第14話

アルカ 「眠れないな‥‥‥ ちょっと、夜の風にあたってこよう」
アトシュ「‥‥‥あン?」
アルカ 「うわ!? なんでこんなところにいるのよ!?」
アトシュ「いきなり出てきて、何好き勝手言ってやがる
     どこで何をしてようが、オレの勝手だろうが」
アルカ 「勝手じゃないよ! 犯罪者だって自覚はないのかな、あなたは!」
アトシュ「手錠のかかってねェ犯罪者は 他のどんなヤツより自由なもんだ
     任務だ立場だに踊らされてやがる てめェらなんかより、よっぽどな」
アルカ 「それは自由じゃなくて、自分勝手っていうのよ!」
アトシュ「似たようなもんだろ いちいち分けんじゃねェよ、面倒くせェ」
アルカ 「似てるからこそ、混ぜちゃいけないんでしょ! ああもう、本当にあなたとは話が合わないな!」
アトシュ「良かったじゃねェか、話が合わなくてよ
     オレとてめェは、どう間違っても オトモダチにゃなれねェってわけだ
     どうせギフトの件が終わったら、また敵同士に戻るんだ
     ヘンに湿っぽいもんが残る間柄より、お互いに気が楽ってもんだろ」
アルカ 「‥‥‥そういう考え方は、わたしにはできそうにないよ
     言葉が交わせる者とは、やっぱり、心も通わせたい
     わたしはそのために、学べる限りの異界の言葉を片っ端から学んだの」
アトシュ「そいつァまた、やっぱりオレとは 正反対の考え方だな
     ますますわかり合えなくて 結構なことじゃねェか、おい?」
アルカ 「‥‥‥もういいや、なんか疲れた どこか行ってよ」
アトシュ「嫌だね
     クソを煮詰めた鍋みてェな街だが、ここからの眺めだけは、そこまで悪かねェ
     後から来たてめェのほうこそ、さっさとどこかに消えやがれ」
アルカ 「嫌だよ ここは、わたしのお気に入りの場所でもあるの
     明日の戦いで、全部が終わる
     最後の精神集中くらい、好きな場所でやりたいじゃない」
アトシュ「聞き分けの悪ィ奴だな」
アルカ 「どっちがよ!」
アトシュ「‥‥‥」
アルカ 「‥‥‥」
アトシュ「そういや、ひとつ、礼を言っとかねェとならねェことがあったな」
アルカ 「え?」
アトシュ「ギフトに変えられたロギンズの奴を、楽にしてくれたらしいじゃねェか
     その件に関しては、素直に感謝してる ‥‥‥あんがとよ」
アルカ 「ロギンズ‥‥‥ ええと、誰のこと?」
アトシュ「部下の一人だ たぶん、最初にギフトの実験台になった」
アルカ 「あ、ああ!
     ‥‥‥え、でも、どうして、いきなりお礼なんて?」
アトシュ「てめェらから見りゃ、うちの部下なんざ どいつも同じに見えるんだろうがな
     内側から見りゃ、使える奴、使えねェ奴、いろいろいやがったんだよ
     ロギンズは‥‥‥ オレの右腕と言っていいくらいには、使えた
     右腕だからこそ、オレは奴に多くを求めた 奴もまた、そのすべてに応えようとした
     その隙間をギフトの奴に狙われて、気がついた時にはあのザマだ
     ‥‥‥言い訳のしようがねェ ギフトを甘く見た、オレのミスだ
     しかも、あのままでいたら、死ぬこともできず 永遠に奴の走狗だったらしいじゃねェか
     だから‥‥‥ロギンズを楽にしてくれた てめェには、感謝してる
     それだけだ」
アルカ 「‥‥‥あなたたちにも、仲間を思いやる 気持ちはあるんだね」
アトシュ「てめェらが考えてるような馴れ合いとは だいぶ意味が違うだろうがな」
アルカ 「それでも‥‥‥ 絆は、絆だよ」
アトシュ「カカッ、召喚師センセェの言うことは いちいちくすぐってェな
     てめェの物差しで、ひとの美点を探そうとするんじゃねェよ」
アルカ 「‥‥‥
     ありがとう」
アトシュ「は?」
アルカ 「あの時、力を制御できず、勢いのままに彼を消してしまったこと‥‥‥
     仕方がなかったとは分かっていても、ずっと、心にひっかかってたの
     あなたのおかげで、少しだけ 心が軽くなった
     だから、ありがとう」
アトシュ「けッ、この優等生が
     やっぱり、てめェのことは どうにも気に入らねェな」
アルカ 「わたしもだよ あなたのことは大嫌い
     けど‥‥‥明日は、がんばろう?」
アトシュ「そっちこそ、腑抜けた戦いするんじゃねェぞ?」

なんでだろう‥‥‥アトシュと話して、妙に気合いが入った気がする
半分以上は敵同士だからかな? その緊張感が、いいほうに働いたとか
‥‥‥うん、きっと、そういうことだよね

