第1話

アルカ「ふう‥‥‥ やっぱり、ここは落ち着くなあ」
スピネル「姉さま? やっぱり、そこにいたんですか
    もう‥‥‥屋根の上は危ないから、大家さんに禁止されているはずですよ?」
アルカ「スピネルもおいでよ 風が気持ちいいよ」
スピネル「またそうやって、わたしを共犯者にしようとするんだから‥‥‥」

スピネル「わあ‥‥‥ 気持ちのいい風
    それに、優しい月の光 一日の疲れがとれていきます
    ‥‥‥姉さまは覚えていますか? 初めてここの屋根に登ったときのこと」
アルカ「覚えてるよ、あの時は大家さんに見つかってしこたま怒られたよね」
スピネル「あれから何年も経ったのに、姉さまはどこも変わりませんよね」
アルカ「スピネルは、変わったよね 初めて会った時にはあんなに小さかったのに」
スピネル「見た目はそうかもしれませんけど でも‥‥‥
    わたしも、変わってません! あのころからずっと、わたしは、その‥‥‥
    これまでも、これからも、姉さまを大好きなわたしのままです!」
アルカ「‥‥‥そっか
    二人そろって成長がないっていうのは、考えものかもしれないけれど‥‥‥
    ま、いいか 改めて、これからもよろしくね、スピネル
    なんとなく、明日からまた 大変なことになりそうな予感もするし
    何があっても、力をあわせて乗り切っていこうね?」
スピネル「は、はいっ!
    任せてください、いつでもいつまででも、姉さまのそばで力になり続けますっ!」
アルカ「うん、信頼してる」
スピネル「‥‥‥えへへ
    そ、それじゃ、わたし、 先に休ませてもらいますね
    姉さまも、あまり遅くならないように 降りてきてください
    それでは、おやすみなさい」

おやすみ‥‥‥ そして、また明日‥‥‥

第2話

アルカ「今日は残念だったね 記憶、取り戻せたかもしれなかったのに」
スピネル「‥‥‥いいんです そんなに期待もしてませんでしたし
    これまでにも、 いろいろ試してみたんですよ?
    サプレスのことについて書かれた本を たくさん読んでみたり
    学園では、クラスメイトのみんなから いろいろ話を聞いてみたりもしましたし」
アルカ「うん、知ってる がんばってたよね」
スピネル「それでも、何も思い出せませんでした わたしの記憶って、そのくらいガンコなんです
    だから、長期戦の覚悟なら とっくにできてるんですよ
    それに、昔のことなんて思い出せなくても、 今、わたし、とても幸せです
    姉さまと一緒に暮らせてるだけで、 わたし、けっこう満足なんです
    だから‥‥‥このままでも、いいんです」
アルカ「うん‥‥‥」

強がりを言ってはいるけど、 やっぱり気にしてるんだろうな‥‥‥

第3話

スピネル「あ、あのね、姉さま わたし、思うんです
     誰だって、失敗くらいする‥‥‥ううん、失敗を乗り越えるから魂は輝くんだって」
アルカ「‥‥‥なに、いきなり」
スピネル「え? あ、ええと、その‥‥‥今日のこと、気にしてるのかなって
     姉さま、なんだかんだいって、これまで任務の失敗なんてほとんどありませんでしたし」
アルカ「‥‥‥あ、なるほど 励ましてくれてるのね
     大丈夫だよ、そんなにへこんでるわけじゃないから」
スピネル「‥‥‥本当ですか?」
アルカ「本当だよ ちょっと考え事はしてたけどね
     わたしはまだ未熟者なんだなあとか、まだまだエルストさんは遠いなあとか」
スピネル「‥‥‥わたしも、ガウディさんみたいには まだまだなれそうにないです‥‥‥」
アルカ「お互い、高い目標を持っちゃったものだよね」
スピネル「でも、諦めない‥‥‥んですよね?」
アルカ「うん、もちろん 明日からもまた、がんばらないとね
     今日の失敗を取り戻して、すぐその先を目指さないと
     一緒に頑張ろうね、スピネル」
スピネル「‥‥‥はいっ!」

‥‥‥そうだ、落ち込んでるヒマなんてない わたしはスピネルと一緒に頑張るんだ‥‥‥!

