情報提供(敬称略):M.S.


ポヨポヨ、プニプニ

アティ「ラージュくん、そんなところで何してるの?」
ラージュ「パッチが屋根の端っこのほうまで行っちゃってさ。
     おーい、パッチ! 戻ってこいよ。」
アティ「パッチ、危ないよ? こっちにおいでー。」
パッチ「ミャグ〜!」
ラージュ「おっ、戻ってきた。 アティに呼んでもらったからかな?」
アティ「ふふっ、だったら嬉しいですね。
    パッチ〜、私のところにもおいで?」

(アティ、座る)

パッチ「ミャグ?」
アティ「あっ、来てくれた! 嬉しいな。
    うわあ、ふわふわ!おなかもポヨポヨで、プニプニしてます‥‥‥あっ!」
パッチ「ミャグ!?ミャグ〜!!
    ミャグゥ!!」
アティ「ああ、行っちゃった。」
ラージュ「よしよしパッチ、戻ってこーい。 大丈夫だぞ。」
パッチ「ミャググ‥‥‥。」
アティ「ごめんなさい。
    なにか気に障ること、しちゃったみたいですね‥‥‥。」
ラージュ「あはは、ちょっとね。
     触られるのがあんまり好きじゃないところもあるんだよ。」
アティ「そうなんですね‥‥‥。
    ねえ、ラージュくんは、パッチの言うことがわかるんですよね?」
ラージュ「うん、なんとなくね‥‥‥。」

ラージュ「ええっと‥‥‥。」

島の教え子

アティ「ラージュくん!? また屋根の上に登ってるんですか?」
ラージュ「あっ、アティ。 アティもこいよ、一緒に星を見ようぜ。」
アティ「そんなところで? わざわざ高いところに登らなくても‥‥‥。」
ラージュ「そう言わずに来てみなよ。 今日はいい風も吹いてて気持ちいいぜ?」
アティ「もう‥‥‥。」

アティ「確かにここ、静かで涼しくって、過ごしやすいですね。」
ラージュ「だろ!」
アティ「だからってたびたび屋根に登るなんて、
    ラージュくんもなかなかやんちゃよね‥‥‥。
    なんだか子どもみたい‥‥‥。」
ラージュ「ははっ、そうかな?」
アティ「ええ、元の世界で教えていた生徒たちを思い出します。
    ほんと、あの子たちはやんちゃでしたね。」
ラージュ「へぇ‥‥‥。それって、どのくらいの年の子たちなんだ?」
アティ「そうねえ‥‥‥年の頃は、リューム君たちと同じくらいかしら?」
ラージュ「あははは‥‥‥! オレ、そんなチビたちと一緒にされてるのか。」
アティ「だって、高いところに登りたがるのは子どもくらいですよ?」
ラージュ「そういうもんなのか‥‥‥?」
アティ「もしかして、気を悪くした?」
ラージュ「そんなことはないよ。それより、その子たちに興味がわいたかな。
     アティの生徒たち、いったいどんな子どもたちだったんだ?」
アティ「その頃はね、青空学校で、島の子どもたちを教えていたんです。」
ラージュ「島の子どもたちか、楽しそうだな!」
アティ「ええ。みんな元気いっぱいで‥‥‥。
    懐かしいなあ。パナシェくん、スバルくんも元気かな?
    あ、パナシェくんは亜人の子なんです。
    ここで言うと、レシィくんに雰囲気が似てるかな。
    あの子は真面目で素直ないい子でした‥‥‥。」
ラージュ「そっか、島にも亜人の子がいたのか。 スバルっていうのは?」
アティ「スバルくんは鬼の子なんですけど、
    リュームくんみたいに元気いっぱいでしたよ。
    島の子どもたちの中では、スバルくんがガキ大将的な存在でしたね。
    よく、パナシェくんや他の子たちと一緒にあちこちでイタズラしてたな。」
ラージュ「ははは‥‥‥! それは、面倒見るアティ先生もなかなか大変そうだな?」
アティ「ふふふ、まあね‥‥‥!
    でも島の大人たちに見守られて、授業も楽しくやっていけました。
    ほんと、あの子たち、今頃どうしてるかなあ‥‥‥。」
ラージュ「アティ‥‥‥、今、先生の顔になってる。」
アティ「えっ、そうですか? でもそれってどんな顔ですか?」
ラージュ「鬼教師の顔かな? 『こらっ、屋根の上に登っちゃいけませんっ!』って。」
アティ「えっ‥‥‥??」
ラージュ「っていうのは冗談で、すごく優しそうな顔だよ。
     子どもたちのこと、本当に好きなんだなってわかる。」
アティ「ふふっ、そうですね、大好きですよ。 私の可愛い教え子たちだもの。」
ラージュ「そっか、オレも会ってみたいなあ。
     アティの大好きな、島の子どもたちに。」

