ラージュ「ん、庭にいるのって‥‥‥アズリア?
おーい、アズリア! こんな時間に剣の素振りか?」
アズリア「ああ‥‥‥ラージュか‥‥‥。これは私の日課なんだ。
どの世界にいようと、日頃の鍛錬を怠るわけにはいかないからな‥‥‥。
ラージュこそ、そんな場所で何をしている?」
ラージュ「ここで夕涼みをしてるんだ、これがオレの日課だな。
アズリアもこっちへ来てみないか?」
アズリア「風が気持ち良いな、汗をかいた後は、ここで休憩するのも悪くないな。」
ラージュ「だろ!? オレはアズリアと違って、運動はしてないけどな‥‥。
アズリアは、毎日こんな時間まで体を鍛えてるのか。
どうしてそんなに熱心なんだ?」
アズリア「私は軍人だからな‥‥‥。体づくりは軍人の基本だ。」
ラージュ「そっか、軍人か‥‥‥!
なんかかっこいいよな!?
アズリアのその服も、もしかして『軍服』ってやつか?」
アズリア「ああ、そうだ。これは帝国軍に入隊すれば支給される軽装だな。
騎士のような重装もあるのだが、
これは機能性を重視したもので気に入っている。」
ラージュ「確かに、動きやすそうだな。」
アズリア「ああ、それに背丈に恵まれない男子や、
女性の私も着やすいつくりになっているんだ。」
ラージュ「それなら、オレにも着られるのかな?」
アズリア「そうだな。お前も入隊すれば着ることができるぞ。」
ラージュ「えっ、オレが軍人に‥‥‥!?
軍服はかっこいいと思うけど、そこまでは考えてなかったな‥‥‥。
そもそもオレに、軍人なんて仕事が勤まるのか?」
アズリア「そこはまったく心配ない。
軍には教育施設もあるし、
体ひとつで始められることも軍人という仕事の魅力だ。」
ラージュ「そうなのか、なるほどな‥‥‥。」
アズリア「それに‥‥‥、私が思うにラージュには軍人としての素質がある。」
ラージュ「えっ、どうしてだ!? オレの戦い方なんて我流だしさ‥‥‥。」
アズリア「むしろそこがいい。
お前の戦い方はなかなか奇抜で、他に類を見ない強さを秘めている。」
ラージュ「じゃあ、軍に入ればオレももっと強くなれるってことなのか?」
アズリア「ああ。それに軍で訓練を積めば、レックスたちのように
召喚術も使えるようになるかもしれないぞ。」
ラージュ「そうか、軍隊か‥‥‥。ちょっとだけ興味がわいてきたな‥‥‥。」
アズリア「興味があるなら私に声をかけてくれ。
良家の才子などでなければ本来は入隊が難しいのだが、
推薦書を書いてやろう。」
ラージュ「えっ、本当に!?」
アズリア「もちろん、ラージュに軍人になる覚悟ができたらの話だがな。」
ラージュ「あははは。それはそうだよな‥‥‥。」
ラージュ「アズリア〜! 今夜も庭で素振りか、精が出るな。」
アズリア「ラージュか。いや、今日はもう切り上げるところだ。
そちらに邪魔してもいいか?」
ラージュ「屋根の上に? もちろん、いつでも大歓迎だよ。」
アズリア「ふう‥‥‥。今日もいい汗をかいた‥‥‥。」
ラージュ「アズリア、気持ちよさそうだな。」
アズリア「軽く体を動かした後の適度な疲労感は、確かに気持ちのいいものだ。」
ラージュ「それはちょっとわかるけど‥‥‥、でもアズリアの場合『軽く』じゃないだろ。
オレから見ると、『軽く』どころかかなり過酷な鍛錬だと思うけど‥‥。」
アズリア「そうか‥‥‥?」
ラージュ「ああ‥‥‥あれだけ動いたら、普通はしんどいって。」
アズリア「ふっ‥‥‥民間人とは鍛え方が違うからな。」
ラージュ「それって‥‥‥。」
アズリア「‥‥‥?」
ラージュ「もしかして、趣味なのか?」
アズリア「あのな、私も好きで体を鍛えているわけではない。
軍人の責務として鍛錬に励んでいるのだ‥‥‥。」
ラージュ「そうなんだ‥‥‥。わりと、好きでやってるのかと思ってた。」
アズリア「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「あのさ、好きじゃないなら、どうしてアズリアは軍人になったんだ?
女の人が前線で働く軍人になるのは珍しいって、
イオスから聞いたけど‥‥‥。」
アズリア「そのことか‥‥‥。確かに、軍に志願する女性は多くないな。
前線で働く者となると、さらに少ない。
その上、士官クラスとなればなおさらだ。
それもあって、私も軍の中では好奇の目で見られ、
時にはイヤな思いもしてきた。」
ラージュ「それじゃあ、どうしてアズリアは‥‥‥。」
アズリア「私の場合、家のためだ。」
ラージュ「『家』‥‥‥?」
アズリア「私の生まれた家は、軍人を多く輩出してきた軍の名門とも言える一族なのだ。
その伝統を絶やさぬために、私は女ながらに軍人になることを決意したのだ。」
ラージュ「でもさ、軍人の家に生まれたからって、
必ず軍人にならなきゃいけないわけじゃないんだろ?」
アズリア「それはそうだが、しかし家のためには‥‥‥。」
ラージュ「家とか伝統とか、そんなもののために我慢するなんて、
正直オレにはピンとこないな‥‥‥。」
アズリア「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「あ‥‥‥ごめん‥‥‥。アズリアの生き方や家を悪く言うつもりはないんだ。
たださ、家のために好きなことができないとしたら、
それは残念なことだと思うんだ。
家とか伝統とかは過去のものだけど、
人にはいくらでも未来があるだろ? だから‥‥‥。」
アズリア「お前の言いたいことはわかる‥‥‥。しかし‥‥‥。
‥‥‥すまない、うまく考えがまとまらない。この話はここまでとしよう。」
ラージュ「そうか、わかったよ。」
アズリア「ではな‥‥‥。」
ラージュ「うん、おやすみアズリア。」
ラージュ「‥‥‥オレ、余計なこと言っちゃったかな‥‥‥。」
ラージュ「なあ、アズリア。さっき庭で、槍の稽古してたよな?」
アズリア「ああ。私は剣術の他に、槍術もたしなむのだ。」
ラージュ「へえ‥‥‥!! それにしても、すごい槍さばきだったよな!?」
アズリア「ちなみに‥‥‥召喚術も多少は使える。」
ラージュ「すごいな‥‥‥! アズリアは、何でもこなせて。
完全無欠って感じだな!」
アズリア「‥‥‥‥‥‥。」
ラージュ「あれ‥‥‥? オレ、なんか間違ったこと言ったか?」
アズリア「‥‥‥と言うわけで、ラージュのかいかぶりだ。
士官学校の頃から常に2番手で、完全無欠などという言葉には程遠い。」
ラージュ「そっか、アズリアでもレックスには敵わなかったのか。
なんだか意外だったよ。」
アズリア「いや、今でもあいつには何ひとつ及ばない。」
ラージュ「うーん‥‥‥そうなのか?」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
アズリア「」
ラージュ「」
(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
アズリア「」
(最終戦後)
アズリア「」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」
ラージュ「ありがとう‥‥‥。」
【】
アズリア「」