第1話

アルカ「ふう‥‥‥今日は色々あって ちょっと疲れたな
    ひとやすみして、少し風にあたっていこうか‥‥‥」
イェンファ「あら? 妙なところで会うものね」
アルカ「イェンファ! どうしたの、こんなところで」
イェンファ「散歩‥‥‥かしら、ね この街の道に早くなじむために、
      あちこちを歩いてみているの そういうあなたは?」
アルカ「わたしもまあ、気分転換の散歩かな 今日はいろいろあって疲れたから」
イェンファ「そう 気苦労を与えてしまったかしら」
アルカ「え? いや、そういう意味じゃなくて! 別にあなたがどうって話じゃないから!」
イェンファ「そう」
アルカ「‥‥‥ところで、いきなり変なこと聞くようだけど‥‥‥
    もしかしてあなた、わたしのことキライ?」
イェンファ「え?」
アルカ「あ、いや、ごめん、やっぱ聞かなかったことにし‥‥‥」
イェンファ「ああ‥‥‥そうね、どちらかというと 嫌いなタイプね」
アルカ「うっ」
イェンファ「大局とか状況とかのことをすぐ忘れて 目先のことに飛びつく人は好きじゃないの
      少なくとも、同じ任務に携わる仲間としては 勘弁してほしいわ
      ‥‥‥あなたもそうでしょう? 私みたいな人間は、苦手じゃない?」
アルカ「そ、それは‥‥‥ 保留ってことで‥‥‥」
イェンファ「あら、そう
      まあいいわ、私はそろそろ戻るから、あなたも帰って休みなさい
      あまり遊び歩いていると、明日の任務に差しさわりが出るわ」
アルカ「あはは、気をつけます‥‥‥」

苦手‥‥‥ 確かに、そうかもしれないな‥‥‥

第2話

イェンファ「ひとつ、聞きたいことがあるのだけど」
アルカ「それはいいけど、なんでこんな夜中に? 昼間のうちに聞きに来ればいいのに」
イェンファ「こういう話は、人前では少し、ね
      あなたの響友‥‥‥ 本当に信用してもいいの?」
アルカ「‥‥‥どういうこと?」
イェンファ「あなたに出会う前の記憶がないということを もう少し危険視してもいい、という話よ
      正体が何者なのか、本人も知らないということなんでしょう?
      本当に害のない存在だと、言い切れるの?」
アルカ「そりゃ、もちろん
    だって、スピネルだよ? どこを見たって危なそうじゃないよ」
イェンファ「あのね、私の言いたいのはそういうことじゃなくて」
アルカ「わかってる、でも本人には言わないでよ?
    ああ見えて、自分の記憶のこと けっこう気にしてるんだから」
イェンファ「それは分かってるわ、今日もあの杖で記憶を取り戻そうとしていたくらいだし」
アルカ「とりあえず、今わたしに言えることはひとつだけ
    わたしは、スピネルを信じてる 響友‥‥‥大切な、パートナーだから」
イェンファ「‥‥‥それで、いいの?」
アルカ「それはわからないよ でも、始まりは信じることからだと思うの
    だから、できればあなたにも信じてほしい あなたも、大切な仲間だから」
イェンファ「‥‥‥ずるい口説き方をするのね」
アルカ「あはは、よく言われるよ」

そう‥‥‥ わたしはあの子を信じている‥‥‥

第3話

イェンファ「案の定、といったところね」
アルカ「‥‥‥開口一番、なかなか手厳しいね」
イェンファ「こういう時でもないと、あなた、何を言っても聞き流すでしょう?
      なすべきことに優先順位をつけず、目の前のことだけにいつでも全力であたる
      あなたの立場でそれをするのは 危険なのだと、理解できたでしょう?
      これに懲りて、明日からはもう少し、慎重で思慮深い行いを心掛けることね」
アルカ「あはは‥‥‥ごめん、それはちょっと約束できないな」
イェンファ「なぜ? まさかあなた‥‥‥」
アルカ「失敗したことは、反省してる でも、やったことを後悔はしてないよ
    誰かを助けたいって意志が悪いものだとは、わたしにはどうしても思えない
    悪いのは、 わたし自身の力不足だよ
    わたしがちゃんとしてれば、全部どうにかできたはずなんだ
    あはは、ソウケンの言う通りだね わたしはまだまだ、未熟なんだ」
イェンファ「‥‥‥‥‥‥っ!!」
アルカ「ん? どうしたの?」
イェンファ「なんでもない ‥‥‥帰るわ」
アルカ「え? ああ、うん‥‥‥おやすみ」

