情報提供(敬称略):M.S.


黒の旅団の悪夢

ラージュ「よう、イオス。風が気持ちいいな。」
イオス「風‥‥‥? ああ、そうだな。」
ラージュ「こんなところでなにしてるんだよ。なにか考え事か?」
イオス「糸に囚われていた時のことを思い出していたんだ。
    救助してくれたこと、君には感謝している。」
ラージュ「ああっ、イオスも大変だったよな。」
イオス「僕自身は絡め取られている間、ずっと悪夢との戦いだった。」
ラージュ「そのことを思い出していたのか?」
イオス「そうだ。‥‥‥黒の旅団時代の記憶だ。
    旧王国の特務部隊で、僕はルヴァイド様の部下として戦っていた。
    ルヴァイド様は総指揮官で、僕は特務隊隊長を任されていたんだ。」
ラージュ「そういえば、マグナたちとは最初、敵対していたんだよな。」
イオス「ああ、そうだ。
    僕は僕の信じる正義、そしてルヴァイド様のために剣を振るってきた。
    なにも考えず、ただ命じられるがままに‥‥‥。」
ラージュ「イオス‥‥‥。」
イオス「だが気づけば、悪魔にいいように使われる駒でしかなかった。」
ラージュ「でも、イオスは間違いに気づけたんだろ?」
イオス「気づいたところで、自分の愚行は取り返しが付かない。僕は村をひとつ壊滅させたことだってあるんだ。
    だが、それでも、そのまま駒として居続けて良いわけがない。
    それに取り返しは付かなくとも、償いはしなければならないのだから‥‥‥。」

 イオスは過去の自分にけじめをつけるために、今も戦っているのかもしれないな‥‥‥。

仕えることが僕のすべて

ラージュ「あれ? イオスもここで休憩か?」
イオス「誰かと思ったら、ラージュか。 休憩‥‥‥、まあそんなところだ。」
ラージュ「イオスはいつもルヴァイドのために頑張ってるからさ、たまには息抜きも大事だよな。」
イオス「そんなことはない。僕は、自分のすべてをルヴァイド様にささげている。
    息抜きなんて、する必要はないんだ。」
ラージュ「そっ、そうなんだ‥‥‥。
     (生真面目というか、融通が利かないというか‥‥‥)
     ルヴァイドといえばさ、二人はどのくらい前からのつきあいなんだ?」
イオス「‥‥‥そうだな。僕が捕虜として捕まり、副官として仕えたのがはじまりで――。」
ラージュ「ええっ、捕虜!? イオスってルヴァイドの捕虜だったの?」
イオス「ああ‥‥‥。僕は元帝国軍人、皇帝直属の親衛隊所属だった。
    旧王国の騎士だったルヴァイド様とは、敵対する関係だった。」
ラージュ「それじゃあ、どうして‥‥‥。」
イオス「僕の所属していた部隊はあの人に壊滅させられたんだ。‥‥一時は憎んでいたこともある。
    だが、今は尊敬している。今の僕の誇りはあの人に仕えることだから。
    できればこの先もお傍でお仕えしたいと思っている。」
ラージュ「そうか‥‥‥。なんだかルヴァイドがうらやましいな。
     こんなに、慕ってくれる人がいるんだからな。」

頑張りすぎじゃ?

イオス「はぁ‥‥‥。」
ラージュ「イオスがため息をつくなんて珍しいな。どうかしたのか?」
イオス「‥‥‥ああ、少し考え事をしていてな。」
ラージュ「オレでよければ、相談にのるよ?」

(イオス、座る)

イオス「ルヴァイド様に言われてしまったんだ。
    俺にばかり構わず、もう少し自分のために時間を使え、と。」
ラージュ「(なるほどなぁ、そういうことか)
     イオスはちょっと頑張り過ぎなんだよ。」
イオス「ああ、頑張っているさ。だがなにか失礼があったのかもしれないな。
    そうでなければ、暇を出されるようなことはないはずだ。」
ラージュ「あーっ‥‥‥。」

