情報提供(敬称略):M.S.


僕には僕のやりかたがある

ラージュ「イスラ‥‥‥! こんなところにいたのか。」
イスラ「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「おーいイスラ、何してるんだ?」
イスラ「別に、何も‥‥‥。 君には関係ないだろ?」
ラージュ「みんなは、下で晩飯を食ってるぞ? イスラも一緒に行かないか?」
イスラ「‥‥‥僕は、いいよ‥‥‥。」
ラージュ「どうしてだよ? 今日の晩飯は釣りたての魚を使った焼き魚!!
     ぜったい旨いぜ?」
イスラ「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「あっ、イスラは魚が嫌いだったりするのか?」
イスラ「別に‥‥‥。」
ラージュ「『別に』って‥‥‥じゃあ嫌いじゃないんだな?」
イスラ「いい、行かない‥‥‥。」
ラージュ「なんで?」
イスラ「めんどくさい。」
ラージュ「飯を食うのが?」
イスラ「違う。 お前やみんなと一緒にいるのが、だよ。」
ラージュ「でもさ、こんなところに1人でいてもつまんないだろ?
     イスラは腹は減らないのか?
     生きてるんだもんな、腹が減らないことはないよな?」
イスラ「う‥‥‥。」
ラージュ「ははっ。 さすがにそこは否定できないだろ?」
イスラ「だからなんだよ‥‥‥?」
ラージュ「だからさ、一緒に行こうぜ。」
イスラ「あのな‥‥‥君もしつこいね。」
ラージュ「どうせなら、もう一押ししてみようかと思ったんだよ。
     イスラもちょっとは心揺らいだ?」
イスラ「‥‥‥‥‥‥。 君も変わった人だね、僕なんかにかまうなんて。」
ラージュ「そうかな?
     イスラがいつも1人でいるから、気になってるんだよ。」
イスラ「1人でいちゃいけない?」
ラージュ「いけなくはないけどさ‥‥‥。
     せっかく一緒に生活してるのに、さみしいじゃないか。」
イスラ「おあいにくさま。 僕は1人のほうが落ち着くんだよ。
    だから、なるべくみんなとの接触を避けて1人でいるようにしてるんだ。
    僕には僕のやりかたがあるんだから、尊重してよね?」
ラージュ「まあ、イスラの気持ちもわかるよ。
     オレだってたまには1人になりたい時もあるし‥‥‥。」
イスラ「へえ、君でもあるんだ? どんな時?」
ラージュ「えーと、それは‥‥‥。
     あれ‥‥‥、最近はそういうこと、なかったな。」
イスラ「ふうん‥‥‥。 わかったようなこと言ってみただけか。
    君も口だけなんだな‥‥‥。」
ラージュ「むっ‥‥。
     オレはただ、イスラももうすこしだけ積極的に
     みんなと話してもいいんじゃないかと思うんだよ。
     話せばわかりあえることもあるだろうし、けっこう楽しいと思うぞ?」
イスラ「あのさ! そういうのほんっと、余計なお世話だから‥‥‥!」
ラージュ「でもさ‥‥‥。」
イスラ「いいから僕のことは、放っておいてくれる?」