怒らせちゃった、かな‥‥‥

第4話

アルカ「ねえ、イェンファ‥‥‥」
イェンファ「‥‥‥ 聞きたいことは、わかってるわ
      でも、ごめんなさい 今はまだ、話せないの」
アルカ「うん、それは分かってる 無理に聞き出そうとは思わないよ」
イェンファ「えっ?」
アルカ「人それぞれに事情があるのは当たり前さ まして、あなたのそれは任務だし
    仲間を苦しめてまで、秘密を聞き出そうとは思わない‥‥‥けど
    その秘密を抱えたままのあなたが、今、つらそうにしているのは見逃せない、かな」
イェンファ「‥‥‥私が‥‥‥?」
アルカ「無理に聞こうとは思わないよ、でも、話していいと思った時にはすぐに話して
    そうすれば、ちょっとでも、気が楽になるかもしれないから」
イェンファ「‥‥‥ほんと、あなたって人は‥‥‥」
アルカ「あきれた?」
イェンファ「ええ、そうね、あきれたわ 心の底から
      私が言うのも妙だけど、少しくらい、自分の心配をしてもいいんじゃない?
      えたいの知れない任務を帯びた、えたいの知れない騎士に振り回されて、
      えたいの知れない相手と 戦わされるかもしれないのよ?」
アルカ「イェンファは、えたいが知れてなくないよ 仲間だからね
    だから、何の心配もいらないよ」
イェンファ「‥‥‥もういいわ、あなたと話していると頭がどうにかなってしまいそう
      帰って、寝るわ」
アルカ「うん、おやすみ カゼとか、ひかないようにね」
イェンファ「あなたもね」

イェンファ‥‥‥今は話せないことでも、いつかは話してくれるって、信じてるよ

第5話

イェンファ「こんばんは ‥‥‥案の定、顔がゆるんでいるのね」
アルカ「え? そ、そうかな?
    やっぱり、ルエリィが誓約したことがうれしくてね
    あの子がずっとがんばってきたのを、ずっと見てきたからさ」
イェンファ「我が子の成長を喜ぶ親のような心境かしら?」
アルカ「親!? わたし、まだそんな年じゃないよ!?」
イェンファ「冗談よ そのくらいわかってるわ
      あなたは十分に子どもっぽいもの ルエリィたちの隣では、特にね」
アルカ「‥‥‥なんだか、今夜のイェンファは、意地が悪くない?」
イェンファ「ん‥‥‥そうかもしれないわね 少しだけ、虫の居所が悪いわ
      真紅の鎖を、あそこまで追い詰めておいて、また逃がしてしまったんだもの
      あなたの後輩の無事はうれしいけど、手放しの笑顔にはなれそうにないわね」
アルカ「ん‥‥‥そうだね、事態は何もよくなってないんだよね
    鎖の連中を、捕まえるまでは、今日までみたいなことが繰り返される‥‥‥」
イェンファ「そういうことよ 気合を入れましょう?
      いざというときの決断力はともかく、他のところのあなたは信頼してるわ」
アルカ「あはは‥‥‥ひいき目の入らない、冷静な評価をありがとう‥‥‥」

さあ、明日からの任務も がんばって取りかかるぞ‥‥‥!