第4話

スピネル「今日はのんびりできると思ったのに、ふたを開けてみたら大変な一日でしたね
     学園に呼ばれてみたり、機械兵器が襲ってきたり‥‥‥
     書類の前で姉さまが泣いていたのが、遠い昔のことみたいです」
アルカ「ほんとだよ、今日はすっごく疲れた‥‥‥
     だいたい、召喚師の仕事っていうのは 異種族間のもめごとを解決とか予防することで
     ああいった連中と正面からやりあうのは専門外だと思うんだけどなあ‥‥‥」
スピネル「そうですよね‥‥‥もっと穏やかなおしごとのほうがいいです
     でも、おしごとのえり好みとかしていたら、エルストさんたちには追いつけないですよね
     あの日、エルストさんたちは、何も言わず わたしたちを助けてくれたんですし‥‥‥」
アルカ「‥‥‥うん、確かにそうだね
     戦いが向こうからやってくるんだから、愚痴を言ってても仕方がないか」
スピネル「はい!」
アルカ「よぉし、そうと決まったら、明日のために寝よっ
     明日もきっと、忙しい一日になる! そんな気がする!」
スピネル「‥‥‥心配になりました、姉さまのそういう勘は、よく当たりますから‥‥‥」

‥‥‥こんなことを言っておいてなんだけど、どうか明日が穏やかな一日でありますように

第5話

スピネル「今日は、びっくりしました ルエリィさんが誓約してしまうなんて」
アルカ「まったくね、あの子はつくづく、わたしたちの予想を裏切ってくれるなあ
     うかうかしてたら、すぐに追い抜かれるかもしれないね?」
スピネル「そうですね‥‥‥ちょっとだけ怖いです
     憧れる人っていう目標を持つことが大切なことは、とてもよく知ってますし‥‥‥」
アルカ「わたしたちにとってのエルストさんたちがルエリィにとってのわたしたちってことか
     光栄なんだけど、なんだかむずがゆいね」
スピネル「ルエリィさんの気持ちは、たぶん、それだけじゃないですし‥‥‥
     今後も姉さまに向かって一直線ですよ、あのひとは」
アルカ「あはは、頼もしいな」
スピネル「‥‥‥取られちゃったりしないでくださいね?」
アルカ「え? なに?」
スピネル「な‥‥‥なんでもありません! もう寝ます!」

昔から、ルエリィの話をするとスピネルの様子がおかしくなるんだよね‥‥‥

第6話

スピネル「なんだか‥‥‥最近、ぜんぜんお菓子を作れてない気がします」
アルカ「そういえば、そうだねぇ‥‥‥先月の、めちゃくちゃ甘いケーキ以来だっけ?」
スピネル「むっ! ケーキが甘くて、何が悪いんですかっ!」
アルカ「いや、あれはちょっと 度が過ぎてたような‥‥‥
     買ってきた砂糖の袋、まるまるひとつ使ってたでしょ?」
スピネル「あれでいいんです! 甘いものは頭や体の疲れにもいいんです!」
アルカ「でも、わたしはもうちょっと、甘さがひかえめのほうが好みかな」
スピネル「むっ‥‥‥ むうううっ‥‥‥
     仕方がありません‥‥‥ わかりました‥‥‥」
アルカ「ん?」
スピネル「こうなったら、意地でも姉さまに、わたしのケーキを認めてもらいます!
     旅は道連れで料理は愛情だって、以前読んだ料理書に書いてありました!
     愛情はすっごく注いでありますから、あとは味に慣れてもらうだけなんです!」
アルカ「え? ‥‥‥料理は愛情って、そういう意味なの?」
スピネル「覚悟してくださいね、姉さま! わたし、負けませんから!」
アルカ「え? 何時の間に、勝負ごとに‥‥‥?」

一度こうなったスピネルは止まらないからなあ‥‥‥
またしばらく、体重計から逃げ回る毎日になりそうかも?

第7話

スピネル「ギフトさんとエルストさんのことは、姉さまがよく話してくれたから
     一方的にですけど、よく知ってるような気がしてたんです
     だから、今日、ギフトさんが初対面のわたしに友人として接してくれた時は、嬉しかった
     ‥‥‥本当に、嬉しかったんです」
アルカ「彼に、何があったんだろう?」
スピネル「ギフトさんのことを一番よく知ってるのは姉さまだと思います
     姉さまに分からないなら、きっと、世界の誰にも分かりません」
アルカ「そう‥‥‥だよね
    次に会った時に、本人に問いただすしかないか」
スピネル「そう、ですね‥‥‥きっとまたわたしたちの前に現れますから
     その時こそ、ちゃんと捕まえて、ゆっくりお話をしましょう」
アルカ「うん、そうだよね」

