ラージュ「誰かと思ったら、カイルじゃないか。」
カイル「ラージュか、勝手に上がらせてもらったぜ。
すこしここで、夜風に当たってたんだ。
ここの風は気持ちいいな! 船の上を思い出す‥‥‥。」
ラージュ「船の上? そっか、カイルは海賊なんだよな?」
カイル「おう、カイル一家は大海原を駆ける海賊一家だ。」
ラージュ「海賊一家かあ‥‥‥!
カイル一家の船長はもちろんカイルなんだよな?」
カイル「ああっ、もちろんだ。」
ラージュ「海賊船ってさ、どんな役割の乗組員がいるんだ?」
カイル「そうだなあ、当然その船によって違うんだが、
航海士にコック、水夫は必要だな。
それから大きい船になると、船医や船大工を乗せているのもあるぜ。」
ラージュ「いろいろあるんだな‥‥‥!
なあ、オレが海賊になるとしたら、どんな役割が向いてるかな?」
カイル「えっ、ラージュが海賊にか?」
ラージュ「たとえばの話だよ。」
カイル「その前にさ‥‥‥、お前、船に乗ったことはあんのかよ?」
ラージュ「船に乗ったこと‥‥‥、それはまだない。」
カイル「なんだ、それなら役割うんぬんの前に、
海賊に向いてるかどうかもわかんねえじゃねーか。」
ラージュ「う‥‥‥、まあそうだな‥‥‥。」
カイル「でもまあ‥‥‥、お前、けっこう豪快な性格してるし、
俺のカンだと意外にいけるかもしれねーな。」
ラージュ「おおっ、ほんとか!?」
カイル「ただ‥‥‥、ラージュが海賊船に乗れたとしても、
仕事が向いてる向いてねえは関係なく、
まずは雑用係からだな!」
ラージュ「ええ〜‥‥‥雑用係かあ‥‥‥。」
ラージュ「なあカイル、海賊にはきびしい掟があるって聞いたんだけど、本当か?」
カイル「『海賊の掟』か‥‥‥! ああ、有名な話だな。」
ラージュ「じゃあ本当なんだな。 その掟ってどんなものなんだ?」
カイル「『海賊の掟』って言っても、
すべての海賊に共通する掟があるわけじゃねえんだ。
それぞれの海賊団で乗組員を統制するために、
作られたルールを『掟』って呼ぶんだよ。
船の上ってのは、狭い社会だからさ、
問題を起こすやつが出てくるとみんなが困るだろ?
それできびしいルールを作って、乗組員たちを律しているわけだな。」
ラージュ「へえ‥‥‥! そういうことだったのか。
きちんとしたルールがあるなんて、
海賊ってけっこう、しっかりした組織なんだな?」
カイル「そりゃあそうだろ。 大勢の屈強なやつらが集団で生活するんだ。
とはいえ、海賊を縛るのは自分たちで決めた掟のみだ。
軍隊なんかより、よっぽど誇り高いぜ!!」
ラージュ「そうか‥‥‥! 海賊ってやっぱりかっこいいなあ!」
カイル「へっ、そうだろ?」
(カイル、座る)
ラージュ「なあ、オレもカイル一家の一員になれるかな?」
カイル「そうだな、ウチに入るなら、ラージュも当然、掟を守らないといけねえな。」
ラージュ「カイル一家の掟って、どんな内容なんだ?」
カイル「掟はいくつかあるんだが‥‥‥。よしラージュ、当ててみろよ!」
ラージュ「ん? オレが当てるのか?」
カイル「1つでも当てられたら、
カイル一家の加入の一次試験は合格にしてやるよ‥‥‥!」
ラージュ「えっ、そんな試験があるのか?」
カイル「いや‥‥‥今、考えた。」
ラージュ「なんだよそれ‥‥‥。」
カイル「でも、クイズ1問だけだぜ? 簡単な試験じゃねーか。」
ラージュ「わかった、考えてみるよ‥‥‥。 そうだなあ‥‥‥。
あっ、もしかして、料理を美味しくつくること?」
カイル「あのな‥‥‥。なんでそうなるんだ?」
ラージュ「だってさ、海賊の弁当ってすげー旨いんだろ?」
カイル「‥‥‥ああ、海賊弁当のことか。
あれは旨いけどさ、全員が料理が上手い必要ねえだろ。」
ラージュ「違ったか‥‥‥。 うーん、それじゃあさ、体を鍛えること?
