情報提供(敬称略):M.S.


ごめんなさい

アヤ「ラージュさん、ここにいたんですね‥‥‥! すこしだけいいですか?」
ラージュ「どうしたんだ、アヤ? 屋根の上までオレを探しに来るなんて。」
アヤ「私、貴方に謝らなければならないと思って‥‥‥。」
ラージュ「謝る?」
アヤ「ええ‥‥‥。」

(アヤ座る)

ラージュ「アヤ‥‥‥。あれは、状況的に考えて仕方がなかったと思うぜ。」
アヤ「それでも、無実の貴方たちに イヤな思いをさせたことは事実ですから‥‥‥。
   本当にごめんなさい‥‥‥!」
ラージュ「アヤ、そんなに謝らなくてもいいよ! オレももう気にしてないしさ!!」
アヤ「ラージュさん‥‥‥。」
ラージュ「むしろオレは、アヤが大丈夫なのか心配だよ。」
アヤ「心配‥‥‥?」
ラージュ「なんだか、1人で抱え込んでるみたいだからさ。
     役目かなにか知らないけど、重大なことを人に言えないでいるのって、やっぱり大変だろ?」
アヤ「貴方を疑っていた私を 気遣ってくれるの?」
ラージュ「だってアヤは、本当ならまだ学生なんだろう?」
アヤ「どうしてそのこと‥‥‥。」
ラージュ「あっ、トウヤやナツミの話を聞いて、そうかなと思ったんだ。」
アヤ「ええ‥‥‥。元いた世界では、まだ学生でした。」
ラージュ「やっぱりそうか。
     本来なら、そんなアヤが世界の命運をかけて戦う必要はないはずなのに。
     そう思うと、背負うものが大きすぎないかって、アヤのことが心配になるよ。」
アヤ「そんなことを思ってくれてたなんて‥‥‥。私のことを気にかけてくれて、ありがとう‥‥‥。
   でも役目のことは、たまたま選ばれたのが私だっただけですよ。
   確かに責務を重く感じることはあるけど、やってきたことに対して後悔はしていません‥‥‥。
   それに、私にはクラレットがいるもの。苦難を共にしてくれる心強いパートナーが‥‥‥!
   だから私は平気‥‥‥!」
ラージュ「そっか‥‥‥、それならすこしは安心かな‥‥‥。
     でもアヤは、自分を選んだ存在に対して恨んだりしないのか?」
アヤ「それはありませんよ。貴方だって、自分の出自は受け入れているのでしょう?
   それと同じです。
   恨んだところでどうしようもないし、受け入れたうえで乗り越えていくしかない‥‥‥。
   そうしなければ、自分の望むものをその先に見いだせないのだから‥‥‥。」
ラージュ「オレと同じ‥‥‥か。 なるほどな‥‥‥。
     なんだかオレ、アヤのことすこしは理解できた気がするよ。
     お互いいろいろと大変なことは多いけどさ、めげずにがんばろうな。
     アヤとしてはオレに言えないことも多いだろうけど、オレは、これからアヤの味方になるから。」
アヤ「ありがとう、ラージュさん。その言葉、とっても心強いです!」

