アルカ「あ、ここにいたのね。 探しちゃったよ。」
ラージュ「アルカ!? こんなところまで探しにきたのかよ?」
アルカ「そう。 ちゃんと一回、話しておきたいことがあったから。」
(アルカ、座る)
アルカ「ここ、静かだしちょうどよかった。」
ラージュ「‥‥‥話?」
アルカ「ラージュ、あらためて、エルストさんを止めてくれてありがとう。
あと、これからしばらくの間よろしくね。」
ラージュ「そんな、改まってお礼を言われるほどじゃないよ。こっちこそ、よろしく。」
アルカ「でも、なんでいきなり現れた私たちのこと、信用してくれたの?」
ラージュ「(どうしてだったんだろう‥‥‥?)」
アルカ「あれ? ラージュもここで休憩?」
ラージュ「やあ、アルカ。
その手に持っているの、ひょっとしてコーヒー?」
アルカ「そう、ちょっと眠れなくて。」
ラージュ「でもコーヒー飲んでたら、ますます寝られないんじゃない?」
アルカ「そうかも‥‥‥。 でもなんとなくコーヒーを淹れちゃった。
やっぱりフォルスがもう一人の私、なのかなぁ。
はじめはちょっと身構えちゃったけど。」
ラージュ「やっぱり、用心はしていたんだね。」
アルカ「うん。 でもこうして共感する部分はいっぱいあるし。
ただ私は彼より少し未来から来ているみたいだから。
あんまりうかつなことは話せないんだけどね。」
ラージュ「今はフォルスのこと、どんな風に思う?」
アルカ「どんな風‥‥‥なのかな。」
ラージュ「たとえばね‥‥‥。」
ラージュ「やあアルカ、なにか考え事?」
アルカ「ちょっとね。
カゲロウ以外にも、自分たちの響友<クロス>があんなにいたなんてね。」
ラージュ「スピネルなんか、アルカ姉さまって、すごい勢いだよね。」
アルカ「あはは‥‥‥。 確かにそうだよね。
でも彼女の知っている私は、彼女を響友に選んでいたんだよね。」
ラージュ「そうだね。知ってるはずの人に、知らないって言われたらショックだよな。」
アルカ「スピネルのことだけじゃない。
もしかしたらペリエだった可能性もあるわけだし。
今まで様々なものを選び取ってきたんだなぁって。」
ラージュ「もしかして、カゲロウ以外がよかったとか考えてる?」
アルカ「そんなワケないでしょ! もう、冗談はやめてよね。」
ラージュ「ごめん。
でもカゲロウ以外と響友になっていた可能性も、あったってことだよね。」
アルカ「そうね。
私たちはいろいろな選択をしてきて、そうして今があるってこと。
ラージュたちのこの世界でも、選び取る未来がある。
ひとつひとつ、すべて選択してきた結果だから。
だから悔いのないようにしないとね。」
ラージュ「オレもそうなのかな?
ここに来たみんなと出会って選択してきたけれど、
それで少しは成長しているのかな?」
アルカ「当然そうだよ。
私は昔のラージュを知らないけど、会った時にはもう仲間となじんでいたよ。」
ラージュ「オレ、ちゃんとみんなと行動出来てたんだ‥‥‥。」
アルカ「うん、ずっとひとりぼっちだったなんて嘘みたい。 だから大丈夫。
ラージュは素敵に成長している。」
ラージュ「‥‥‥う、うん。」
アルカ「ラージュ、またここにいたんだね。」
(アルカ、座る)
ラージュ「うん‥‥‥。 アルカ、ちょっと相談してもいい?」
アルカ「ええ、もちろん。 やっぱり色々と不安?」
ラージュ「不安‥‥‥。 うん、不安なんだ。
アルカが前に言ってたよね? 今は自分たちが選択してきた結果だって。」
アルカ「もし『響友<クロス>』がカゲロウじゃなかったらって、
可能性の話をしたわね。」
ラージュ「オレ、そのあといろいろ考えたんだ。
もし、みんなと出会わなかったら? 出会っても仲間にならなかったら?