ラージュ「あっ、イスラ!?
     あ〜‥‥‥行っちゃったか。
     はあ、このままで‥‥いいわけないよな‥‥‥。」

どう接するのかわからない

ラージュ「よう、イスラ!」
イスラ「はあ、また君か‥‥‥。 今日は何の用‥‥?
    晩飯ならあとで1人で食べるから、いくら誘っても無駄だよ?」
ラージュ「だったら、一緒に風呂でも入るか?」
イスラ「はあ?」
ラージュ「じょっ、冗談だよ‥‥‥。」
イスラ「‥‥‥ラージュ、ほんとに何しに来たの?」
ラージュ「イスラと話がしたくて。」
イスラ「僕は特に話すことはないけど?」
ラージュ「じゃあさ、話さなくてもいいから、オレの話を聞いてくれないか?」
イスラ「興味ない。」
ラージュ「気持ちいいくらいの即答だな。」
イスラ「君も相変わらずしつこいよ。 そんなに暇なの? それともさみしいの?」
ラージュ「なあ‥‥‥、どうしてイスラはいつも1人でいるんだ?」
イスラ「それ、前も話したよね? 1人が落ち着くんだって。」
ラージュ「でもイスラ、たまにみんなのことじっと見てるし、
    距離を取りつつも一緒にいるじゃないか。
    本当に1人がよかったら、そうはしないだろ?」
イスラ「‥‥‥‥‥‥。 ほんと君って、お節介なやつだね。
    ‥‥‥人づきあいとか、よくわからないんだよ。
    潜入を生業としていたことが多かったから。」
ラージュ「えっ、でも潜入するには、周りに溶け込まないといけないんじゃないのか?」
イスラ「そういうのは得意だよ。 仮面をかぶって近づくのなら。
    いくらでも楽しそうにふるまえるし、友達のふりだってできる。
    でも、そんなことしても楽しくもなんともない。
    仕事じゃなきゃ、やらない。」
ラージュ「じゃあ、誰かといて楽しいって思ったことは?」
イスラ「そんなの、わからない‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥イスラ‥‥‥。」

ラージュ「あのさ、イスラ‥‥‥。」

君には負けた

ラージュ「イスラ〜! やっぱりここにいた。」
イスラ「ラージュ‥‥‥。 なんで来るんだよ‥‥‥。」
ラージュ「なんでって、イスラと話しに来たんだけど‥‥‥。」
イスラ「それはわかってるよ。 君が僕にかまうヘンなやつだってことは。
    けど、今日はさすがにそれどころじゃないよね?」
ラージュ「どういう意味だ?」
イスラ「みんなが元の世界に戻れるかどうかって大事な時に、
    僕なんかのとこにいていいのかってことだよ。
    君も、一緒にいたい人がいるんじゃない?」
ラージュ「一緒にいたい人‥‥‥。 そうだな、いるよ。」
イスラ「だったらさ、早くそっちに行きなよ。」
ラージュ「だからイスラと一緒にいるんじゃないか。」
イスラ「‥‥‥‥‥‥。
    ‥‥君はまったく、ほんとに‥‥‥!」
ラージュ「なんだよ‥‥‥怒ってるのか?」
イスラ「怒ってるわけないだろ‥‥‥! バカだな、君はほんとに大バカだ‥‥‥!
    これだけ仲間がたくさんいるのに、どうして僕なわけ!?」
ラージュ「やっぱり怒ってるじゃないか。 別に怒ってもいいけどさ。」
イスラ「‥‥‥もういいや、君には負けた。
    認めてあげるよ、僕も君といる時間は割と楽しかった。」
ラージュ「イスラ‥‥‥お前‥‥‥!」
イスラ「‥‥‥そういう気持ち悪い反応するから言いたくなかったんだ‥‥‥。」
ラージュ「わ、悪い。 ‥‥‥でも、ありがとう。」
イスラ「謝ったり感謝したり、ほんとヘンなやつだね‥‥‥!
    これは元の世界に戻っても、忘れられそうにないね‥‥‥。」
ラージュ「イスラ‥‥‥。」
イスラ「なあラージュ、今の僕は純粋な僕じゃない‥‥‥。
    影法師の記憶が入り交じってしまっているから‥‥‥。」
ラージュ「え‥‥‥?」
イスラ「影法師に取り込まれた時、僕は自分の未来を垣間見たんだ‥‥‥。
    僕は愚かなことをしでかして破滅するらしい。 自業自得だけどね‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥っ!」
イスラ「だから僕は、未来に希望が持てないんだ。
    自分には明るい未来はない、それがわかっているから。
    君も、こんな僕にかまうだけ時間の無駄だったね。」
ラージュ「なに言ってるんだよ、イスラ! 今からだって、未来は変えていけるはずだ。
     イスラが自分の悪い未来を見たなら、それはなおさらだ!」
イスラ「僕はもう、この世界の記憶を忘れてしまうかもしれないのに?」
ラージュ「それでもオレが覚えてる。
     だからイスラが道を間違いそうな時は、
     オレが駆けつけて、お前を止めてみせる‥‥‥!」
イスラ「ラージュ‥‥‥。 やっぱり君は、おかしなやつだな。
    でも、そのバカみたいな前向きさは見習ってもいい気がしてきたよ。」
ラージュ「おっ、言ったな!? なら約束しようぜ、指切りだ。」
イスラ「指切りって‥‥‥。 子どもか‥‥‥。」
ラージュ「ははっ、いいじゃないか。 ちなみに、ハサハに習ったんだよ。
     指切りげんまん〜! ほら、イスラも指を出せって!」
イスラ「わかったよ。 やればいいんだろ!」
ラージュ「ははは‥‥‥! 前向きさを見習うって約束、忘れるなよ?」
イスラ「わかった! 約束するって! あ〜‥‥‥ほんと、君ってやつは!」