夜回り先生

ラージュ「はあ‥‥‥、やっぱりここは気持ちいいな‥‥‥。」
アティ「ねえ、屋根の上に誰かいるんですか!?
    ラージュくん? それともアムさん?」
ラージュ「(やべえ‥‥‥アティか‥‥‥。 隠れよう!)」
アティ「‥‥‥? 誰もいないの? でもさっき人影が‥‥‥。
    あっ、ラージュくんみぃつけた!!」

ラージュ「はぁ‥‥‥。まさか、わざわざ登ってくるなんて‥‥‥。」
アティ「もうラージュくんったら、何でこそこそ隠れるんですか〜。」
ラージュ「ははは‥‥‥。アティに怒られると思ったから。」
アティ「ふふ。お説教されるようなことをしてるっていう自覚はあるんですね?」
ラージュ「う‥‥‥。」
アティ「ラージュくん、夜1人で出歩くのは危ないし、
    屋根の上なんてなおさらですよ。」
ラージュ「でも、そういうアティだってこうやって出歩いているじゃないか。」
アティ「私は教師だからいいんですっ!」
ラージュ「おーっ、きっぱり言い切ったな‥‥‥。
     でも先生って、勉強を教えるのが仕事だろ?
     夜中まで説教しに来なくても‥‥‥。」
アティ「そんなことありませんよ?
    道を間違えそうな子がいたら導いてあげることだって、大事な仕事の1つです。
    教えることだけじゃなく、
    生徒の健やかな成長を手助けすることが教師の役目ですから。」
ラージュ「そうだったのか‥‥‥! オレ、教師って仕事をわかってなかったよ。
     先生をするってことがそんなに大変なものだったなんてな‥‥‥。」
アティ「そんなことないわ。大変というよりは、やりがいがあって楽しいですよ?
    たくさんの生徒たちに出会えるし、
    生徒たちの成長を側で見守れるんだから‥‥‥!」
ラージュ「じゃあアティは、楽しみながら教師をやってるのか。」
アティ「ええ、軍を退役してこの仕事を始めてよかったと思ってます。
    教師の仕事になら、私、全力で打ち込めますから。」
ラージュ「全力で打ち込めるもの、か‥‥‥。 そういうの、考えたことなかったな。
     でもアティの話を聞いてたら、いいなって思うよ。
     打ち込めるものを持ってるって、なんかうらやましい。」
アティ「ラージュくんだっていつか、心から打ち込めるものを見つけられますよ。」
ラージュ「そうかなあ?」
アティ「ええ、きっと‥‥‥!
    そうだ、もしよかったら私も一緒に探しましょうか?
    ラージュくんが本当にやりたいって思うものを。」
ラージュ「えっ、そんな大変なこと頼んでもいいのか?」
アティ「もちろん! これも教師のお仕事ですからね。」
ラージュ「ありがとう、アティ‥‥‥!」
アティ「あっ、でも、教師ができるのは手助けだけですよ?
    やることを決めて取り組むのはラージュくん自身です。」
ラージュ「ふふふ。分かってるよ。
     アティ先生のことは頼りにしてるけど、オレだってがんばるよ‥‥‥!」