きっと、それが、彼の友達としてわたしがするべきことなんだよね‥‥‥

第8話

スピネル「‥‥‥」
アルカ「‥‥‥」
スピネル「今日は‥‥‥ちょっと、いろいろ起こりすぎて、疲れましたね‥‥‥」
アルカ「うん‥‥‥頭の中が、ぐるぐるしてる
    まさか、本当に学園が襲撃を受けるなんて‥‥‥」
スピネル「改めて、恐ろしいひとたちが敵なんだなって思います
     予想を超えたことをしてくる相手には、備えることも難しいですし‥‥‥
     ‥‥‥それに、ギフトさんが‥‥‥」
アルカ「そうだね 彼も、恐ろしい敵の一人だ」
スピネル「わたしたちで、止められるでしょうか?」
アルカ「わたしたちが、止めるんだ それだけだよ」
スピネル「‥‥‥はい、そうですね!」

止めないと、いけないんだ‥‥‥!

第9話

スピネル「星になりたい‥‥‥」
アルカ「ど、どうしたのスピネル、いきなり妙なこと言い出して!!」
スピネル「だって、星になれば、これ以上姉さまに迷惑かけずにすみますし
     毎晩、こうして見守ることはできますから寂しくもないですし」
アルカ「いや、それはやめてほしいな 遺されたわたしが寂しいから」
スピネル「でも、今日の失敗は、本当に自分のことが情けなくて‥‥‥」
アルカ「確かに、ちょっと大変だったし、これからのことに不安もあるけど‥‥‥
    スピネル、ちょっと手を出して」
スピネル「え? あ、はい‥‥‥ きゃっ!?」
アルカ「やっぱり、スピネルには、こうして手をつなげる距離にいてほしい
    次にこの暖かさがほしくなった時、星まで手を伸ばさないといけなくなるからね」
スピネル「わ‥‥‥わかりました、姉さまがそこまで言うなら、仕方ありません
     星になるのはやめて、ずっと姉さまのそばにいます」
アルカ「うん、ありがとう」

ずっと一緒にいたい‥‥‥本当に、そう願うよ

第10話

スピネル「姉さま 考え事ですか?」
アルカ「うん‥‥‥今日、エルストさんに言われたことについて、ね」
スピネル「信じて戦うということが間違いだっていう、あれですか?」
アルカ「わたしたちは、何を信じて、何のために召喚師を目指してたんだろうね
    エルストさんの言葉に憧れて、あの人みたいになりたくて‥‥‥
    なのに、当の本人にあんなことを言われたらさ
    これからどうしたらいいのか、わからなくなるよね‥‥‥」
スピネル「そうですか?」
アルカ「えっ?」
スピネル「確かにショックでしたけど、姉さまが言うほどには‥‥‥
     わたしが最初に信じたのは、エルストさんじゃなくて、姉さまです
     信じることの大切さを教えてくれたのも、そのあとずっとそばにいてくれたのも、
     他の誰でもない 姉さまなんですよ?
     姉さまも、元気出してください
     エルストさんの言っていたことは、もしかしたら間違っていたのかもしれません
     でも、姉さまが言っていた姉さまの言葉は、絶対に間違ってなんていないんです
     そのことは、わたしが保証します だから、わたしを信じてください
     ‥‥‥ほら、これからどうしたらいいのか、これでわかったでしょう?」
アルカ「‥‥‥そっか‥‥‥ そうだよね‥‥‥」

今のわたしが、何を信じるべきなのか‥‥‥ 簡単なことじゃない
ありがとう、スピネル 大事なことを、思い出せたみたいだよ

第11話

スピネル「ソウケンさん、腕は本当に大丈夫なんでしょうか‥‥‥」
アルカ「本人は気にするなって言ってたけど、やっぱり気になるよね‥‥‥
    シルターンの妖怪の血が混じっているぶん、ふつうの人間よりは丈夫らしいけど
    それにしたって、限度ってものがあるだろうし‥‥‥」
スピネル「‥‥‥」
アルカ「どうしたの、スピネル?」
スピネル「えっ、あ、その、ちょっと、別のこと、考えちゃってました
     血が混じっているってことは、昔も種族違いの恋とか、あったんですよね?
     こんなときですけど、なんだかそういうのってあこがれちゃうな、って」
アルカ「ああ、興味があるなら、今度、カズラマルさんに直接聞けばいいよ
    ソウケンの先祖で、人間の嫁をめとった大妖怪、当の本人だから」
スピネル「‥‥‥あのおじいさんですか‥‥‥ ロマンティックが遠のきました‥‥‥
     もういいです、異種族間ロマンスは自分で体験することにします」
アルカ「そう? 残念だな、血わき肉おどる大冒険活劇なのに」
スピネル「恋物語で大冒険しちゃうようなおじいさんだから、いやなんです!」