ラージュ「イオス‥‥‥。」

  •  忠実すぎるのも考えものだよ。
    ラージュ「忠実すぎるのも考えものだよ。」
    イオス「なんだって!? 忠実であることのどこが問題なんだ。」
    ラージュ「オレからみても、イオスはルヴァイドの傍にいすぎだよ。
         ルヴァイドだって人間なんだから、四六時中一緒にいられたら疲れると思うんだ。」
    イオス「う、うむ‥‥‥。」
    ラージュ「だから少し距離を置くのも、それはそれで思いやりなんじゃないかな。」
    イオス「‥‥‥それは一理あるかもしれないな。」
    ラージュ「(不満そうだけど、理解はしてくれたみたいだな。」

  •  ルヴァイドは心配なんだよ。
    ラージュ「ルヴァイドはむしろ、イオスのことを思ったからそう言ったんだよ。」
    イオス「僕のためだって?」
    ラージュ「オレはみんなと出会って、すごく成長出来たと思うんだ。
         人間は、いろんな相手と交流しながら成長していくからさ。
         だからイオスも、ルヴァイドの傍に張り付いてるだけじゃダメだよ。」
    イオス「し、しかしだな‥‥‥。」
    ラージュ「行方知れずになったイオスのことを、ルヴァイドは本当に心配していたんだぜ。
         疎ましくなったから、そんなことを言ったなんて、そんなはずないだろ?」
    イオス「そうか。僕のために、ルヴァイド様は‥‥‥。」
    ラージュ「(ちゃんと気持ちが伝わったみたいでよかったよ)」

忠臣は二君に仕えず

ラージュ「イオスってさ、ルヴァイドのことをよく支えているよな。」
イオス「突然なにを言い出すかと思えば‥‥‥。そんなことは当然だ。
    僕はルヴァイド様に仕えているのだからな。」
ラージュ「そういう意味じゃなくて、なんていうかな‥‥‥。
     フォルスやクノンみたいに、人を支えるのが好きみたいだよな。」
イオス「違う! まったく違う!! 彼らと一緒くたに語らないでくれ。」
ラージュ「えっ、違うのか?」

(イオス、座る)

イオス「いいか、よく聞け。僕は彼らのように、誰にでもつくすわけではない。
    僕が仕えるのは、ルヴァイド様ただ一人だ!」
ラージュ「う〜んと、つまりカノンがバノッサに従っているような感じか?」
イオス「違う! それも違う!! あんなやつと一緒にするな! 仕える相手が違い過ぎる!」
ラージュ「そ、そうなのかな‥‥‥。」
イオス「そもそもだな、真に忠臣たるものは、主以外のものには仕えない。
    『忠臣は二君に仕えず』というヤツさ。その点彼らは、誰彼構わず世話を焼く。
    つまりその時点で、世話を焼くことが目的と化しているわけだ。」
ラージュ「そんなことはないと思うけど‥‥‥。」
イオス「その点、僕は我を殺してルヴァイド様につくしている。 これが真に忠義というものだ。」
ラージュ「う、うん。言いたいことはわかったよ。」
イオス「いいや、まだまだわかっているように思えないな。 この機会に僕が忠臣とはなにかを教えよう。」
ラージュ「(‥‥‥この話題は、イオスには禁句だな)」

初陣を思い出す

イオス「ラージュ、ここにいたのか‥‥‥。隣に座ってもいいか?」
ラージュ「もちろん。」

(イオス、座る)