教えて先生

アティ「ラージュくん、やっぱりここでしたか。」
ラージュ「アティ‥‥‥!? もしかして‥‥お説教とか?」
アティ「もう、ちがいます! ラージュくんの部屋にある昆虫図鑑を借りたくて。」
ラージュ「いいけど、何に使うんだ?」
アティ「コーラル君たちに、虫のことを教えるの。」

(アティ、座る)

ラージュ「へえ。 アティはこっちの世界でも、やっぱ先生なんだな。」
アティ「たまたま聞かれたから、ってだけなんですけどね。
    でも私も、好きでやってる部分は大きいかな。」
ラージュ「そっか‥‥‥、アティは根っからの先生なんだなあ。
     やっぱり、教えることは面白いのか?」
アティ「もちろん面白いですよ。 人に教えることで、自分が勉強になることも多いし。
    それに、がんばってる生徒を応援できるなんて、
    とっても素敵なことだと思います。」
ラージュ「なるほどな。 そんなことを考えてたんだな‥‥‥。
     アティは素敵な先生だよな‥‥‥!
     オレもアティの生徒になってみたくなったよ。」
アティ「ラージュくんが私の生徒に‥‥‥?」
ラージュ「うん‥‥‥ダメかな?」
アティ「ううん、そんなことないです!
    私で教えられることなら喜んで教えちゃいますよ。」
ラージュ「本当に!? うれしいな!」
アティ「ラージュくんは何か、教わりたいことがあるんですか?」

ラージュ「そうだなあ、それなら‥‥‥。」

ベルフラウという名の生徒

アティ「ラージュくん、今日はお勉強がんばりましたね!
    課題にも集中して取り組んでくれて嬉しかったです。」
ラージュ「アティこそ、オレのために時間をさいてくれてありがとう。
     授業、新鮮で楽しかったよ‥‥‥!」
アティ「それは私も同じですよ。 一対一で教えるのは久しぶりだったから、
    私も授業をするのが楽しかったです。」
ラージュ「そっか‥‥‥アティも楽しめたならよかったよ。」
アティ「うん、それに初心に戻れた気がします。
    なんだか、初めて授業をした時を思い出すな‥‥。」
ラージュ「なあ、アティ。 アティの初めての授業ってどんなだったんだ?」
アティ「私の初めての生徒は、家庭教師としての教え子だったんです。
    だからその子に教えた授業が、私にとって初めての授業です。
    初めは戸惑いや不安もあったけど、
    教えることの楽しさを知ることができました‥‥‥。」
ラージュ「アティの一番目の生徒‥‥‥、つまりオレの先輩か。
     いったいどんな子だったんだ?」
アティ「ベルフラウっていう名前の、すごく負けず嫌いで努力家の女の子です。
    自分をしっかり持ってるところは、ラージュくんに似てますね。」
ラージュ「へえ‥‥‥。」
アティ「まっすぐすぎるせいで無茶もするから、
    見ている私としてはヒヤヒヤもしたんですけど、
    なんとか心を開いてくれて、
    今では優秀な召喚師見習いとして頑張っていますよ。」
ラージュ「生徒の人生に影響を及ぼすなんて、先生ってやっぱすごいよな‥‥。」
アティ「こらこらラージュくん、さっきからほめすぎですよ?
    あんまりおだてないでください!
    私だって教師としてはまだまだなんですから!」
ラージュ「あははっ‥‥‥! そんなに照れなくてもいいのに。
     でもさ、本当にアティはいい先生だと思うぜ、
     だからオレもいい生徒にならないとな!」
アティ「もう‥‥。 ふふ、じゃあ、明日も授業がんばりましょうね?」
ラージュ「うん! 楽しみにしてるよ。」