それに、今倒そうとしている敵のことも。
みんなと一緒じゃなかったら戦うのは無理だった。」
アルカ「ラージュ‥‥‥。」
ラージュ「でも戦って、勝ったとしてどうなるのか? そのときなにを選択するのか?
すごく不安で、考えていると落ち着かない。」
アルカ「まってラージュ!
私はそのとき、選び取る先に未来があるとも言ったよ。
そこで終わりじゃない。 そこから先もまだまだ続く。」
ラージュ「そうなのかな‥‥‥。」
アルカ「もちろんだよ。
遠く離れても私たちは貴方を信じてるし、貴方はひとりじゃない。
もっと周りを頼ればいいんだよ。」
ラージュ「頼ってもいいのかな‥‥‥。 迷惑じゃなければいいけど。」
アルカ「そんなこと絶対にない。 私は貴方が頼ってくれるのがうれしい。
不安なときに、私を相談相手に選んでくれてうれしい。」
ラージュ「アルカ‥‥‥、ありがとう。」
アルカ「ラージュ、貴方は弟みたいなものだから。
だから離ればなれになるまでは、側にいてあげるから安心して。」
ラージュ「弟、かぁ‥‥‥。 うれしいけど、なんだか寂しい気もするな。」
アルカ「ふふっ、一人前だって認めて欲しかったら頑張るしかないよ。」
ラージュ「だけど、それでも‥‥‥。 やっぱり不安はあるよ‥‥‥。」
アルカ「もう、男の子でしょ、しゃきっとする!
それとも‥‥‥私の応援じゃ頼り無い?」
ラージュ「いっいや、そんなことないよ!
アルカに応援してもらえて、嬉しいと思ってる。」
アルカ「じゃあ、頑張る! 不安なんて、吹き飛ばしていこう?」
ラージュ「うん‥‥‥そうだよな‥‥‥!」
アルカ「そうだよ。私もそうやってきたんだし。
そうすれば今はわからないことも、わかるようになる。
それが、大人になっていくことなんだよ。」
ラージュ「うん、そうなんだね。」
大人になる、か‥‥‥。
そのときは、このもやもやした気持ちも、もっとうまくアルカに伝えられるのかな‥‥‥?
(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
アルカ「大切な仲間を、世界を、あなたの餌になんてさせない。
私の剣のサビにしてあげるわ。」
(最終戦後)
アルカ「私はここで、果たせなかった望みを果たせた‥‥‥。
あなたのおかげよ、本当にありがとう。
私、みんなのことは忘れない。
魂に刻んで、絶対に忘れたりなんかしないわ!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」
ラージュ「ありがとう‥‥‥。」
【森】
カゲロウ「‥‥‥うっひゃ〜! あっちにもこっちにも、冥土獣がうようよしてるな!」
アルカ「冥土獣が、新たに出現したって話は、本当だったみたいね。」
エルスト「ああ、冥土に汚染される前に、奴らを倒さないとな。」
カゲロウ「でも、あれだけの数を相手に、おいらたちだけで大丈夫かよ?」
アルカ「『警察騎士団<シルヴァリエ>』にも連絡はいってるはずだよ。
アベルトとイェンファも、すぐに来てくれるとは思うんだけど。
‥‥‥エルストさん、どうします?」
エルスト「彼らを待ってる時間はなさそうだ。
被害が大きくなる前に、俺たちで対処するしかない。」
カゲロウ「よっしゃ! いっちょ、やってやるか〜!!」
アルカ「カゲロウ、いきなり突っ込んだりしないでよ?
新たな冥土獣ってことしか、情報が無いんだから慎重にいかないと!」
カゲロウ「わかってるよ、姉貴! 心配、いらないって!!」
アルカ「も〜、そういうところが心配なのに。」
エルスト「ははっ! 君たち2人を見てると、本当の姉弟みたいで和むなぁ。」
アルカ「エルストさんも、和んでる場合じゃないですよっ!
2人とも、緊張感を持ちなさいっ!」
カゲロウ「へいへい!」
エルスト「ふふっ、了解。」
アルカ「出来るだけ、あいつらを市街地から引き離しましょう。
まずは私が囮になって、あいつらを引き寄せるから。」
カゲロウ「分かった! 姉貴も無茶するなよ。」
アルカ「エルストさんと、カゲロウもね!