イオス「いよいよ決戦だな。体調はどうだ?」
ラージュ「そうだな、悪くないよ。」
イオス「眠れないんじゃないかと思っていたが、思いのほか落ち着いているようだな。」
ラージュ「そうかな?」
イオス「そうだとも。ふつうはもっと緊張するものだと思うぞ。
    ‥‥‥僕も初陣の前夜はまったく眠れなかった。皇帝の近衛として本陣に控えるだけだったのにな。
    ‥‥‥前線に出るわけでもないのに、怖くてたまらなかったんだ‥‥‥。
    もしもの時のことを考えたり‥‥‥。
    皇帝陛下を間近でお守りするという重圧に耐え切れず、嘔吐したこともあった。」
ラージュ「‥‥‥イオスでもそんなことがあったんだな。」
イオス「だから今、君がこうも落ち着いているのには驚きだ。
    まったく、たいしたものだと思うよ。」
ラージュ「‥‥‥オレはそんなすごいヤツじゃないよ。ただ開き直るしかないだけさ。
     どうあがいても答えは出さなくちゃならないしな。だから今できることを精一杯やるだけさ。」
イオス「普通はそれがなかなか出来ないから褒めているんだ。簡単に言ってくれるが、難しいことだぞ。」
ラージュ「そうなのかな?
     じゃあオレがまだ未熟で、状況の深刻さが理解出来ていないだけだったりして。」
イオス「だとすれば、開き直るだなんて言葉は出ないだろう。君はなかなかの大物なのかもしれないな。
    僕も決戦には心身の状態を整えて、全力で臨むつもりだ。」
ラージュ「ありがとう。イオスがそう言ってくれると心強いよ。」

最終決戦

(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。 たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
     魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
イオス「好き放題した挙句に仲間を喰うなんて、そんなの僕は許さないぞ!」

(最終戦後)
イオス「僕たちは戦友という名の絆で結ばれた仲間だ。
    君のことは忘れない。魂に刻んで、絶対に忘れたりはしない‥‥‥!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」

ラージュ「ありがとう‥‥‥。」

エンディング「巡りの大樹の名の下に」

【森】

イオス「‥‥‥ふぅ。大分来ましたが、トレイユまではもう少し時間がかかりそうですね。」
ルヴァイド「あぁ、急がねばなるまい。こうしている間にも、トレイユに危機が迫っている。」
イオス「ええ、そうですね‥‥‥。
    ですが、巡回視察でトレイユを訪れた時にはそんな危機が迫っているとは思いませんでした。
    『黒い雪』に『解魂病』‥‥‥。そして空に浮かぶ城の存在。
    今回の幻獣界の亜人たちが暴動を起こし始めたことと、関係があるんでしょうか?」
ルヴァイド「‥‥‥分からぬ。
      だが、メイメイの話によれば、『剣の軍団』『獣の軍団』『鋼の軍団』と呼ばれる、
      3つの勢力が、トレイユを鎮圧しようとしていると聞く。」
イオス「『剣の軍団』‥‥‥レンドラーか。」
ルヴァイド「ああ。あの時、なぜあの男が、トレイユにいたのか詮索はしなかったが‥‥‥。
      今回の出来事に、無関係ではなさそうだな。」
イオス「あの戦いで、アイツを捕らえておくべきでしたね。そうすれば、こんな騒ぎにはッ‥‥‥。」
ルヴァイド「俺たちには俺たちの、やるべき事があった。それを優先したまでだ。」
イオス「ルヴァイド様‥‥‥。」
ルヴァイド「それに、あの男の目的は我ら『巡りの大樹』自由騎士団ではなかった。
      一体、何を企んでいたのかは分からぬが‥‥‥狙いは、あの子供たちだろう。」
イオス「‥‥‥忘れじの面影亭。あの宿屋に関わっていた者たちのことですね。」
ルヴァイド「ああ‥‥‥。」
イオス「紅き手袋を倒し、アルバを救ってくれた。‥‥‥あの子供たちは、何者なんでしょうか?」
ルヴァイド「分からぬ。だが、子供であっても戦士は戦士だ。貴様も、敵に立ち向かう勇敢な姿を見ただろう。」
イオス「はい。ああいう人材が我が『巡りの大樹』自由騎士団にも欲しいですね。」
ルヴァイド「そうだな。‥‥‥彼らは濁りのない良い目をしていた。」
イオス「それなら、ラージュはどうですか? あれでなかなか見込みはあると思いますよ。」
ルヴァイド「ラージュ? 知らぬ名だな。」
イオス「えっ‥‥‥そんなはずないですよ。だって、ラージュは――あれ?
    ラージュって、誰の名前だ?」
ルヴァイド「‥‥‥? イオス、どうした?」
イオス「す、すみません、ルヴァイド様。
    どうして、ラージュなんて名前が出てきたのか自分でも分からなくて‥‥‥。
    ただ、とても懐かしいような気が‥‥‥。」