最後の授業

アティ「はいラージュくん。 今日の課題、採点しておきましたよ。」
ラージュ「ありがとう、アティ。 あれ‥‥‥これってもしかして‥‥‥!?」
アティ「ええ、100点満点です! がんばったわね、君は本当に優秀な生徒だわ。」
ラージュ「ははっ。なんか、すごく嬉しいよ‥‥‥!
     アティにそんなふうに言ってもらえるなんて。
     それに満点がとれて、なんだかほっとしたな‥‥‥。」
アティ「え‥‥‥? どうして?」
ラージュ「だって、アティとの授業も今日が最後になるだろ?
     最後くらい、いい生徒だったって言われたいじゃないか。」
アティ「そうね‥‥‥今日が最後だなんてさみしいけど。
    でもラージュくんは間違いなくいい生徒ですよ。
    好奇心旺盛でなんでもどんどん吸収してくれて、本当に教えがいがある。
    私ももっといろいろ教えたかったな‥‥‥。」
ラージュ「オレだって、教えて欲しいことはまだいっぱいあるし、
     いつまでもアティ先生の生徒でいたいよ‥‥‥。
     ‥‥‥けど、そういうわけにもいかないよな。
     元の世界には、アティ先生を待っている子どもたちもいるんだし‥‥‥!」
アティ「ごめんね、ラージュくん‥‥‥。 それと、ありがとう‥‥‥。
    君の教師をすることで、私も原点を見つめ直すことができました。
    ラージュくんにはすごく感謝してます。‥‥‥だから、これはそのお礼です。」
ラージュ「これ‥‥‥!?」
アティ「卒業証書‥‥‥。 私の手作りだけど‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥オレがもらっていいのか?」
アティ「なに言ってるの、当たり前でしょ? ラージュくんの卒業証書なんですから。」
ラージュ「オレ‥‥‥こんなものがもらえるなんて、思ってもみなかったよ‥‥‥。
     なんていうか、感動だな‥‥‥! ありがとう、アティ!
     オレ、これからもアティ先生の生徒として、
     学んだことを活かしてがんばるよ‥‥‥!
     ベルフラウにも負けないようにな。」
アティ「え、ベルフラウ‥‥‥?」
ラージュ「アティ、前に話してくれただろ? 一番目の生徒のベルフラウのこと。」
アティ「言ったけど‥‥‥。
    もしかしてラージュくん、ベルフラウにライバル心を抱いてたんですか?」
ラージュ「ライバル心ってわけじゃないけど‥‥‥、たださ‥‥‥、
     アティ先生みたいになりたいって思ったのは、彼女だけじゃないんだぜ?」
アティ「ラージュくん‥‥‥。
    でも‥‥‥いつか会うことができたら、君たちはきっと仲良くなれると思うわ。
    2人は私の自慢の生徒ですからね‥‥‥!」
ラージュ「へへ‥‥‥。 ベルフラウと会う日が来たら、か‥‥‥。
     そんな日がいつか来るかな?」
アティ「ええ、きっと来ますよ。 私の自慢の生徒だって紹介したいもの。」
ラージュ「‥‥‥だな! オレ、その日が楽しみになってきたよ。
     なあアティ先生‥‥‥、最後にあれ、やってくれないかな?」
アティ「あれって?」
ラージュ「リュームたちに教える時、よくやってるだろ?
     『よくできました』って頭をなでるやつ。」
アティ「えっ!? あれですか?
    ラージュくんも‥‥‥やって欲しかったの?」
ラージュ「オ、オレだってちょっとくらい先生に甘えたいよ‥‥‥。」
アティ「ふふふっ。わかったわ、こっちに来て。」
ラージュ「うん‥‥‥。」
アティ「はい、よくできました‥‥‥!
    ラージュくんは本当にいい生徒ですよ‥‥‥。」
ラージュ「アティ‥‥‥あったかくて、いい匂いがする‥‥‥。
     母親に抱かれるのも、こんな感じなのかな‥‥‥。」
アティ「ラージュくん‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥アティ、もう大丈夫だよ。
     このままだとオレ、泣いちゃいそうだからさ。」
アティ「うん‥‥‥。」
ラージュ「オレ、決めたよ! 先生から学んだことを、ここで誰かに伝えていくって。
     そのためにもオレは、絶対に消えたりなんかしない。
     異識体から解放された後のこの世界に生まれてくる新たな生命たちに、
     先生に習ったことを伝えるために。」
アティ「ラージュくん‥‥‥、それは素敵な夢ですね‥‥‥。
    だったら、最後の戦いでは私が必ず君を守りますね!
    何者にも君を消させはしない。
    夢を叶えるまで、
    ラージュくんは何がなんでも生きていかなきゃいけないものね‥‥‥!」
ラージュ「ああ‥‥‥ありがとう、アティ。 最後まで頼りにしてるよ‥‥‥!」