奇跡を見せて

ラージュ「アヤ、ここにいたのか。」
アヤ「ラージュさん‥‥‥。
   とても静かな夜ですね。決戦前だというのに‥‥‥。」
ラージュ「そうだね、でもなんでだろう? オレも不思議と心穏やかなんだ。」
アヤ「ねえ、ラージュさん‥‥‥。本当にこのままでいいんですか?
   やっぱり、考え直した方がいいんじゃ‥‥‥。」
ラージュ「アヤ、どうしたんだ? 急に‥‥‥。」
アヤ「だって、このままだと貴方たちは、消滅してしまうかもしれないんですよ?
   それでもラージュさんは、覚悟のうえで戦うと言うんですか?」
ラージュ「けどさ、イストもああ言っていたし、きっとなんとかなるよ。」
アヤ「それはそうですけど、自分の存在をかけてまで信じるのは‥‥‥。
   私はここで出会った貴方たちを、みすみす失いたくはないんです‥‥‥。」
ラージュ「‥‥‥アヤは、イストを信じていないのか?」
アヤ「彼の想いが真摯なのは認めます。
   ですが間違いなく『異識体』を倒せば、貴方たちは世界ごと消え去ってしまうんですよ!?
   そのことはラージュさんも、充分理解しているんですよね?」
ラージュ「ああ、それはオレだってわかってるよ。逃れようもないことだって。」
アヤ「だったらどうして‥‥‥。」
ラージュ「今オレが取り乱してもしょうがないと思ってるんだ。
     アムだって、同じ立場なんだ。だからアムも、あんなに思い詰めて‥‥‥。」
アヤ「ラージュさん‥‥‥。」
ラージュ「だからこそオレは、アムのためにも それに支えてくれるみんなのためにも、
     もう迷わないって決めたんだ!
     どう転んでも消えるのが運命だっていうなら、あえてそれを超えるためにオレは戦う‥‥‥!!」
アヤ「‥‥‥そんな‥‥‥。」
ラージュ「ほら、そんな悲しい顔するなよ! これは、アヤが教えてくれたことなんだぜ?
     オレたちは本来ありえざる存在であって、ここにいるのが奇跡みたいなもんなんだって。
     だったらオレはその奇跡の申し子として、今度は自分の力で奇跡を起こしてみせるよ!
     絶対なんてものはないんだ! オレがこうしてここにいることが、その証拠だから。」
アヤ「ラージュさん‥‥‥。貴方は本当に強い人ですね‥‥‥。
   私も、貴方の言葉なら信じられる‥‥‥。奇跡を、信じられる気がしてきました‥‥‥!
   ラージュさんの起こす奇跡、どうか、私に見せてください!」
ラージュ「ああ。アヤがオレを信じてくれるなら、どんな奇跡だって起こせる気がする。
     いや、絶対に起こしてみせる!!」
アヤ「ならば私は、貴方たちのために祈ります。そして、全力で支えてみせます!」
ラージュ「うん、アヤ、よろしく頼むよ。最後の最後まで、オレを信じて支えてくれ。」
アヤ「はい、必ず‥‥‥!」

最終決戦

(最終戦前)
ラージュ「オレたちは、消えることにもう怯えたりなんかしない。
     たとえ消えてしまっても、みんなの魂に生き続ける!
     魂に強く刻まれた想いはけして消えない。 オレはそれを信じる!!」
アヤ「世界が元通りになっても、私たちの絆は永遠です。 共に頑張りましょう!」

(最終戦後)
アヤ「あなたの協力に感謝します。
   私、あなたのことは忘れません。
   魂に刻んで‥‥‥絶対に、忘れたくないですから!」
ラージュ「オレだって‥‥‥! 絶対に‥‥忘れるもんかっ!」

ラージュ「ありがとう‥‥‥。」

エンディング「異界の友らに幸あれと」

【アヤの部屋】

アヤ「これで‥‥‥全てが終わったんですね。」
クラレット「アヤ、お疲れ様でした。」
アヤ「やっぱりメイメイさんの前だと緊張してしまいますね。
   でも、良い結果が報告できたこと、
   本当に嬉しかったです。
   今のところリィンバウムに大きな後遺症も
   出ていないようですし‥‥。
   メイメイさんも安心して、またリィンバウムを
   守護し続けてくださるでしょう。」
クラレット「これも‥‥‥アヤ、貴方が頑張ったおかげですよ。」
アヤ「そんな! 今回は、私ひとりでは途中で挫けてしまって
   いたかもしれません。
   そうならなかったのは、
   クラレット、貴方の協力があったからです。
   本当に、ありがとうございました。」
クラレット「いえ、私なんて‥‥‥。
      お茶でもいれて、ちょっと休憩しましょうか。」
アヤ「そうですね。
   ゆっくりお茶を楽しむ時間も無かったですし。」
クラレット「じゃあ準備してきますね。」
アヤ「あ、それなら私も‥‥‥!」
クラレット「ここは私に任せてください。アヤはメイメイさんへの
      報告で、気を張って疲れているんですから。」
アヤ「‥‥‥じゃあ、お言葉に甘えますね。」
クラレット「はい、たっぷり甘えてください。」
アヤ「(本当に、私ひとりの力ではどうしようも
   ありませんでした‥‥‥)
   (これもみんな‥‥‥あの人たちのおかげです)」
クラレット「お待たせしました。
      紅茶にお砂糖は入れますか?」
アヤ「お願いします。」