第6話

イェンファ「少し、冷えるわね」
アルカ「夕方に、少し、雨が降ってたからね
    セイヴァールは海がそばにあるし、冷えるときは一気に冷えるんだ」
イェンファ「そうみたいね 内陸のほうとはずいぶん感じが違うわ
      気をつけておかないと、つまらないことで体調を崩してしまいそう」
アルカ「あ、そうだ なんだったら、マフラー使う?
    ちょっと前に編んだやつが、タンスの中で眠ってるんだ」
イェンファ「‥‥‥編んだ?
      あ、ああ、なるほど あなたの響友がやったのね?」
アルカ「違うよ、スピネルはあまり編み物が得意じゃないの
    編み目の数とか数えてると 途中でわけわかんなくなるみたいで
    繕いものとかは得意だから、針と糸なら大丈夫みたいなんだけど」
イェンファ「ということは、まさか、あなたが?
      ウソでしょう? 編み物なんて、人間の手で可能なの?」
アルカ「いやいや、さすがにそれは大げさでしょ」
イェンファ「‥‥‥だって、私、やったことないもの
      むしろ、あなたができることのほうが不思議よ」
アルカ「学生時代、いろいろなことに手を出してた時期があってね
    いろんな言葉を覚えて、いろんな人と話せるようになった時に、
    いろんなことを体験して、いろんな話題も持っておこうと思ったんだ
    だから、有名どころの楽器はひととおり練習したし、
    スポーツなんかもいろいろと手を出してみたよ
    どれもこれも、絵に描いたみたいな器用貧乏に終わったけどね
    編み物も、そうやって体験したもののひとつ、ってわけ」
イェンファ「‥‥‥なるほど、あなたの部屋がやたらと雑然としている理由がわかったわ
      あれはつまり、あなたの移り気の歴史がそのまま積み重ねられた結果なのね」
アルカ「うっ‥‥‥ そ、そういうことになるかな?」
イェンファ「‥‥‥本当に、ヘンな人」
アルカ「そうかなぁ‥‥‥」

だって、世の中には楽しそうなこととか、面白そうなことがいっぱいあるんだもの
全部に手を伸ばしたくなったって、人としてふつう‥‥‥だよね?

第7話

イェンファ「‥‥‥なんて言えばいいのかわからないけれど
      顔をあげなさい うつむいているのは、あなたらしくない」
アルカ「そう‥‥‥かな」
イェンファ「久しぶりに再会した古い友人が、すっかり変わり果てていた‥‥‥
      気持ちは分かるわ 辛いだろうと思う
      けれど、現実問題として、あの男はいま、私たちの敵なのよ
      敵は倒さなければならない、これは召喚師も警察騎士も変わらないはずよ
      だから、あなたに、立ち止まることは許されない」
アルカ「うん‥‥‥ そう、なんだよね‥‥‥」
イェンファ「‥‥‥酷いことを言っているわね、私」
アルカ「でも、誰かに言ってもらわないとわたしは座り込んでいたよ
    そして、しばらく立ちあがれなかったかもしれない
    嫌な役を任せてしまって、ごめんね ありがとう、イェンファ」
イェンファ「ああもう‥‥‥ なんでそこで、お礼を言うのよ
      弱音とか愚痴とか、そういうのを言ってもいいのよ? 今のあなたは」
アルカ「そうなの?」
イェンファ「‥‥‥ああもう」
アルカ「じゃあ、弱音はまた今度にとっておくから
    今だけは、素直にお礼を言わせて?」
イェンファ「なんだっていいわよ、もう‥‥‥」

しっかり立ち直って 明日もがんばらないといけないよね‥‥‥

第8話

イェンファ「はぁ‥‥‥」
アルカ「どうしたの、イェンファ 沈んだ顔してる」
イェンファ「今のあなたに心配されるというのもおかしな話ね
      そんなにまいってるように見えるのかしら?」
アルカ「うん、まあ‥‥‥」
イェンファ「人のことを気遣うより先に、自分のことを気にしなさい
      やっぱり顔色悪いわよ、あなた」
アルカ「それは、やっぱり、ギフトのことを考えるとね」
イェンファ「ギフト・ブラッテルン‥‥‥」
アルカ「やっぱりあなたは彼のことを知っていたんだね」
イェンファ「隠していても仕方がないわね その通りよ
      でも‥‥‥」
アルカ「それ以上は話せない、んでしょ? わかってるよ
    全部打ち明けられないことが苦しいって、今のあなたの顔には書いてある」
イェンファ「うそ 私は、そんなに単純じゃない」
アルカ「うそじゃないわよ イェンファはわかりやすいもの」
イェンファ「だって、そんなこと、誰にも言われたこと、ない」
アルカ「そう? 意外だな」
イェンファ「あなたがおかしいだけよ‥‥‥ そうに、決まってるじゃない‥‥‥」