あれ、そういえばスピネル、いま、ロマンスを自分で体験するって‥‥‥
誰か、好きな男の子でもできたのかな? ‥‥‥いや、まさか、ね‥‥‥

第12話

スピネル「結局、わたしって何だったんでしょう‥‥‥
     サプレスの天使、だと信じてこれまで生きてきましたけど
     あの白い荒野はサプレスではなかったわけですし、
     わたしの正体は‥‥‥その、あの不思議な光だった‥‥‥わけですよね
     ‥‥‥」
アルカ「やっぱり、不安かな?」
スピネル「よく、わかりません‥‥‥
     もちろん、不安ではあるんです けれど、それだけじゃない
     ああ、やっぱり、っていう気持ちも少しだけあるんですよ
     これまで一生懸命、自分のことについて調べたけど何もわからなかった
     天師さんにお願いして、杖の力を使っていただいたときも、からぶりでした
     だからわたし、心の奥では、自分のことを疑っていたのかもしれません
     サプレスの天使なんかじゃない、もっとわけのわからないナニカなんだって」
アルカ「それだけじゃないでしょ?
    スピネルは、わたしの誰よりも大切な妹で、心の底から頼れる響友
    それをスピネル自身がちゃんとわかっているから、
    わからないことが少し増えても自分を見失わなかったりしないんだよ」
スピネル「‥‥‥そうでしょうか‥‥‥」
アルカ「そうだよ、わたしの妹は強い子だもの」
スピネル「ふふっ‥‥‥姉さまがそう言うなら、きっと、そうなんでしょうね
     なんだか、ちょっとだけ、自分に自信を持てそうな気がしてきました
     よおし、明日からも任務、たくさんがんばっちゃいますよ!」

スピネル‥‥‥強がってるけど、やっぱり辛そうね‥‥‥

第14話

スピネル「長い戦いでしたけど、もうすぐ、全部終わるんですよね」
アルカ「うん‥‥‥ようやく、だね
    わたしたちが子どものころには、もう始まっていた戦い
    わたしたちが出会ったことも、この戦いの一部だった‥‥‥んだっけ」
スピネル「それを言うなら、わたしが生まれたこと自体も、ですよ
     わたしがわたしとして生きてきたこれまでの時間のすべては、この戦いの一環だったんです」
アルカ「‥‥‥悔しいとか、思ってる?」
スピネル「正直を言えば、少しだけ でも、心配はいりません
     わたしを信じてくれている人たちがいる限り、ちゃんと最後まで勇気をもって戦いますっ!」
アルカ「じゃあ、その後の話をしようか」
スピネル「あと‥‥‥ですか?」
アルカ「あなたがあなたとして生きてきたこれまでの時間のすべてが、戦いの一環だった‥‥‥なら、
    戦いが終わった後の時間を全部、このままわたしがもらってもいいかな」
スピネル「‥‥‥ええと、それは、どういう‥‥‥?」
アルカ「いまさらだけど、言っておかないといけない大切な言葉を思い出したの
    わたしはあなたが好きで、これからも一緒にいたいと思ってる
    そして、あなたも同じ気持ちでいてくれてると、
    自信過剰かもしれないけど、勝手に信じてる
    どうかな?」
スピネル「‥‥‥ずるいです、わたしがどう答えるのか、わかってて聞いてるんじゃないですか」
アルカ「それでも答えを言葉でほしくなる時はあるものなのよ」
スピネル「大好き、です 他の誰よりも」
アルカ「‥‥‥」
スピネル「て、照れて目をそらすくらいなら、最初から言わせないでくださいっ!?」

明日は、最後の決戦だ 何が起こるのか、想像もつかないけど‥‥‥
わたしたちは、必ず生きて帰ってくる そして、一緒にこれからの時間を過ごすんだ
わたしたち二人の心が響き合い選び取った、他の誰も仕組んだものでもない、
そういう二人の時間を‥‥‥

ED

アルカ「ふあ‥‥‥あふう こんな時間に起きると、さすがに眠いよ
    二度寝したいところだけど、そういうわけにもいかないよね
    ちょっと、目を覚ましに行ってこよ‥‥‥」