ED

響友 スピネル
あれから‥‥‥ ちょっとだけ、時間が流れた
正直を言って、長かったのか短かったのか、よくわからない時間だった
地上に残った冥土獣と、冥土の術をあきらめようとしない研究者たち
えんえんと続く彼らとの戦いの中で、時間は飛ぶようにして過ぎていった――

研究者「ぐあっ!? ば、馬鹿な!
    我々の英知の結晶たる、陰式冥土召喚術が破れるだと!?」
スピネル「まわりに迷惑をかけることにしか使えない術に 英知も結晶もないです!」
アルカ「ギフトの遺したわずかな資料だけで、ここまで冥土召喚術を再現したんだ‥‥‥
    つくづく、パルジオンの執念には驚かされるよね‥‥‥」
スピネル「ヘンなことに感心しないでください!? それより、早くこの研究所を‥‥‥」
研究者「くっ‥‥‥仕方がない、裏口から脱出するぞ!」
アルカ「なっ‥‥‥まずいよ! ここで逃がしたら、また別のところで研究を続けられる!」
研究者「さらばだ、調停機構の召喚師よ! 次に会う時は、完成した極陰式冥土召喚術を」
   「るせぇよ」
研究者「ぐぼっ」
アトシュ「冥土を研究してる連中は、アレだな、どいつもこいつも口上がカンにさわるぜ」
アルカ「アトシュ‥‥‥!?」
アトシュ「よォ、久しぶりじゃねェか 月での戦い以来か?
     あの後の戦いぶりも聞いてるぜ? あちこちで大活躍らしいじゃねェか」
アルカ「わたしのほうも、聞いているよ 真紅の鎖の悪行についてはね」
アトシュ「カッ、そう警戒すんじゃねェよ、肩を並べて戦った仲間だろ?」
アルカ「そうだね、できれば武器をおろして ゆっくり思い出話といきたいところだけど
    そのためにはまず、あなたには勾留室に戻ってもらわないといけないの」
アトシュ「カカッ、まあ、そいつも悪かねェかもな」
アルカ「‥‥‥え?」
アトシュ「今日ここで会ったのは偶然だがよ、てめェには前から、言いたかったことがある
     オレのものになれ」
アルカ「‥‥‥え‥‥‥」
スピネル「わ‥‥‥」
アトシュ「オレはてめェを評価してんだよ、そのクソ度胸も、クソ度量もな
     召喚師にしておくにはもったいねェ てめェの資質は、こっち側でこそ輝くはずだ」
アルカ「冗談‥‥‥ってわけじゃなさそうだね この際、そうであってほしかったくらいだけど」
アトシュ「たりめェだ」
アルカ「そんなことを言われて、わたしが首を縦にふると思ったの?」
アトシュ「カッ、ンなわきゃねェだろうが そんな軟弱なヤツなら、最初からいらねェよ
     自分が惚れたモンなら、自分の力で奪い取るのがスジってもんだろ?
     さあ、()ろうか‥‥‥ オレとてめェ、勝ったほうが両方を総取りだ
     てめェが勝てば、てめェはオレを手に入れる オレが勝てば、オレはてめェを手に入れる
     どうだ? 公平で明快で、最高のルールだろう?」
スピネル「じょじょ、冗談じゃありません! そんなやり方で、誰かを手に入れようなんて」
アルカ「わかった それでいいよ」
スピネル「‥‥‥な、なんで そうなるんですかっ!?」
アルカ「言い方には問題あるけど、言ってることだけなら、ちょっとわかるんだ
    誰かをまるごと欲しいっていうなら、自分をまるごと差し出せるだけの覚悟がいる
    アトシュは悪人だけど、そういうところは筋が通ってる
    ‥‥‥そういうところだけは、わたしも、あいつのことを、評価してるんだ」
アトシュ「カカッ、嬉しいこと言ってくれんじゃねーか」
アルカ「勝負は、一対一の、一回勝負でいいかな 勝っても負けても、恨みっこなし
    もちろん、負けるつもりなんて ぜんぜんないけど」
アトシュ「それで構わねェ 当然、勝たせてもらうがな」
アルカ「それじゃ、始める合図は スピネルにお願いするよ」
スピネル「うー‥‥‥もー‥‥‥ わかりました、あきらめました!
     でも、ぜったいに勝ってくださいよ? わたし、信じてますからね?」
アルカ「あはは、わかってるって」
スピネル「それじゃ‥‥‥コイン、投げますね これが地面に落ちたら始め、です」
アトシュ「ああ、そこのオマケ 一人がさびしかったら、ついてきてもいいぜ
     オマエがそこそこ使えるやつだってことは分かってるからな」
アルカ「わたしが勝ったら、その子をオマケ扱いするのもやめてもらうわよ」
アトシュ「おいおい、ここまで来て掛け金の追加かよ‥‥‥
     まァ、いいか」
スピネル「えいっ」
アルカ「たあああっ!!」
アトシュ「せえええいっ!!」

「欲しいもんは力づくで手に入れる
 つっても、ここまで欲しくなったモンは久しぶりだ
 遠慮も遊びも一切ナシだ
 全力で、てめェをぶんどっていく!」


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Last-modified: 2013-06-15 (土) 00:00:00