最終決戦

(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
     たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
     魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
イスラ「フン‥‥‥心配しなくても、最後まで務めは果たすよ。‥‥‥仲間、だからね。」

(最終戦後)
イスラ「じゃあ、僕はこれで‥‥‥。‥‥‥‥‥‥ありがとう‥‥‥。
    君のことは‥‥‥まぁ、忘れないように頑張るよ。
    魂に刻んで、絶対忘れないでやるさ‥‥‥!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」

ラージュ「ありがとう‥‥‥。」

エンディング「裏切り者はもういない」

【海岸】

イスラ「これで無色のやつらは全て追い出せた‥‥‥よね。」
アズリア「ああ、もう大丈夫だ。
     それにまだしばらくは軍もパトロールしているから
     島の住人たちの安全は約束する。」
アティ「ようやくこの島にも平和が戻ったんですね。 良かった‥‥‥!」
アズリア「この功績は、イスラ、お前のものでもあるんだぞ。」
イスラ「フ‥‥‥フン。 そんなもの貰っても別に嬉しくないね。
    僕がやりたいようにやった結果、この島が平和になっただけだし。」
アズリア「ははは‥‥‥お前は本当に素直じゃないな。
     さて、では最後の仕事が残っているわけだが‥‥‥。」
イスラ「‥‥‥何だよ、ふたりして。 僕の顔に何か付いてるのか?」
アティ「いえ。イスラ君、その魔剣を私たちに‥‥‥。」
イスラ「はぁ!? 何で?」
アズリア「その剣は危険だ。 だから今ここで封印する。」
イスラ「ちょっと待ってよ、姉さん! この剣を取り上げられたら僕は‥‥‥っ!」
アティ「お気持ちは分かりますけど、でも‥‥‥その‥‥‥。」
イスラ「もしかして僕が悪の道に堕ちるとでも言いたいワケ!?」
アズリア「いや、そういうわけじゃなくてだな。」
イスラ「いいよ、もう。 僕が信用されてるなんてハナから期待してなかったし。」
アティ「イスラ君‥‥‥。
    そんなことありません! 私はあなたのこと、信じています!」
アズリア「確かにお前の行動は全てが褒められたものじゃないが、
     結果、お前の力もあって島を救えたのは事実だ。
     数々の誘惑もあっただろう。 しかしお前は最後の選択を間違えなかった。
     立派だったぞ、イスラ。 私はお前を誇りに思う!」
イスラ「ふ、ふたりとも急に何を言い出すんだ。
    おだてられてもこの剣は渡さないからな!」
アズリア「剣の強大な力が、お前をまた誘惑する危険があるのにか?」
イスラ「僕はもう弱くない!
    姉さんたちが信じてくれるって言うなら、その期待に応えてみせるよ。
    この魔剣を使いこなして、ね‥‥‥!」
アティ「‥‥‥ふふっ。」
アズリア「‥‥‥ははっ。」
イスラ「え‥‥‥な、何だよ。」
アズリア「そこまで言われては、仕方がないな。」
アティ「ええ、私たちの期待に応えてくださるそうですし。」
イスラ「ぼ、僕はあくまで自分のために‥‥‥!」
アズリア「ああ、そうだ。お前にはその魔剣が必要だな。
     そして私たちにはお前の力が必要だ。
     これからも島や街の平和のために、尽くしてくれるな?」
イスラ「う‥‥‥ぐ‥‥‥。」
アティ「決まりですね!
    まずは島のパトロールのお手伝いからでしょうか。
    ふふっ‥‥‥これから忙しくなりますよ、イスラ君!」
イスラ「な‥‥‥なんかうまく踊らされてないか、僕!?」
アズリア「はははっ! 気のせいだ。」
アティ「うふふ‥‥‥。」
イスラ「む‥‥‥やっぱりふたりとも、僕のこと見透かしてるだろ。カンジ悪いな!
    ラージュもそう思うだろっ?」
アズリア「‥‥‥ん? ラージュとは誰のことだ?」
アティ「ここには私たち3人しかいませんけど‥‥‥。」
イスラ「えっ‥‥‥?
    (僕、今どうしてその名前を口にしてしまったんだろう?)」

だからイスラが道を間違いそうな時は、オレが駆けつけて、お前を止めてみせる‥‥‥!