強くないと、海賊として務まらないだろ?」
カイル「腕っぷしを鍛えることは間違っちゃいないが、
残念ながら満点の解答じゃねえな‥‥‥。」
ラージュ「えっ‥‥‥!? 満点じゃなくても間違ってないってことは、近いのか?
なあカイル、もうちょっとだけヒントをくれよ。」
カイル「なに甘いこと言ってんだ! そんなんじゃ海賊は務まんねーぞ?
残念だが、一次試験は落第だ。
まだまだラージュを、カイル一家に迎えるわけにはいかねえみてえだな。」
ラージュ「ええ‥‥‥そんなぁ‥‥‥。」
カイル「よう、ラージュ! 今日の戦いも大変だったな。」
ラージュ「カイル‥‥‥! ほんとだな、オレもくたびれたよ。」
カイル「この世界じゃ、陸も海の上みたいに危険が多いからな。
なかなか気が抜けねえな‥‥‥。」
ラージュ「そっか‥‥‥。やっぱり海の上って、危険が多いもんなのか?」
カイル「そうだな‥‥‥海賊稼業をやってると、危険な海をわたることも多いんだよ。
海も海図や航路がしっかり定まったところばかり、じゃねえからさ。
そういう海を冒険するには、どうしたって危険がつきものだ。」
ラージュ「そっか、大変なんだな‥‥‥。
でも、海の上の危険って、具体的にはどういうことがあるんだ?」
カイル「そうだな、一番の危険は‥‥‥。ラージュはなんだと思う?」
ラージュ「えっ、また試験なのか?」
カイル「はははっ! カイル一家に入りたければ、今度こそ満点の解答をしてみろ!」
ラージュ「じゃ、挑戦させてもらうぜ!」
ラージュ「そうだな、オレの答えは‥‥‥。」
カイル「おっ、ラージュ! 今夜も屋根の上か。
こんなところにいると、先生に怒られるんじゃねえのか?」
ラージュ「そういうカイルだって、ここにいるじゃないか。」
カイル「俺は、ラージュがここに来る気がしたから
アティのかわりに注意しに来たんだよ。」
ラージュ「あははは。その言い訳はずるいなあ。」
カイル「ま、俺たちがここにいることは、先生には内緒だ。」
ラージュ「ははは。そうしてくれると助かるよ‥‥‥。」
(カイル、座る)
ラージュ「けどさ、カイルはアティと仲がいいよな?」
カイル「そりゃ、元の世界でも仲間だったからな。」
ラージュ「もう1人の魔剣の使い手のレックスは、別の世界から来たんだろ?」
カイル「ああそうだ。レックスとアティは、別時間軸の同じ人物にあたるみたいだな。
つまりアティが男だったらレックスだったわけだ‥‥‥。
俺の世界でもそういう可能性があったってことだよな‥‥‥。」
ラージュ「そっか‥‥‥
アティが男だったら、カイルとの関係は何か変わってたのかな?」
カイル「そうだなあ‥‥‥。やっぱ男同士って部分で、今とは違うんじゃねえかな?
距離が近い分、影響し合うことも多そうだし、
俺ももっと、あいつに影響されてたかもしれねえな?
もしかしたら、海賊稼業から足を洗ってたってこともあるかもしれねえ。」
ラージュ「海賊じゃないカイルだって?」
ラージュ「スカーレルってさ、あんまり会話、してくれないよな?