イオス「(‥‥‥そう、初めて聞く名前のはずなのになぜだかとても懐かしい)
    (だが、それと同時に胸を締め付けるようなこの苦しさはなんだ?)
    (僕は、どうしてラージュという名を口にしたのだろうか‥‥‥)
    (それは僕にとって、とても意味のあることのような気がする)
    (なにか、大切なことを忘れているような‥‥‥)」

イオス「―――ッ!
    ‥‥‥ああ、そうか。
    今、すべてを思い出したよ。ラージュは、君だったね。
    何故、今まで思い出せなかったんだろう。彼のことも、あの世界のことも‥‥‥。
    僕が、この世界に戻ってきたことですべてがリセットされてしまったのか?
    まるで初めから、何もなかったかのように‥‥‥。」

 どうあがいても答えは出さなくちゃならないしな。だから今できることを精一杯やるだけさ。

イオス「あの世界は、彼らと共に消えてしまったのだろうか。そんなことが、本当に起こりうるのか‥‥‥。
    もし、もう二度と彼らと会えないのだとしたら、僕は、僕には‥‥後悔しか残らない。
    彼らを守れなかった自分を、きっと僕は、一生悔いることになるだろう。」

イオス「‥‥‥‥‥‥。」
ルヴァイド「どうした、イオス。突然、立ち止まったりして‥‥‥。」
イオス「‥‥‥あの、ルヴァイド様は本当に、ラージュという名に心当たりはありませんか?」
ルヴァイド「ああ。知らぬ名だ。」
イオス「そうですか‥‥‥。」
ルヴァイド「特別な名前なのか?」
イオス「‥‥‥はい。思い出したんです。それは、大切な友人の名だったと。
    (ルヴァイド様は、あの世界での出来事を覚えていないようだな)
    (何故、僕だけが思い出せたのかは分からないが、もし、そこに何か意味があるのだとすれば‥‥‥)」

 僕は、この記憶を守り続けよう。
 僕が想い続ける限り、彼らの存在は消えたりしないはずだから。
 この胸の想いが、再び巡り会う絆になるはずだから。
 今、ここで、この剣にかけて誓う。僕が僕である限り、君たちのことを決して忘れはしない。
 消滅を覚悟で、僕らを救ってくれた、異界の友人‥‥‥。
 ――ラージュ。僕は信じているよ。いつかまた、君の笑顔に会える時が来ると。
 その時まで、僕は僕の道を歩き続ける。
 この世界に降りかかるすべての災難を、この剣を持って振り払う。
 人々の平和のために。‥‥‥それが、自由騎士なんだ。

ラージュ「ああ! オレも信じてるよ。イオスの想いは、きっと世界を守れる。
     光に包まれた世界で‥‥‥いつかまた、会おうな!」

イオス「‥‥‥!」
ルヴァイド「どうした?」
イオス「今、声が聞こえたんです‥‥‥。」
ルヴァイド「声?」
イオス「‥‥‥はい。彼が、僕を信じていると言ってくれました。」
ルヴァイド「‥‥‥‥‥‥。
      では、その友人を裏切らぬためにも、我々は戦わなくてはならぬな。
      この世界の平和のために、己が信じるもののために。」
イオス「‥‥‥はいッ!」
ルヴァイド「先を急ぐぞ、イオス。トレイユに残してきた、アルバのことも気がかりだ。」
イオス「ええ、そうですね。急ぎましょう!」

 ――我が剣は、自由の剣。
 この世界のため、人々のため。‥‥‥そして、大切な友のために振るおう。
 『巡りの大樹』の名の下に、きっと僕たちは再び巡り会うだろう。
 だから、その時まで‥‥‥待っていてくれ。遠くて近い、世界のどこかで。

 END


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Last-modified: 2018-08-16 (木) 18:43:00 (340d)