イスラ「あっ‥‥‥!
    そうだ、ラージュ‥‥‥
    君はこの世界を救ってくれた、僕たちの大切な仲間じゃないか。
    それを僕はどうして今まで忘れてしまっていたんだ‥‥‥。
    指切りまでして、約束しあった仲だったのに。
    はは‥‥‥僕はやっぱり薄情な奴なんだな。
    ‥‥‥ごめん、ラージュ。
    君がリィンバウムを元に戻してくれて、僕たちが帰ってきて‥‥‥
    全てが元通りになった。
    そのことに‥‥‥僕も、みんなも、甘えきってしまってるんだ。
    『繭世界』では君に助けてもらうばかりで、結局君に何も返せなかった。
    ホント、ごめん‥‥‥!」

アズリア「イスラ、どうした? 大丈夫か?」
イスラ「え‥‥‥何?」
アズリア「何って、お前‥‥‥その、涙が‥‥‥。」
アティ「イスラ君、はい、このハンカチ‥‥‥使ってください。」
アズリア「辛いことでも思い出したのか? 私でよければ、何でも聞くぞ。」
イスラ「な‥‥‥‥‥‥っ。
    なんでもないから!!」
アズリア「あっ! ちょっと待つんだ、イスラ!」
アティ「イスラ君!? 一体どこへ‥‥‥っ!」
イスラ「ついて来るな!」


【森】

イスラ「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥っ
    姉さんたちは‥‥‥追ってきてないよな‥‥‥っ。
    僕、知らないうちに泣いてたなんて‥‥‥何の冗談だよ。笑えないっての‥‥‥!
    (ラージュのことを思い出せなかったのが、そんなに悔しかったのか?)
    ‥‥‥いや、違う。 僕は‥‥‥!
    (何もできなかった自分が悔しくて、悲しくて、辛かったんだ‥‥‥)
    くそぉ‥‥‥こんなの、姉さんたちに気付かれたらまた何て言われるか。
    (でも‥‥‥姉さんたち、ラージュのこと覚えてなかったんだよな)
    (だったら、無理に思い出させる必要はないか。
    こんなに苦しい思いをするのは、僕だけで充分だ)」

だったら、僕だけは、ラージュ‥‥‥君のことを覚えているよ。
そうすれば、君はラージュというひとりの人間として存在し続けられるんだろ?
おかしいよな‥‥‥
奇跡なんて信じてなかったのに、君を見ていると信じてみたくなったんだ。
だから、僕は忘れない。君のことも、君と過ごした『繭世界』での日々のことも。
そして君が、仲間を守るために自分を犠牲にするほどイイ奴だってこと、
実はちょっと羨ましかったんだよ。
その真っ直ぐさに、僕は惹かれていたんだね。
君に出会えて、本当に良かった‥‥‥。


ラージュ「オレも同じだよ。 イスラに出会えて良かった。ありがとう‥‥‥!」

イスラ「え‥‥‥!? ラージュ、いるのか!?
    ‥‥‥って、いるわけないか。 僕はバカだな‥‥‥。
    はぁ‥‥‥姉さんたちのところに戻るか。
    ‥‥‥‥‥‥もう少しだけ焦らしてからね。」

ラージュ、僕は君を見習ってもう少し素直に生きてみようと思う。
いきなりは無理だけど、少しずつ‥‥‥
他人に歩み寄ってもいいかなって思えるようになったから。
あっちではちゃんと言えなかった言葉、次に会えた時君に伝えることにするよ。
こんな僕を仲間だといってくれてありがとう、ってね。
そしたら、君はどんな顔をするだろうな‥‥‥。

END

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Last-modified: 2018-08-04 (土) 10:58:00