人付き合いが苦手なんだろうけど‥‥‥、でもちょっと変わってるよな?」
カイル「そのことか‥‥‥。 うーん、そうなんだよなあ‥‥‥。
あれには俺も、ほとほと参るわ‥‥‥。」
ラージュ「あれ? そこまで深刻な話のつもりじゃなかったんだけど‥‥‥。
カイル、スカーレルと何かあるのか?」
カイル「ラージュ、よく聞いてくれた‥‥‥!」
(カイル、座る)
カイル「スカーレルは、元の世界ではカイル一家の仲間なんだよ。」
ラージュ「えっ、それにしてはカイルやソノラとちっとも親しそうに見えないぞ?」
カイル「スカーレルのやつ、俺たちのこと知らねえみたいなんだ。
どうも、俺たちと出会う前の時間からこの世界に呼ばれてきてるみたいで。」
ラージュ「それなら知らなくて当然だよな‥‥‥。」
カイル「ああ、スカーレルが俺たちを知らないとわかって、
ソノラもさすがにショックを受けてたな。
しかもあいつ、俺たちのしってるスカーレルより、
ずっと暗い顔しててさ‥‥‥。
状況が違うのはわかるんだが‥‥‥、
仲間だと思ってる相手が暗い顔してて何もしてやれないのは、
俺だってはがゆいんだよ。」
ラージュ「それは、カイルやソノラもつらいな‥‥‥。」
カイル「ああ。それなのにあいつ、俺たちとの交流を拒否してるところがあってな。
そうなると、こっちも打つ手がねえわけよ。」
ラージュ「そうか、カイルたちの気持ち、オレ、ぜんぜんわかってなかったよ‥。
でもさ、きっと大丈夫だ‥‥‥!」
カイル「どうしてそんなことが言えるんだよ?」
ラージュ「カイルたちとスカーレルは前に一度出会って、仲間になってるんだろ?」
カイル「そうだな。すこし後の時間のスカーレルとは、だがな。」
ラージュ「だったらさ、今のスカーレルともきっと仲間になれるよ。
元の世界でだって、なるべくして仲間になったんだから、
カイルたちとスカーレルの運命は、つながってると思うんだ‥‥‥!」
カイル「ラージュ‥‥‥。」
ラージュ「カイル‥‥‥? オレの言ってること、なんかおかしいか?」
カイル「そうじゃねえんだ‥‥‥、そうじゃねえんだよ‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥?」
カイル「いや、まったくお前の言う通りだ!
ラージュよお、いいこと言ってくれるじゃねえか!
俺は感動した!!」
ラージュ「痛いって! そんなに叩くなよ!」
カイル「おおっ、すまねえ。」
ラージュ「あはは‥‥‥。」
カイル「俺、スカーレルを勧誘してくるわ! カイル一家に入らねえかって。
カイル一家の魅力、あいつならきっとわかってくれるよな?」
ラージュ「そっか、そうだな。 きっとうまくいくよ‥‥‥!」
カイル「じゃあなラージュ! ありがとよ!!」
ラージュ「おう!」
ラージュ「やっぱり海賊は、仲間同士の絆が強いんだな‥‥‥。
そういうの、すごくいいな‥‥‥。」
ラージュ「おおっ! 今日はやけに風が強いなぁ。 でも気持ちいい‥‥‥!
おっ、やっぱ、カイルも居たのか。」
カイル「当たり前だろ、こんな風が気持ちいい日に寝てちゃあ、もったいねえよ。
おお‥‥‥! この風はなかなかしびれるな! 海に吹く風みてえだ。
なんだか、潮風の匂いを思い出すぜ。」
ラージュ「おっと! 危ない、足が滑った‥‥‥。」
カイル「ははは!
これくらいの風にあおられるようじゃ、海賊家業はやってけねえぞ?」
ラージュ「ちょっとフラついただけだよ。」
(カイル、座る)
ラージュ「でも、今度の戦いに勝ったら、
カイルもようやく元の世界に帰れるな‥‥‥!
カイルは早く自分の海に帰りたいと思ってる?」
カイル「そうだな‥‥‥。 けど‥‥‥。」
ラージュ「ん‥‥‥?」
カイル「今となっちゃ、この世界を去るのは名残惜しいし、
ラージュやアムとも別れがたい。
こんな気持ちになるなんてな、思いもよらなかったぜ‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥カイル‥‥‥。
そうだな‥‥‥。 オレだってみんなとは別れがたいよ。
でもそれを言っちゃあいけないよな‥‥‥。
みんなには帰る場所があるんだし‥。
オレたちは、それを叶えるためにずっとがんばってきたんだから!」
カイル「なあ、ラージュ‥‥‥。
今回の件が片付いたら、お前もカイル一家の一員になる気はないか?
