴か!? あれのどこが‥‥‥!」
ラージュ「え、仲良くないの?」
ギアン「よくない! 向こうが勝手に話しかけてくるだけだ。
いくら別世界の僕を知っているからとはいえ、こちらは面識がないというのに、馴れ馴れしい‥‥‥。
もうお腹いっぱいだと言っても、「まだ食えるだろ!」とパンを山盛り持ってくるんだぞ!?」
ラージュ「そういえば‥‥‥。」
ギアン「「ガンガン食べなさいよ!」なんて言って、シチューの鍋をドンと目の前に置かれるし!
もう無理だと言うとふたり揃って「そんなんでエニシアを守れると思っているのか」だと!
なぜこの僕があいつらにあそこまで責められないといけないんだ‥‥‥っ。」
ラージュ「それで、さっきから気分悪そうにしてたんだ。」
ギアン「まったくだ! ただでさえ食べ過ぎで気分が悪いところに‥‥‥。
お前が、あいつらと僕の仲がいいとか言うから余計に気分が悪くなったぞ!」
ラージュ「そ、それは悪かったよ‥‥‥。
(そういうギアンも、ちゃんと出されたものは全部平らげちゃうから)
(内心は嬉しいんじゃないのかと思っちゃうよな)」
ギアン「悪いと思っているなら、次からあいつらがすすめてくる大量の料理、食べるのをお前も手伝え!」
ラージュ「えっ、ホントに!? やった〜!」
ギアン「‥‥‥本当に苦しいんだからな。覚悟しておけよ‥‥‥!」
ラージュ「なぁ、ギアン。」
ギアン「‥‥‥何だ?」
ラージュ「オレは理解できないんだ‥‥‥お前のその人に対する態度がさ。
どうしてそんなにも人を嫌うんだ?」
ギアン「それを聞いてどうする?」
ラージュ「分からない‥‥‥。でもオレ、ギアンのこともっとよく知りたいんだ!
だって、仲間だって思ってるから。そのためにはわだかまりをなくしておきたいんだよ。」
ギアン「はぁ‥‥‥これだから、何も知らずに生きてきた奴は。聞いて後悔しても知らないぞ。」
ラージュ「ああっ、オレは仲間のことだったら何だって受け止める。
仲間ってそういうものだと思ってるからさ‥‥‥!」
ギアン「‥‥‥いいだろう。そこまで言うなら話してやろう。」
(ギアン、座る)
ギアン「僕の父親は、召喚獣だ。」
ラージュ「!」
ギアン「実験動物である父が母親に狼藉を働いて‥‥‥そして生まれたのがこの僕というわけさ。」
ラージュ「え‥‥‥それって‥‥‥。」
ギアン「フッ‥‥‥僕は望まれずに生まれた子供というワケだな。
ニンゲンである祖父は、僕のことを閉じ込めたよ。一族の恥だとでも思ったのだろうな。
そこで受けた躾は‥‥‥地獄のようだったよ。」
ラージュ「そんな‥‥‥!」
ギアン「やがて僕は『響界種』としての能力に目覚めた。
その力を使い、なんとか自力で脱出し今に至る、というわけさ。
僕は誰の力も借りず、自分ひとりの力でここまでやってきた。それはこれからも変わらない。」
ラージュ「(ギアンの過去には、そんなことがあったんだ‥‥‥)」
ギアン「」
ラージュ「」
ギアン「」
ラージュ「」
ギアン「」
ラージュ「」
ギアン「」
ラージュ「」
ギアン「」
ラージュ「」
ギアン「」
ラージュ「」
(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
ギアン「」
(最終戦後)
ギアン「」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」
ラージュ「ありがとう‥‥‥。」
【】
ギアン「」