アヤ「ふぅ‥‥‥美味しい。」
クラレット「私‥‥‥またこうしてのんびりアヤと
      お茶を楽しむことができて、本当に嬉しいです。」
アヤ「ささやかな日常の大切さを気付かせてもらいましたね
   ‥‥‥あの人たちに。」
クラレット「ラージュたちは―――
      本当に消えてしまったんでしょうか?」
アヤ「‥‥‥分かりません。
   メイメイさんも、そのことだけは分からないと
   おっしゃっていましたし。
   どこかで無事だといいんですが‥‥‥。」

 ‥‥‥アヤ

アヤ「え‥‥‥?」
クラレット「どうしました、アヤ?」
アヤ「いえ、今‥‥‥ラージュさんの声が聞こえたような。」
クラレット「本当ですか?
      ‥‥‥‥‥‥私には聞こえませんけど。」

 アヤ!

アヤ「やっぱり、ラージュさん!」

 だったらオレはその奇跡の申し子として、今度は自分の力で奇跡を起こしてみせるよ!

アヤ「ええ‥‥‥そうです!
   奇跡はおきます、絶対‥‥‥!
   私たちがリィンバウムへ戻ってこれたことも、
   まさに奇跡だったのです‥‥‥。
   ただゆっくりと消滅を待つしかなかったこの世界を、
   ラージュさん、貴方たちは立派に救ってくれました。
   貴方たちのおかげで、私たちは今こうやって
   幸せに生きていられるんです。
   でも、貴方たちの結末を、私は知りません‥‥‥。
   今頃、どうされているのでしょうか?
   3人で仲良くお茶でもしていてくれたら‥‥‥!
   私、貴方に助けてもらうばっかりで‥‥‥
   結局、何もしてあげられませんでした。
   こんな無力な私を、お許しください‥‥‥!」
クラレット「‥‥‥アヤ! 大丈夫ですか、しっかり!」

アヤ「ハッ!」
クラレット「アヤ、どうしました!?
      何か悲しいことでも?」
アヤ「あ‥‥‥いえ、何もありません。
   心配かけてごめんなさい‥‥‥。
   (クラレットにもこれ以上負担はかけられないわ。
   後悔を抱えるのは、私ひとりで充分‥‥‥)」
クラレット「本当に大丈夫ですか?
      私で力になれることがあれば、言ってくださいね。」
アヤ「‥‥‥はい。
   いつも支えてくれてありがとうございます。」
クラレット「仲間ですから、当然です。」
アヤ「そう‥‥‥ですね。仲間、ですもんね。」
クラレット「はい、仲間です。
      お茶、冷めたのでいれなおしてきますね。」

 そう、あの人たちも、私の大切な仲間でした。
 今の私にできることは、ひとつだけ。
 それは‥‥‥忘れないこと!
 想い続ける限り、貴方たちの存在は
 なかったことにはならないはずだから。
 身を挺して私たちを救ってくれた
 勇気ある貴方たちのことを‥‥‥。
 私は、一生忘れないでしょう。
 ありがとう、異世界のみんな‥‥‥。
 ありがとう、ラージュさん!
 貴方に出会えて、私は本当に幸せでした!

ラージュ「オレも同じだよ。
     アヤに出会えて良かった。ありがとう‥‥‥!」

アヤ「え‥‥‥!?
   やっぱり、あの声はラージュさん!
   見てて‥‥‥くれているんですね。
   きっと、どこかで‥‥‥。」

クラレット「アヤ、お茶が‥‥‥
      ってボーっとしてどうしたんです?」
アヤ「ええ、ちょっと‥‥‥。」
クラレット「もう、アヤ!
      私たち、仲間だって言いませんでしたか?」
アヤ「えっ‥‥‥?」
クラレット「思い出してたんでしょう?
      あの人たちのことを‥‥‥。」
アヤ「え‥‥‥あの、それは‥‥‥。」
クラレット「私も忘れてはいませんよ。
      だから、一緒です。」
アヤ「クラレット‥‥‥。
   確証はないですけど‥‥‥でも、今はあの人たちが
   どこかで元気にしていると思っています。
   ううん、そう信じたいの‥‥‥!」
クラレット「‥‥‥はい、そうですね!
      そうしたら、私たちができることは‥‥‥?」
アヤ「ふふ‥‥‥やっぱり持つべきものは仲間ですね。
   いつかラージュさんたちに再会したとき、
   恥ずかしくないように、私たちも頑張りましょう!」
クラレット「ええ!」

 END


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Last-modified: 2020-01-17 (金) 02:23:18