お前にその気があるなら、
カイル一家のモットーは『来るもの拒まず』だぞ!?」
ラージュ「カイル‥‥‥そのこと本気で考えてくれてたのか。」
カイル「ラージュこそ、本気で海賊になる気はあるのか?」
ラージュ「はははっ‥‥‥そうだな‥‥‥。
カイルたちと一緒に大海原を旅できたら、
ぜったい楽しいだろうなって思うよ。
仲間たちと一緒に苦難を乗り越えるよろこび、
オレ、今回のことで知ってしまったからさ。」
カイル「じゃあ来いよ、俺んとこに。
乗り越えないといけない苦難なら、いくらでもあるぜ?」
ラージュ「はははっ! その誘い文句はないと思うけど‥‥‥。
でも、行くよオレ! ここの世界の未来を見届けたら、カイルたちの海に。
ただ、そこへ行く道がわからないよな。何しろ、別の世界だもんな?」
カイル「なに言ってるんだ!そんなのぜんぜん問題じゃねえ!
新しい航路を見つけるのも、海賊のロマンだ。
俺もお前を探すし、お前も俺の船を探せよ。
俺たちがめざせば、世界の隔たりだって超えられるはずだ。」
ラージュ「そうだな‥‥‥カイルの言うとおりだ!」
カイル「なあラージュ、覚えてるか? いつか話した『海賊の掟』のこと。」
ラージュ「ああ、守らなければならない掟ってやつだよな。
結局、カイル一家の掟ってなんだったんだ?」
カイル「『惚れた相手は守り抜け。何があっても手放すな』」
ラージュ「おお‥‥‥、なんだかカッコイイな!
カイルはもちろん、その掟を守ってるんだよな!?」
カイル「ん、ん!!?」
ラージュ「‥‥‥‥‥‥。」
カイル「ま、まあなんだ‥‥‥!
いつかお互いそういう相手ができたら掟に従い守り抜けってことだ!」
ラージュ「ははは! 分かったよ カイル一家の掟は絶対だからな!」
カイル「それじゃあ、まずは目の前の敵を叩きつぶすか!」
ラージュ「ああっ。 最後の敵を倒してからの話だもんな。
けど、最終決戦か‥‥‥、泣いても笑っても最後なんだな。」
カイル「ああ、だったら笑って別れようぜ。次に会う未来のために。
明日も、頼りにしてるぜ相棒!」
ラージュ「ああ、背中は任せたからな!」
(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
カイル「そうこなくっちゃな! 俺たちにケンカ売ったこと、後悔させてやろうぜ!」
(最終戦後)
カイル「おうおう、もっと元気出していこうぜ!
生きてりゃまた会えるかもしれねぇじゃねえか。
お前のことは忘れねぇよ。 魂に刻んで、絶対に忘れたりしねぇ!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」
ラージュ「ありがとう‥‥‥。」
【港】
カイル「おーい、そっちの修理はどうだ? 順調か?」
アティ「ええ、傷はそれほど大きくありませんから、
私たちだけでもなんとか直せました。」
ソノラ「見て見て、すっごくキレイに直せたでしょ!」
カイル「おお、こりゃ見事だな。傷跡がまったくわからねえじゃねえか!」
アティ「穴をふさいで、表面をならしただけですよ。
良く見れば小さな傷はわかっちゃうんですけどね。」
カイル「いやいや、至近距離で見ても全然わからねえよ。
やっぱ船は美しくないとな! サンキュ、アティ、ソノラ。」
ソノラ「ふっふーん、どんなもんだいっ!」
アティ「次はそちらを手伝いましょうか?」
カイル「いいや、もう終わった!」
アティ「ええっ、もう!? かなり大きな傷跡だったと思うんですけど‥‥‥。」
カイル「俺を誰だと思ってんだぁ? このカイル一家の船長様だぜ!
あのくらいの修理、俺が本気を出せばどうってことはねえ!」
アティ「それはすごいですね。じゃあ出来栄えを見せてください。」
カイル「え‥‥‥今からか?」
アティ「はいっ!」
カイル「(ヤベぇ‥‥‥
大口叩いたけど、アティほどキレイいに出来てねぇんだよな〜‥‥‥)」
ソノラ「あ〜、もしかしてまだ修理できてないんじゃ‥‥‥?」
アティ「まだ終わってないなら、お手伝いしましょうか。」
カイル「いや、いいって。マジでもう終わってるし。」
ソノラ「ホントかなぁ〜?」
カイル「(ぐ‥‥‥コイツ、まだ疑ってやがる!)」
スカーレル「お疲れ様、みんな。 ちょっと休憩にしない?」
カイル「お! そりゃいいな。
(助かったぜ、スカーレル!)」
ソノラ「最後に全部修理終わったか、確認しなくても大丈夫?」
アティ「それもそうですね。漏れがあってはいけませんし。
休憩する前に、見回っておきましょうか。」
カイル「(くそっ、真面目な奴らめ‥‥‥!)」
スカーレル「あら、まだ仕事するの?