それに、ラージュも気をつけて―――って、あれ?」
カゲロウ「ん? ラージュ? そんなヤツいたか?」
アルカ「えぇっと‥‥‥いない、わよね?
それに、ラージュって‥‥‥誰の名前だっけ?」
カゲロウ「おいおい、姉貴!! これから突入って時に、なに寝ぼけてんだよ!」
アルカ「う、うん‥‥‥。でも、つい口から出ちゃったの。
ラージュも気をつけてねって‥‥‥。」
アルカ「(なんだろう、この感じ‥‥‥。私、その人と一緒に戦っていたような気がする)
(互いの背中を預けられるぐらい、信用した誰かと)
(ラージュ‥‥‥)
(この響き、覚えてる)
(私は、私は‥‥‥『彼』のことを、絶対に忘れないって誓った!)」
アルカ「――!!!
思い出した‥‥‥。
思い出したよ、ラージュ!
彼のことも、あの世界のことも。そこで起きたすべての出来事も、全部!
どうして、忘れていたんだろう。
彼は私にとって、とても大切な人だったのに。
リィンバウムに戻ってきた時に、あの世界に関することすべて、
削除されてしまったのかもしれない。
そうだとしても、私は自分で自分が許せない。
彼を、彼と過ごした時間を、忘れてしまうなんて。」
弟、かぁ‥‥‥。 うれしいけど、なんだか寂しい気もするな。
アルカ「遠ざかっていくあなたの笑顔を、私は見ていることしか出来なかった。
こんな気持ちのまま、さよならなんてイヤだよ。
あなたも、そうでしょう? ラージュ‥‥‥。
本当に、もう二度と会えないの?
‥‥‥そんなの、イヤだよ。」
カゲロウ「あ、姉貴! どうしたんだよっ!?」
アルカ「‥‥‥えっ? あっ!
(いつの間にか、涙が‥‥‥)」
カゲロウ「どこか痛いのか!? 具合でも悪いのか!?」
アルカ「違う、違うっ! 大丈夫、なんでもないから。」
カゲロウ「だけどよぉ‥‥‥。」
アルカ「ちょっと思い出してたの。大切な友達のこと。」
カゲロウ「大切な、友達?」
アルカ「うん‥‥‥。
(きっと、カゲロウもエルストさんも、あの世界のことは覚えていない)
(どうして、私だけが思い出せたのかは分からないけど‥‥‥)」
――私は、信じてる。
いつだって、想いの強さが運命を変えてきたんだもの。
私が想い続ける限り、彼らとの絆が消えることはない。
信じていればきっと、あの優しい笑顔に会える。
だって、この世界はずっとずっと昔から‥‥‥。
友達という名の「絆」で結ばれているのだから。
ねぇ、ラージュ。私、あなたに伝えてないことがたくさんあるの。
だから、さよならは言わない。いつかきっとまた、会えると信じているから。
ラージュ「ああ、オレも信じてる! だから、その時まで‥‥‥またな、アルカ!」
アルカ「‥‥‥ラージュ!?」
カゲロウ「えっ!? な、なんだ???」
アルカ「(‥‥‥いない。今、確かに声が聞こえたのに)」
カゲロウ「姉貴、マジで大丈夫なのか?」
アルカ「ああ、うん! 平気、平気! あはははっ‥‥‥。」
カゲロウ「メチャクチャ、あやしいんだけどなぁ。」
アルカ「(私の声、ラージュの所まで届いたのかな?)」
エルスト「アルカちゃん。」
アルカ「エルストさん‥‥‥。」
エルスト「大丈夫さ。きっと、ね。」
アルカ「‥‥‥!!
(エルストさん、もしかして‥‥‥)
‥‥‥はい、きっとそうですよね!」
カゲロウ「???」
見上げた空は、どこまでも青く澄み渡っていた。
この空のずっとずっと先には、あなたがいるような気がして‥‥‥。
空に伸ばした手を、キュッと強く握りしめる。
‥‥‥私の、特別で大切な友達。
あなたにもらった想い、もう決して忘れたりしない。
2人の絆が、ずっとずっと続いていくように――‥‥‥。
END