最終決戦

(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
     たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
     魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
アティ「仲間がいるとこんなにも心強いってこと、
    ひとりぼっちの『異識体』には分からないでしょうね!」

(最終戦後)
アティ「まだ色々話したいこともあったんですけど‥‥‥
    またいつか逢えますよね‥‥‥。
    私、あなたのことは忘れません。 魂に刻んで、絶対に忘れたりしませんから!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」

ラージュ「ありがとう‥‥‥。」

エンディング「学びに終わりなし」

【港】

カイル「おーい、そっちの修理はどうだ? 順調か?」
アティ「ええ、傷はそれほど大きくありませんから、
    私たちだけでもなんとか直せました。」
ソノラ「見て見て、すっごくキレイに直せたでしょ!」
カイル「おお、こりゃ見事だな。傷跡がまったくわからねえじゃねえか!」
アティ「穴をふさいで、表面をならしただけですよ。
    良く見れば小さな傷はわかっちゃうんですけどね。」
カイル「いやいや、至近距離で見ても全然わからねえよ。
    やっぱ船は美しくないとな! サンキュ、アティ、ソノラ。」
ソノラ「ふっふーん、どんなもんだいっ!」
アティ「次はそちらを手伝いましょうか?」
カイル「いいや、もう終わった!」
アティ「ええっ、もう!? かなり大きな傷跡だったと思うんですけど‥‥‥。」
カイル「俺を誰だと思ってんだぁ? このカイル一家の船長様だぜ!
    あのくらいの修理、俺が本気を出せばどうってことはねえ!」
ソノラ「ねぇ、先生〜‥‥‥
    今、アニキが直したところ見てきたけど‥‥‥ボロボロだよぉ?
    板が適当に貼り付けてあるだけで全然キレイになってないしぃ。」
カイル「うっ‥‥‥あ、穴がふさげりゃいいんだよ!」
アティ「ふふっ‥‥‥じゃあ最後の仕上げは私たちもお手伝いしましょうか。」
カイル「うっ、いや、お前らの手を借りるまでもねえよ。」
ソノラ「船は美しい方がいいんじゃなかったっけ〜?」
カイル「それは‥‥‥っ!」
アティ「はいはい、大人しく修理に行きましょうね。」
カイル「わ、分かったよアティ!」
スカーレル「お疲れ様、みんな。 ちょっと休憩にしない?」
カイル「お! そりゃいいな。」
ソノラ「アニキ〜最後の仕上げは?」
アティ「そうですよ。休憩は、修理が全部終わってからです。」
カイル「(くそっ、真面目な奴らめ‥‥‥!)」
スカーレル「あら、まだ仕事するの?
      せっかくオウキーニが焼いたケーキがあるのに。」
ソノラ「えっ、オウキーニのケーキ!?」
アティ「そ、それは‥‥‥! ‥‥‥せっかくですし、休憩にしましょうか。」
カイル「おお? なんだ、
    さっきまで修理だなんだって言ってたくせに、ケーキに釣られちまったのか?」
アティ「それとこれとは‥‥‥! 効率を良くするためには
    今、休憩を取っておく必要があると思っただけです。」
ソノラ「そうよ! 休憩、大事だもんっ!」
カイル「そっか。じゃあ茶だけにしとくか。それでも一応休憩だもんな。」
アティ・ソノラ「なっ‥‥‥!」
アティ「‥‥‥酷いです、カイルさん。」
ソノラ「あたしたち頑張ってるんだもん。
    ケーキのご褒美くらいくれたっていいでしょ〜っ。」
スカーレル「カイル、その辺にしといてあげなさいよ。」
カイル「ったく、冗談だよ。
    よし、オウキーニのケーキ、食いに行くか!」
ソノラ「やった〜!!」
カイル「急に元気になるなよ、現金な奴だな‥‥‥。」
スカーレル「じゃあ先に行って準備してるわね。」
アティ「ふふふっ。オウキーニさんのケーキ、楽しみです。
    さあ、ラージュくんも行きましょう。」
カイル・ソノラ「えっ‥‥‥?」
アティ「あれ? おふたりとも、どうしたんですか?」
カイル「いや、今、ラージュって‥‥‥。 誰のことだ?」
アティ「‥‥‥私、そんな人の名前を‥‥‥。
    (いいえ‥‥‥確かに今、私はその名を呼びました。
    でも、誰だったのか思い出せない‥‥‥)」