そんなことないと思うんだけどな‥‥‥

第9話

アルカ「エルストさんのこと、前から知ってたんだね?」
イェンファ「ええ‥‥‥ とてもよく知っているわ
      何をどこまで知っているかは、まだ話せないけれど」
アルカ「じゃあ、これだけ教えてよ あなたの知ってるエルストさんは、どんな人?
    わたしの知ってるあの人は、優しくて、正しくて、それにとても強い召喚師だった
    あの人と響友に憧れて、わたしは召喚師になるって決めたんだよ」
イェンファ「それは、今よりずっと昔の エルスト・ブラッテルンのことでしょう
      強力な召喚師、というところだけは 今も変わっていないけれど
      優しさも、正しさも、今の彼には 縁遠い言葉よ」
アルカ「そんな‥‥‥ どうして‥‥‥」
イェンファ「彼の弟が変わってしまったのを、あなたはその目で見たでしょう?
      それと同じよ 人は変わるものなの
      あなたが、早く現実を認めてくれることを願うわ」

それでも‥‥‥わたしは、信じたい‥‥‥

第10話

イェンファ「なんでこんなところに、召喚師の 抜け殻が転がっているのかしら?」
アルカ「ああ‥‥‥こんばんは、イェンファ‥‥‥」
イェンファ「のんきな挨拶のつもりかもしれないけど、今にも死にそうな声、してるわよ
      そんなに辛かったの? その‥‥‥ エルスト・ブラッテルンに言われたこと」
アルカ「うん‥‥‥ それは、もちろん、ね‥‥‥
    わたしたちはエルストさんに憧れて、エルストさんの言葉に導かれてここに来た
    召喚師になったのも、みんなのためにと言って戦ってきたのも、全部そうだよ
    なのに、今さら‥‥‥ それが全部間違いだった、なんて」
イェンファ「‥‥‥本気で言っているの?」
アルカ「冗談でなんて言えないよ、こんなこと」
イェンファ「そう じゃあ、もうひとつ聞きたいのだけど
      斬り捨てても、いいかしら?」
アルカ「‥‥‥え?」
イェンファ「いま、私、ものすごく 腹を立てているのよね
      この苛立ちを、目の前にいる元凶にぶつけても 罪にはならないと思うのだけど」
アルカ「よくわからないけど、街中で人を斬ったら重罪だよ!?」
イェンファ「警察騎士の職権を濫用したら どうにかならないかしら?」
アルカ「ならないし、しちゃまずいし、しようと考えるだけでもまずいよ!
    ‥‥‥だいたい、なんであなたが腹を立てて、その元凶がわたしってことになるの」
イェンファ「本当にわからないの? まったく、もう
      仲間を信じて戦う‥‥‥この言葉をあなたに投げ出されたら、困るのよ」
アルカ「どうして」
イェンファ「そんなの、あなたを信じちゃった私が バカみたいだからに決まってるでしょ!」
アルカ「‥‥‥へ?」
イェンファ「この街に来て、あなたに会って、あなたに振り回されて、影響されて、
      仲間に隠し事をしなきゃいけないことに 一丁前に悩んだりなんかして、
      それもこれも、全部全部、あなたの言葉を信じたからなのに、
      私をそんなふうに変えた当の本人が、何でいまさら自分の言葉を疑ってるのよ!」
アルカ「え‥‥‥あ‥‥‥」
イェンファ「私はね、あんな仮面の男のことなんて 知らないし、どうでもいいの
      あなたの言葉を聞いて、あなたの行いを見て、あなたを仲間として信じると決めたの
      ‥‥‥その責任くらいは、ちゃんと、とりなさいよ
      この人を信じて間違いじゃなかったって、そう、思わせてよ」
アルカ「イェンファ‥‥‥」

そうだね‥‥‥わたしを信じてくれてるあなたのためにも、
わたしはもう少し、がんばらないといけないのかもしれない
ありがとう、イェンファ おかげで、わたしはまた、前を向けそうだよ