アルカ「うわぁ‥‥‥ いい眺め‥‥‥
    そういえば、こんな時間にここに来たことはなかったっけ
    ちょっと時間を変えただけなのに、見慣れた光景が、新鮮に見えるなぁ‥‥‥」
スピネル「あふ‥‥‥ 何をしてるんですか、姉さま
     もうすぐ、出発の時間ですよ? ぐずぐずしていると、列車に乗り遅れます」
アルカ「そんなに焦らないの、この街との名残を惜しんでるんだから
    ほら、スピネルもこっちにおいでよ いい眺めだよ?」
スピネル「もう、なんでそんなにのんきなんですか
     これからこの街を出て、遠くに行かなきゃいけないって時に」
アルカ「だからこそ、今のうちにセイヴァールを堪能しておくんじゃない
    大好きな街だから、これからどこに行っても、この風を忘れないように、ね」
スピネル「むー、なんだか格好いい言葉で言いくるめられてるような気もしますけど
     ‥‥‥わあ、本当に、いい景色」
アルカ「でしょ?」
スピネル「あの‥‥‥ライル機関、でしたっけ わたしたちを呼んでいる組織の名前
     これからの冥土の脅威に対抗するため、わたしたちの力を研究したいっていう‥‥‥」
アルカ「うん、ロレイラル出身の研究者が 大勢いるところらしいね
    きっと、わたしたちの力から、何かをつかんでくれるよ」
スピネル「ほかにも、いろいろな組織から声をかけられていましたよね?」
アルカ「うん、全部に力を貸して回るんだから これから忙しくなるよ?」
スピネル「寂しくは、ないんですか?
     この‥‥‥素敵な景色の、思い出もたくさんある街を離れて、
     どこか遠くの、知らない場所に行かなきゃいけないなんて‥‥‥」
アルカ「それは、寂しいよ 心細くもあるかな
    わたしだって、故郷の村とセイヴァール以外はほとんど知らないんだもん」
スピネル「だったらっ!」
アルカ「でも、スピネルがそばにいてくれる
    これからも、ずっと一緒にいてくれる それだけで、わたしはどこにでも行けるよ」
スピネル「あ‥‥‥」
アルカ「スピネルは、どうかな? 一緒にいるのがわたしじゃ、不安?」
スピネル「それは‥‥‥ そ、その質問は、ずるいです!
     わたしが、姉さまにそんなふうに聞かれたら、答えなんてひとつしかないじゃないですか!
     姉さまと一緒なら、たとえ火の中水の中、
     霊界の奥底のさらに底までであっても何の不安もありません!」
アルカ「あはは、ありがと、さすがにそんなところに行く予定はないけどね」
スピネル「‥‥‥姉さまは、いつもそうです わたしの気持ちを、笑って受け止めてしまう
     好きって言葉にするたびに わたしがこんなにドキドキしてるのに、」
アルカ「落ち着いてるわけじゃないよ スピネルが本気だって、わかるもの
    わたしが男の子だったら、飛び上がって喜んでるところなんだけどなあ‥‥‥」
スピネル「性別なんて、どうでもいいじゃないですか!
     姉さまの魂の輝きの前には、ささいな問題です!」
アルカ「いや、大事だよ!?ささい扱いしちゃいけない問題だからね!?」
スピネル「うう‥‥‥どうしてわたし、こんな体に生まれちゃったんでしょう‥‥‥
     このことに関してだけは、わたしを女の子にした姉さまを恨みます‥‥‥」
アルカ「あはは、そこに関しては、確かに責任を感じなくもないけど‥‥‥
    でも、スピネルが可愛い女の子で、よかったこともあるかな」
スピネル「‥‥‥何です?」
アルカ「恋人同士とはちょっと違った意味で、ずっと大好き同士でいられるから
    きっと、それはそれですごく幸せなことだと思うんだ」
スピネル「は、はう‥‥‥」
アルカ「ちょっと、恥ずかしいこと言っちゃったかな?
    さ、行こう 火の中でも水の中でもないけど、
    この二人だったら、どこにでも行けるよ」
スピネル「‥‥‥はいっ!」


わたしがここにいるということ 生きて、考えて、動いているということ
すべての始まりは、姉さまとの出会いだった
名前も、姿も、生命も、すべて姉さまにもらった
もし、あの日あの時、姉さまがわたしという存在の前に落ちてこなかったら
わたしはいまごろ、何になっていたんだろう?
考えれば考えるほど、怖くなってしまう そして同時に、感謝の気持ちで満たされていく
姉さま‥‥‥ わたしと出会ってくれて、ありがとう
わたしを形作ってくれて、ありがとう わたしと一緒に歩んでくれて、ありがとう

「わたしと響き合ってくれて、今、この時をくれて、本当に、ありがとう 大好きです‥‥‥姉さま」


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Last-modified: 2014-05-31 (土) 00:00:00