オレ、決めたよ! 先生から学んだことを、ここで誰かに伝えていくって。


アティ「ラージュ‥‥‥くんっ!
    私‥‥‥今まで忘れてた!! ラージュくんのこと‥‥‥っ。
    あんなにも忘れないって強く心に決めていたのに、どうして!?
    やはり、私たちがリィンバウムへ戻って来て
    世界が修復されたことにより私たちの記憶も‥‥‥。
    でもそうだとしても、忘れてはいけないことだってあるのに。
    なのに私は‥‥‥っ!
    ごめんなさい‥‥‥今の私は貴方たちに顔向けできません。
    私はあなたにたくさんのことを与えてもらったのに‥‥‥。
    私は貴方たちに何もしてあげられなかった。
    そして大切な仲間の貴方を、忘れてしまった‥‥‥!」

ソノラ「アティ、大丈夫? アニキの言葉に傷付いちゃった?」
アティ「え? あ‥‥‥私‥‥‥。」
カイル「わ、悪かったよ‥‥‥すまん、アティ!」
アティ「や、ち、違うんです!
    カイルさんは悪くないっていうか、私が悪いっていうか‥‥‥!
    あの、その、とにかく何でもないので!」
ソノラ「ホント‥‥‥大丈夫?」
アティ「ええっ! ほら、もうこの通り。」
カイル「ケーキ、一番デカいのあげるから機嫌直せよ?」
アティ「やだなぁ、ホント気を使わないでください。
    (失敗‥‥‥私ってば、まだまだ未熟ね)
    (でも、みんなにはまだ黙っておきましょう‥‥‥)
    (なにより、こんな思いをするのは、私だけにしておかないと‥‥‥)」
スカーレル「早く来ないとアタシがひとりで全部食べちゃうわよ〜!」
ソノラ「わーっ! 待って待って〜!」
カイル「早く行こうぜ、アティ!」
アティ「は、はいっ!」

ラージュくん、『繭世界』のみなさん‥‥‥私、もう忘れません。
他のみんなが忘れてしまっても、私だけは‥‥‥後悔も全て受け入れて、覚えていますね。
だって、そうすることで貴方たちがまた存在し続けてくれるなら‥‥‥。
どんなに寂しくても、無力感に苛まれようとも、私は前を向いて生きてゆけるんです。
貴方たちは、もっと恐ろしい、自分の消滅という問題に立ち向かっていったんですから。
その勇気を、私はもう一生忘れることはないでしょう。
ありがとう、みんな。 ありがとう、ラージュくん。
貴方に出会えて、本当に良かった‥‥‥。


ラージュ「オレも同じだよ。アティに出会えて良かった。ありがとう‥‥‥!」

アティ「え‥‥‥!?
    今、ラージュくんの声が‥‥‥。」
ソノラ「アティ、早く来ないとホントになくなっちゃうよ〜!」
アティ「はーい、今行きます!
    ‥‥‥ふふっ。 そうか、そうですよね。」

ラージュくんたちはきっと生きてます!
私には想像もできない奇跡の力で、きっと‥‥‥。
そして、いつもみたいに真っ直ぐ前を向いて歩いてるんですよね。
私も、負けていられません‥‥‥!

END

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Last-modified: 2018-08-03 (金) 23:05:00