第11話

イェンファ「ようやく、といった感じね やっと、エルスト・ブラッテルンに手が届く
      ここまで長かったような、短かったような、不思議な感じよ
      やっとセイヴァールの空気にも 慣れてきたところだったのだけど」
アルカ「あ、そうか‥‥‥ イェンファは任務でここに来てるだけだから」
イェンファ「そうね、エルストを捕らえたら、そこで私の任務は終了
      すぐに、次の任務のため、別の街へ 向かうことになるわ」
アルカ「‥‥‥そっか‥‥‥」
イェンファ「なんで、そこで 寂しそうな顔をするのよ
      口うるさい監視役がいなくなるんだから、もっと素直に喜びなさい」
アルカ「喜ぶなんて、そんなこと、できるわけないじゃない
    仲間と別れるなんてこと、無条件に寂しいに、決まってるよ」
イェンファ「‥‥‥そういうことを、さらっと 言えてしまうのがあなたなのよね‥‥‥」

なんとなく、イェンファはずっと そばにいてくれるような気がしていたけど
もちろん、そんなことは あるはずないんだよね‥‥‥

第12話

イェンファ「怒ってるかしら?」
アルカ「え? 何を?」
イェンファ「私たちが、あの子のことを、危険な存在だと疑ってたことを、よ
      あなたが私のことを仲間と呼び、私もそれをあえて否定はしなかった‥‥‥
      なのに、私はその仲間を疑っていたのよ? 危険なんじゃないかって!」
アルカ「‥‥‥そうか、イェンファは 責めたがられてるんだね」
イェンファ「え‥‥‥?」
アルカ「これからちゃんと仲間であるために、後ろめたい気持ちを精算してしまいたくて
    そのために、罰を 受けたがってる‥‥‥」
イェンファ「‥‥‥そうなの? 私のこれって、そういう気持ちなの?」
アルカ「だったら、わたしが言うことはひとつだけだよ あなたは大切な仲間、今までも、これからも
    これまで秘密を抱えることに苦しんできて、秘密を明かした今も禊ぎをほしがっている、
    そんな人に、それ以上、何も求めることもできないよ
    だからイェンファは、これからも胸を張って わたしのそばにいてくれると嬉しいな」
イェンファ「あ、あなたのそばにって‥‥‥
      ‥‥‥しょ、しょうがないわね、それが罰だっていうなら、従うしかないし」
アルカ「え? あ、いや、これは強制とかじゃなくて」
イェンファ「わ、わかってるわよ! そんなこと、いちいち確認しなくても!」

‥‥‥怒られた いったいどうしたんだろう?

第14話

アルカ「櫻花隊を外されたって‥‥‥ ちょっと待って、それどういうこと!?」
イェンファ「もう‥‥‥夜中に大声を出さないの 近所迷惑よ?」
アルカ「いや、でも、そんなこと聞いたら落ち着いていられないよ!?
    何があったの!? もしかして、わたしたちがらみの任務のことで何か!?」
イェンファ「そうじゃないの むしろ、その逆かしら
      重要なのは、今の私は「櫻花隊の燕花」ではないということ
      任務であなたと一緒にいるわけじゃない‥‥‥
      そこのところだけ、知っておいてほしいなって」
アルカ「イェンファ‥‥‥ でも、どうして?」
イェンファ「意地の悪い質問をしないで 本当はもう、分かってるんでしょう?
      私は、あなたの傍にいたいの あなたを助けたいの
      任務じゃない、私の意思として、あなたの力になりたいの
      あなたは、その‥‥‥確かに風変わりで、型にはまっていないところも多いけど、
      心から尊敬できる 召喚師だと、今は思っているから」
アルカ「イェンファ‥‥‥」
イェンファ「ごめんなさい、いきなりこんなことを言われても重たいわよね
      全部忘れて」
アルカ「わたし、イェンファのこと、大好きだよ」
イェンファ「‥‥‥え?」
アルカ「だって、こんな不器用なのに仲間思いな特務騎士なんて、他に知らないもの
    だからね、実は、今回の任務は終わらせたくないなって気持ちが
    ほんのちょっとだけあったりするの
    ‥‥‥この任務が続いてるうちは、イェンファはわたしたちのそばにいてくれる
    任務が終わってしまったら、イェンファがそばにいる理由がなくなる
    せっかく、ちゃんと胸を張って仲間だと言えるようになったのに、って」
イェンファ「‥‥‥ばか 今のって、相当の問題発言よ?」
アルカ「うん、わかってる だから内緒にしといてね」
イェンファ「‥‥‥あなたが私を仲間だと呼んでくれるのなら、きっと
      本隊に戻った後も、その後に世界中のどこに任務で向かっている時も、
      あなたとはずっと変わらず、私の仲間で、そして‥‥‥とても大切な友人よ」
アルカ「うん‥‥‥」