せっかくオウキーニが焼いたケーキがあるのに。」
ソノラ「えっ、オウキーニのケーキ!?」
アティ「そ、それは‥‥‥! ‥‥‥せっかくですし、休憩にしましょうか。」
カイル「おお? なんだ、
さっきまで修理だなんだって言ってたくせに、ケーキに釣られちまったのか?」
アティ「それとこれとは‥‥‥! 効率を良くするためには
今、休憩を取っておく必要があると思っただけです。」
ソノラ「そうよ! 休憩、大事だもんっ!」
カイル「そっか。じゃあ茶だけにしとくか。それでも一応休憩だもんな。」
アティ・ソノラ「なっ‥‥‥!」
アティ「‥‥‥酷いです、カイルさん。」
ソノラ「あたしたち頑張ってるんだもん。
ケーキのご褒美くらいくれたっていいでしょ〜っ。」
スカーレル「カイル、その辺にしといてあげなさいよ。」
カイル「ったく、冗談だよ。
そんじゃ、ひと息入れるとすっか‥‥‥来いよ、ラージュ!」
アティ・ソノラ「え‥‥‥?」
カイル「なに、ふたりともポカンとしてんだ?」
アティ「いえ、今、ラージュさん‥‥‥という方の名前をおっしゃったので、
どなたのことかと。」
カイル「え、俺、そんなこと言ったか?」
ソノラ「言ったよ〜! 確かにラージュ、って。」
カイル「(確かに俺、言ったな‥‥‥ラージュって)
(でも一体、誰なんだ‥‥‥?)」
カイル「!!
あーっ! ったく、俺って奴は‥‥‥!
俺はつくづくバカだ。あんなに気のいい奴のことを忘れちまうなんてよ!
俺たちがリィンバウムへ帰ってきて、世界が元に戻って、
だから俺の頭からあいつが消えちまうだと!?
ちくしょう‥‥‥忘れるもんか、って思ってたのに。 結局、このザマだ。
情けねぇよな‥‥‥ラージュ、笑ってくれよ。
テメェで決めたことも守れねぇ、無様な海賊を。
お前、今どこで何してるんだ?
まさか‥‥‥あのまま世界ごと消えちまったなんて言わねぇよな?
‥‥‥俺、お前に助けられてばかりだったんだぞ。
恩を返してもいねぇうちに消えるとか‥‥‥っ。
ふざけんじゃねぇぜ‥‥‥!
‥‥‥っ!
何もしてやれなくて、ごめんな‥‥‥っ!」
アティ「どうしたんですか‥‥‥カイル?」
カイル「え、何がだ? 俺の顔に何か付いてるのか?」
アティ「えっと‥‥‥その、涙が‥‥‥。」
カイル「どわぁっ! 何だコレ!?」
ソノラ「アニキ、大丈夫?」
カイル「な、なんでもねぇよ! いいから心配そうな顔すんな!」
アティ「でも‥‥‥。」
カイル「ほれほれ、早く行かねぇとオウキーニのケーキ、
他の奴らに食い尽くされちまうぞ!」
ソノラ「きゃーっ! それはダメぇ!」
カイル「おう、早く行った行った!」
アティ「‥‥‥カイルさんもちゃんと来てくださいね。」
カイル「分かってるって。」
カイル「はぁ‥‥‥平和だな。」
ラージュ「オレも同じだよ。カイルに出会えて良かった。ありがとう‥‥‥!」
カイル「え‥‥‥!?
‥‥‥‥‥‥っはは。
なんだよお前‥‥‥やっぱりいるんじゃねぇか。
この広い世界のどっかによォ!」
ソノラ「アティ、イチゴ食べないんだったらちょーだいっ!」
アティ「ああっ、それは最後まで残しておいた、私の‥‥‥!」
カイル「‥‥‥ぷっ! 聞いたかよ、ラージュ。」