ずっと仲間だって‥‥‥大切な友達だって‥‥‥
そんなことならわかってるし、信じてる 疑う気持ちなんて、全然ないけど‥‥‥
それでも、やっぱり、さびしい気持ちは止められないよ‥‥‥

ED

イェンファ「ふう‥‥‥」
櫻花隊「どうしたの燕花、元気がないわね
    そんなことで今回の任務、ちゃんとこなせるの?」
イェンファ「別に‥‥‥何もないわよ、心配はいらないわ
      体調だって万全だし、心配事だって特にはないし」
櫻花隊「そうですの? わたくし、たまに見かけるのですけど
    セイヴァールでの任務からこちら、燕花様は よく窓辺でため息をついておられるでしょう?
    もしや、かの街に思い人でも 残してこられたのではないかと‥‥‥」
櫻花隊「え、ほんと? ついに燕花にも春が来てたの?」
イェンファ「‥‥‥バカバカしい 櫻花隊はいつから、そんな軟弱になったの?
      そんな話に興じるより先に、目の前の任務のことを考えましょう
      この街に冥土召喚術の研究者たちが潜伏しているのは間違いないの
      冥土の恐ろしさは、一度直接戦った私が一番良く知っている
      浮わついた気持ちで戦えるほど なまぬるい相手じゃないのよ?
櫻花隊「あ、その件なら、たぶん心配いらないわよ 調停機構の応援が、もうすぐ着くから」
イェンファ「‥‥‥え?」
櫻花隊「昨晩、連絡がありましたの 冥土に一番詳しい者をよこす、と
    燕花様には、連絡が行っておられなかったのですか?」
イェンファ「え、ちょっと待って、何それ、初耳なんだけど‥‥‥」
    「イェンファ!」
イェンファ「え‥‥‥ え‥‥‥っ
      えええええッ!!??」
櫻花隊「うひゃ、いきなり抱きついた!?」
櫻花隊「あら、まあ‥‥‥」
イェンファ「あああ、アルカ!? なんで、どうしてここに!?」
アルカ「それはもちろん、あなたが困ってるって聞いたから
    総帥に頼み込んで、特別任務って形で手伝いに来たんだけど」
スピネル「ジンゼルア様、とても複雑なお顔をしてました‥‥‥」
イェンファ「え、えと、あの、その‥‥‥ 言いたいことはたくさんあるけど‥‥‥
      ‥‥‥まずは、ちょっと、離れてくれない?」
アルカ「え? あ、ごめん 久しぶりに会えたから、うれしくてつい」
イェンファ「ええ、そうでしょうね‥‥‥ おかげで私は、素直には喜べそうにないわ‥‥‥」
櫻花隊「‥‥‥」
櫻花隊「‥‥‥」
イェンファ「こほん‥‥‥悪いけど二人とも、少し席を外してもらえる?」
櫻花隊「え、ええ、そうね 少し、見回りに行ってくるわ」
櫻花隊「わたくしは書類のほうを片付けてまいります あとはごゆっくり」
スピネル「‥‥‥わたしも、ちょっと、まわりを見てきますね」
アルカ「え? あれ?」
イェンファ「なんでスピネルまでいなくなるのかはわからないけど‥‥‥
      ‥‥‥
      ああもう、ダメ! 何だか言葉が出てこない!」
アルカ「お、落ち着いて!?」
イェンファ「言いたいこと、たくさんあったの! ずっと、ずっとため込んでた分が!
      なのに、あなたを前にしたら、頭が真っ白になっちゃって‥‥‥」
アルカ「ゆっくり、思い出せばいいよ 焦らなくても、時間はあるんだし
    特務召喚師アルカ、任務が終わるまで、あなたの隣で力になるから」
イェンファ「‥‥‥なんだか懐かしいわね、そういう関係も」
アルカ「わたしたちにはちょうどいいと思うな‥‥‥といっても
    セイヴァールに戻った後も、その後に世界中のどこに任務で向かっている時も、
    あなたはずっと変わらず、わたしの仲間で、そして‥‥‥とても大切な友人だけど、ね」


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Last-modified: 2014-05-31 (土) 00:00:00